JMAC品質経営研究所だより Vol.15
あるロシア沿海地方の事情(4)
- 生産・ものづくり・品質
宗 裕二
ロシアの厳しい自然環境でも支障なく運行できる日本車こそ、その品質が認められている証拠である
私
は大変ラッキーなことに、品質管理・品質保証の視点で、とても多くの国のモノづくり現場の実態を知ることができる。また、品質実務を担当するその国の人々と議論することで、その考え方を考えることもできる。そうした中でつくづく思うのは、「品質」はその国の文化を理解せずして語ることのできない領域であるということだ。日本の品質管理・品質保証に対する考え方は、世界的な視点では、特徴あるものであるようだ。
そして日本は、その製品を通じて、多くの人々の間に信頼を構築しているという事実も知ることができたと思っている。良いモノ作りは、その国の文化に大いに関係しており、良い人によって支えられていることも実感することができたと思う。
日本人は、日本の文化と伝統に支えられたモノづくりの思想に、もっと自信を持って良いと思う。そして、そのモノづくりの思想を、適切に保護し、積極的に「技術」として活用し、国際社会の経済発展に寄与することを考えるべきであろうと思う。
安くモノを作るために、中国やベトナムなどに進出するのも良いが、良いものを作るために、日本国内にあえて留まる「モノづくり」があっても良いと思う。
ロ
シアに来て、最初に気付くのは日本車の多さである。全ての車が日本車であると言っても過言ではないほどだ。タクシーはほぼ100%日本車ではなかろうか。右にハンドルがついている日本車は中古の輸入車で、左にハンドルがついている日本車は新車とのこと。なるほどその通りだろう。右側通行であることから、バスだけは韓国の中古車であるとのことだった。また、厳しい自然環境でもあるこの土地にあっても、支障なく運用することのできる日本車の品質は、認められているのであろう。
ハバロフスクの町や、ウラジオストクの町の中が、日本製の自動車で埋まっている光景を見て、単に日本の自動車業界が成功しからだけではなく、日本の「モノづくり技術」そのものが認められ、受け入れられているとも思う。こうした町の光景は、ロシアだけではなく多くのアジアの都市でも見られる光景である。日本のモノづくり技術を、改めて「技術」として認定し、国を挙げて適切に保護し、世界の産業発展に、今以上の積極性をもって寄与すべきであろうと考える。
ロシア沿海地方では、今まで1週間に一往復が基本であった航空路線が、今年から日本とウラジオストクとの間の航空便が毎日飛ぶようになる。ビザが必要であった渡航も、一部ビザなしで入国できるようにもなるらしい。旅行会社の宣伝をするつもりはないが、2時間半で行けて、ヨーロッパの古い街並みを堪能でき、食事の美味しい旅行先としてはお勧めである。日本人に対するアウェー感もあまり感じない。課題はあるものの、ビジネスの可能性は十分にある。まだ、日本人には馴染みが薄いところではあるが、一度、ご自分の目で確かめてみることも良いと思う。「百聞は一見に如かず」である。ただしお土産のお勧めは蜂蜜くらいかもしれない。
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