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JMAC品質経営研究所だより Vol.9
顧客・企業・社会の立場で考えるかにより、様々な側面を見せるのが「品質」である

  • 生産・ものづくり・品質

宗 裕二

日米では、切手に関する「常識」も随分異なっている!?

前回は、アメリカの返品システムを例に、その国や地域の常識を知らなければ、クレームや品質について語ることができないという内容でお話しました。
今回は「切手」を話題に、日米での考え方の違いについて触れたいと思います。

真はアメリカの切手です。 正確にはUsps(United States Postal Service);アメリカ合衆国郵便公社のForever Stampと言うタイプの切手です。日本の切手の写真も同時に載せていますので、比較してみて下さい。何が違うか、お分かりでしょうか?

vol9-1.jpgアメリカの切手(Forever Stamp)には値段が書いてありません。四角く、アメリカの国旗が描かれているものが国内用($0.63-)で、丸い形をしているものが国際用($1.2-)となります。アメリカの切手も時代の経過とともに値上がりをしていくのですが、安かった頃に購入した切手と、値上がり後に購入した切手とで、同じ機能(手紙を送るという機能)が保証された状態を維持しています。少々周りくどい言い方をしてしまいましたが、安い値段の時に買った切手は、そのまま今でも使えるということです。

vol9-2.jpg日本の切手はご存じの通り、切手に記載してある金額分の機能しか持ちません。以前に手紙を送るために購入した80円切手は、現在ではそのまま使うことはできず、4円分の切手を余分に張らないと使えないですね。切手に対する考え方が随分と異なるように思います。

日本では「切手は現金と同じ」ように扱われているかのようですが、実際には郵便局で切手を現金に換えることはできません。現在の切手と交換してくれますが、80円切手を84円切手とは交換してくれないわけです。

現在のようなEメール中心の時代に切手をどれほど使うのだろうかと思われる方も多いことでしょう。でも、私の場合は結構使いました。なぜなら、家賃や電気料金などを、毎月、小切手で支払っておりましたので、小切手を郵送する必要があったからです。

アメリカ社会は未だ、小切手文化の根強く残っています。会社間の取引でも使いますし、個人小切手も当然のことのようにあります。買い物をするときも小切手をさらさらと書いて支払うことが可能です。最も、買い物はクレジットカードを使う人が圧倒的に多いと思いますし、家賃や電気料金なども銀行引き落としは可能です。日本では滅多に見ない個人小切手なので、面白がって使っていました。従って、切手を使って郵送することが多かったのです。その時に、アメリカらしい合理的な切手の仕組みを知り、日本との違いを感じました。

合理的と言うべきか、合目的的と言うべきか迷いますが、アメリカの切手の仕組みの方が良いのではないかと、その時は感じていました。

手に関する「常識」も、アメリカと日本とでは随分と異なるようです。「機能」に着目して、その機能を保証すると考えるアメリカと、切手に書かれている「額面」に着目して、その金額を保証すると考える日本との違いといえるのかも知れません。

「品質」と「機能」は、異なる側面を持つ概念かも知れませんが、その境界は曖昧で、恐らく人によって感じる範囲は異なることでしょう。ここでお話をしているのは、「機能」であって、「品質」ではないと主張される方もおられることでしょう。

顧客の立場に立って考えるか、企業の立場に立って考えるか、あるいは社会の立場に立って考えるかによって、様々な側面を見せるのが「品質」であろうと思います。少し広い視野をもって、「品質」を考えて見るのも良いと思います。

vol9-3.jpg因みに、アメリカの郵便配達員が乗っている車は、「右ハンドル」です。皆さんご存知の通り、アメリカの交通ルールは右側通行ですから、通常の車は「左ハンドル」、なぜが、わざわざ逆につけているのです。
一人でこの車に乗り、道沿いに立っているポストに投函したり、ポストから郵便を取り出したりといった作業には、右ハンドルの方が楽だからです。そう、アメリカは実に「機能的」な国なのです。

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