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JMAC品質経営研究所だより Vol.14
あるロシア沿海地方の事情(3)

  • 生産・ものづくり・品質

宗 裕二

ロシアで活発に取り組む日本式改善活動

シアにあまり馴染みが無かった私は、いくつかの都市を数回訪問するうちに、大分、ロシアに対する印象が変わった。ロシアの人種はとても多様である。同時に料理も多様だ。本当にいろいろな人種がいるし、色々な食べ物がある。そして、「日本が好きだ」と言ってくる方が多い。
 最も、日本領事館主催の日本人講師のセミナーに参加しようという人たちだから、当然かもしれないが、日本のことをよく勉強しており、日本式の改善活動や、日本の改善思想、道具などについてとても詳しい。ある企業の現場を見せていただいたが、改善活動を行うためのサークルが結成されており、活動掲示板もあり、生々しい活動内容が書かれていた。

 いろいろな質問を受けたが、机上の問題ではなく、実際の問題に取り組んでいるからこそできる質問が多く、改善することへの熱意も伝わってくる。勿論、課題も多くあり、日本企業を比べることは早計であるかもしれないが、随分と頑張っているという印象だ。ここが極東地域にある工業都市であるからかもしれないが、日本での活動をかなり意識しているし、やがては日本とビジネス上の関係を築くことを強く意識していると感じる。

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 日本も積極的にロシアの極東地域との繋がりを深め、お互いのビジネスの発展に繋げたいと考え、経済フォーラムの開催など力をいれていることから、日本との具体的な結びつきも増えていくことであろう。

師側の私にも発見は多い。日本の工場では、必ずと言ってよいほど行われている活動の一つにKY活動(危険予知活動)がある。皆さんご存じのハインリッヒの法則に基づき、1:29:300の比率で発生するヒヤリハットを発見し、改善しようとするものだが、ロシアのエンジニアはほぼ知らなかった。
もともとは、このヒヤリハットと品質との関連をお話するつもりだったのだが、肝心の話をする以前に引っかかってしまった。セミナーでは、私が書いたテキストを事前に送付し、ロシア語に翻訳して頂いているのだが、翻訳を担当している方から連絡があり、「ハインリッヒの法則がどこを調べても見つからない」というのである。「ロシアの工場でも事故が起こるでしょう?統計はありませんか?」とお伺いすると、「あまり聞いたことがありません」と言う。
工場で事故が起こったという話は話題に上がることがほとんどありません、と言うのである。

 どうやら、パンドラの箱の蓋を開けようとしたのかも知れない。最も、品質管理・品質保証の話を聞きに来ている技術者や経営者、研究者であるため、専門が異なるから知らないのかも知れないと言い聞かせ、深く追求することなく新たな知識としてお話させていただいた。

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