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JMAC品質経営研究所だより Vol.4
After COVID-19の産業界の姿とは?

  • 生産・ものづくり・品質

宗 裕二

コンパクトな工場や事業所をどのように構築すべきか、今こそ熟考するチャンス!

今、世界中でCOVID-19が流行し、世界的な危機をもたらしています。しかし、ある程度終息が見えた時点で経済活動を再開する時期は必ずやってきます。ただ、再開してもこれまでとまったく元通りの世界とはならず、大きな変革を遂げなければならない環境になっていると言われています。では、産業界はどのような姿になっているのでしょうか?

業界は、私たちが考えた作りで成り立っています。vol4-2.pngだからこそ、今しっかりと考えていかねばならない時期だと思います。グローバリゼーションによって今まで産業界は発展を遂げてきたわけですが、そのグローバリゼーションによって今回多くの問題が浮かびあがりました。そうした問題を鑑みると、ますますナショナリズムの方向へと舵を切っていくのかもしれません。

「地産地消」と言う言葉があります。これは、主に農産物や水産物に対して使われる言葉で、地域で生産したものを地域で消費することです。
しかし、ナショナリズムが進むと原材料の調達から消費までの一連のビジネスサイクルを、限られた地域で回し、利益を出す必要があります。モノづくりのビジネスモデルも「地産地消」を意識しなければならないかも知れません。
その為にも、一連のビジネスモデルのサイクルを相当コンパクトにし、さらに効率的に運営できるように変革することが求められているのです。

状の仕事の仕方を見直し、より高付加価値な仕事へと変えていくためには、まず、今の 仕事を「見える化」する必要があります。やっている仕事を時間の順に細かく描きおろし、改善のベンチマークとします。この時、どの程度の細かさで考えるかは、求める成果の大きさとかけられるリソースの大きさによって最適な細かさを決めるのです。

大抵の場合、無駄な仕事を洗い出して取り除くことを考えると思いますが、vol4-1.png私たちは無駄の発見はしません。それよりも、本当に価値ある仕事はどれだろうかと考えて、その価値ある仕事を徹底的に厳選して抽出します。さらに、厳選し、抽出した仕事(作業)に対して、改善の4原則を適用して改善を考えます。
改善の4原則とはご存じの方も多いと思いますが、ECRSであらわされる「Eliminate;排除」「Combine;結合」「Rearrange;入れ替え」「Simplify;簡素化」であり、この順番に改善効果が高く、安価であるというのが基本的な考え方です。

つまり、絶対に必要で付加価値が高い仕事に対して、改善を考えるのです。無駄と思わる仕事は最初から検討対象にしないのです。そして、改善された価値ある仕事(作業)だけで新たな仕事の仕方を再設計します。その時、「連続で出来ないか」と考えて実現できるように努力します。さらに、「平行で出来ないか」「同時に出来ないか」と考え、最後に「その仕事を早く出来ないか」と考えます。

こうして考えた新しい工程(仕事の仕方)を実現するために、どうしても必要な仕事を付加して実行可能な工程(作業)として計画するのです。改善と言うと無駄な仕事を見つけてECRSを適用することだと考える方も、もちろんいらっしゃると思います。それも一つの改善ですが、必要かつ付加価値の高い仕事に注目する方法もあるのです。
このように付加価値が高い仕事とは何かを考えるのが最も難しいことかも知れません。また、正しく当たり前のことを徹底的に実行することは、思いのほか難しいようです。

ちろん、After COVID-19の産業界が「地産地消」のビジネスモデルになっていないかも知れません。
しかし、まったく元通りの環境でなくなっていることは、確かなことのように思います。だからこそ、自社の存在価値が何であるかを改めて見直し、そのために必要な価値ある仕事とは何かを再定義して、弛まず改善を続けることが求められているのです。

そして、コンパクトでこれから少なくとも30年間は十分に利益を出し続けることができる、新たな工場や事業所をどのように構築すべきか、仕事から物理的な距離が置かれている今こそ熟考するチャンスと捉えられてはいかがでしょうか。そのような徹底した考えを経て、将来、皆さんの会社がより強い会社となることを祈念しています。

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