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JMAC品質経営研究所だより Vol.11
常識が変われば品質の考え方も変わる

  • 生産・ものづくり・品質

宗 裕二

合理的発想はアメリカ文化の一つ

れは何かおわかりだろうか。経験のある方はすぐにわかると思う。sou12-1.jpg
アメリカの工場を訪問し、現場を見せていただく場合、その現場の性質によって安全確保のためにヘルメットの着用や安全靴、ゴーグルの着用などを義務付けるのが普通である。これは日本でも同じであり、来客用の安全装備が大抵の場合準備されている。

写真に写っているのは、アメリカのある企業の安全靴の代用品で、安全確保のための装着具である。これを靴に装着して現場に入るのだが、まるで馬が歩いているように「パカパカ」と音がして、歩くのにも一苦労である。脹脛の筋肉を鍛えるには良いが、少々の慣れが必要であり、脚力の弱い人は訓練が必要かも知れない。

実は、これ以外にも通常の安全靴などの準備もあり、いくつかのタイプから選択することもできるようになっているのだが、写真にある方式がもっと簡単で良いと考えて準備していただいたようである。いかにもアメリカらしい方式だと思ったし、文化の違いを感じずにはいられない。

軽く、薄く、小さいことが好きな日本人と比べると、堅牢であることが重視され、重く、大きなことは厭わないのがアメリカ文化のどこかにあると感じている私には、なるほどこれがアメリカだと納得してしまった。

sou12-2.jpg車で移動することが当たり前なので、少々重かったり、大きかったりしても問題はなく、電車や徒歩で移動する日本人は、軽く、薄く、小さいことが重要となるのだと思う。

これは筆者の経験からくる感覚であり、検証をした訳ではないので真偽のほどは定かではないが、一つの文化が異なる要因として存在するのではなかろうか。また、合目的的で合理的な発想が好きなことも確かであろう。足先を保護するという観点からは実に合理的であるし、無駄がない。これもアメリカ人的な合理的発想であり、文化の一つであろうと思う。私はこの合理的な発想は嫌いではない。

分と昔になるが、アジアのある国で、半導体などの精密部品を作っている工場を巡視したことがある。精密な部品を作っている現場であり、当然のことながらクリーンルームになっている。純度もそれなりに高く管理されているとのことであった。

いざ、クリーンルームに近づいてどのような防塵服を着せられるのかと楽しみにしていると、上に羽織るだけの白衣を渡された。そしてエアーシャワー装置のついている入口(インターロック機構と強力なエアーブローにより微細な塵を落とすと同時にクリーンルーム内をクリーンに保つ入口)を避けて隣の資材搬入用の入り口を開けようとした。

「このような服装でしかもその入り口から入ってよいのですか?」と、尋ねると「偉い人は良いのです」とのこと。この国では常識なのであろう。本当に驚いた。

中に入ると見学用のガラス窓の隅が割れていて、砂ぼこりが小山のように積もっている。「この砂ぼこりが積もって状態で、クリーンルームの純度が保たれているのですか?」と質問すると「規定の場所で、規定通りに測定した測定値は合格になっています。問題ありません。」との回答であった。驚くことばかりである。あれから随分と時が経つので、今も、きっと問題なく運営されていることであろう。

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