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JMAC品質経営研究所だより Vol.13
あるロシア沿海地方の事情(2)

  • 生産・ものづくり・品質

宗 裕二

今後発展の可能性が高い!ロシアの工業や観光業

業都市であるコンソナムールスク・レ・アモーレへは、ハバロフスクから夜行列車で移動する。飛行機も飛んでいるそうだが、一般の人は通常、夜行列車を使うのだそうだ。

 ヨーロッパ方式の鉄道なので、改札はなく、列車に乗るときに係の車掌さん(ほとんど女性だった)に手続きをしてもらう。パスポートを見せて本人確認をすると、車掌さんが持っているスマートフォンで確認をして、乗るべきコンパートメントを指示してくれる。最先端のシステムであるとの印象で、とても効率的だと感じた。

 夜行列車もとても快適だ。外は氷点下20℃以上の世界だが、車内はTシャツ1枚で快適に過ごせる。トイレに行くときは少々寒いがほぼ問題はない。寝台車両のコンパートメントは相部屋であるが、安全の為に、私は一人でコンパートメントの個室を借り切って頂き、移動している。治安上の不安を感じたことはないが、最近までギャングの抗争事件などがあったようで、大事を取っての利用である。

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 列車の移動はとても快適で、翌朝の到着時間に合わせてゆっくり走る。日本の鉄道の時間的正確さは有名だが、ここロシアの鉄道も時間に正確である。共同利用だがシャワールールもあり、Wifi環境も整っている。(写真は夜行列車のコンパートメント内部)

 車掌さんが、夜のうちに朝食のオーターをとってくれ、ついでに少々のお土産を売り捌く。こちらがメインの仕事かと思うほどお土産の説明には熱心である。お土産の売上げが、本人の収入に直結するのかも知れない。キーホルダーやボールペンなど、ごく一般的なものが全てであり、残念ながら、日本のように考えられ、工夫された個性を感じさせる商品はない。唯一、鉄道会社のロゴと双頭の鷲がついたガラス製のカップがあるだけだった。まだ、観光に対するサービスという意識はほぼ無いように思う。

 つまり、裏を返せば、観光業としての可能性が限りなく大きくあるということだ。個室の鍵は、電子キー(カード)である。朝は、到着時間を考えて、丁度良い時間に食事を運んでくれて下車時間も案内してくれる。不便や不都合を感じたことはない。親切で気を使ってくれているという印象である。私のセミナーにも必ずと言って良いほど多くの鉄道関係者が出席をしてくれており、品質の関する関心も高いようだ。

の地域の産業は日本の産業構造とはかなり異なるようである。vol13-2.jpg日本では一つの工業製品に、多くの部品メーカーや素材メーカー、あるいは下請け企業が繋がっていて、地域的にも関連する多くの企業が一つの場所にかたまっているイメージが強い。その地方で工業団地などを構成しており、周りにも零細企業と思われる小さな工場が存在している光景をよく見る。

 しかし、ここでは、一つの工業製品に大きな工場が一つあり、その中で最終製品まで作り上げられているように見える。
周りに関連する企業や下請け企業などが見つからないのだ。しっかりした調査をしたわけではないので確かなことは言えないが、一つの工場は独立して存在しているといった印象だ。国際的な規格に則って生産しなければならない工業製品(例えば航空機など)は、規格品を自分のところで作ることはなく、規格品を買ってきて組み立てているのだと言う。国際規格で要求されている厳しい品質の部品は未だ作れないのだとも聞いている。組み立て工場が主であり、必要な部品類は梱包されて届けられているから独立した工場しかないように感じたのかも知れない。生産技術はこれからいろいろ構築するレベルなのであろうと思う。

 しかし、先にも述べたように、技術者は大変に勉強熱心であり、品質に関する関心も高いことから、工業が発展する明るい未来はあるし、日本にとっても利益につながる関係を築けるのではなかろうか。

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