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第20回 開発・技術マネジメント革新大会

  • R&D・技術戦略

第20回を迎え、盛大に開催

rd2016.jpg 2016年の「開発・技術マネジメント革新大会」は6月9日(木)に東京コンファレンスセンター・品川で開催、約250名のお客様をお迎えし、大盛況の内に幕を閉じることができました。
 今年の大会は、「RD&Eイノベーションマネジメントの最前線」を基本テーマとして開催しました。参加者の方々からは、「非常に参考になった」「次回もぜひ参加したい」といった声が数多く聞かれました。講演者と参加者、また参加者同士で積極的な交流が図れた一日となりました。また、第20回という節目に大会の歴史とRD&Eマネジメントの課題の変遷を振り返り、これからの20年を考える良い機会となりました。

基本テーマは「RD&Eイノベーションマネジメント最前線」

 毎年6月に開催しております「開発・技術マネジメント革新大会」ですが、今年も昨年に引き続き、「RD&Eイノベーションマネジメント最前線」を基本テーマとし、グローバル市場で日本企業が勝ち残るためのRD&Eマネジメントの最前線について「製品・技術革新」「開発基盤強化」「組織・人材革新」「フューチャーマネジメント」のセッションを設け、事例をもとに参加者のみなさまとRD&Eマネジメントのあり方について相互に交流することを目的としました。

【大会プログラム】
●基調講演
 時流に迎合せず、時代に適合する -東レグループの経営と研究・技術開発-
 東レ株式会社 代表取締役社長 日覺 昭廣 氏

●A-1 製品・技術革新セッション
 世界No.1技術と超差別化商品による新たな価値創出への取組み
 ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長 河原 克己 氏

●A-2 製品・技術革新セッション
 IoTに向け、変わる当社のビジネスモデル〜センサネットワークモジュール開発事例と現在の取組み〜
 アルプス電気株式会社 民生・新市場業務部 担当課長 稲垣 一哉 氏

●B-1 開発基盤強化セッション
 プレミアム品質を実現するための品質保証教育体系再構築事例
 ヤンマー株式会社 品質保証部 専任部長 野田 康宏 氏

●B-2 開発基盤強化セッション
 ASEAN開発拠点の自立化に向けた動向と課題
 JMAC Thailand 社長 勝田 博明

●C-1 組織・人材革新セッション
 "自ら事業の途をつける研究所"への変革
 積水化学工業株式会社 R&Dセンター 開発推進センター ヘッド 小笠 眞男 氏

●C-2 組織・人材革新セッション
 技術経営を支える人材開発〜価値ある薬を届け続けるために〜
 アステラス製薬株式会社 技術本部 技術企画部 人事統括グループ 課長代理 戸田 篤志 氏

●D-1 フューチャーマネジメントセッション
 未来をつくる「自らイノベーション」フューチャーマネジメント
 Future Management & Innovation Consulting Inc.チーフ・コンサルタント 鈴木 稔

●D-2 フューチャーマネジメントセッション
 未来志向に基づいた事業スタイル変革の実践
 富士通クオリティ・ラボ株式会社 顧問(元代表取締役社長) 髙橋 淳久 氏

基調講演

時流に迎合せず、時代に適合する -東レグループの経営と研究・技術開発-
東レ株式会社  代表取締役社長 日覺 昭廣 氏

rd2016_keynote.png 「時流に迎合せず、時代に適合する」と題して東レグループが継続して先端素材を創出するための研究・技術開発の取組みと、「企業は社会の公器」であり「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」という東レの経営理念のもと、これをグローバルに実行するための経営の考え方についてご講演いただきました。
 研究・技術開発では、「テーマ創出」と「出口戦略」の観点から、中長期視点の研究・技術開発を実現するための考え方と具体的な取組み事例の紹介があり、「技術の将来性は収益化までのスピードではなく社会的価値の有無で判断する」といった長期展望の持ち方や、「答えはすべて現場にある」という現場主義、「人こそが企業の未来を拓く」という人を基本とする経営、倫理観の高い日本的経営の良さを強みとした東レ様の事業運営など、たいへん興味深いお話ばかりでした。それを経営者として実践されている日覺様の信念のこもったご講演に、参加者のみなさまも聞き入っていました。

A-1 製品・技術革新セッション

世界No.1技術と超差別化商品による新たな価値創出への取組み
ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長 河原 克己 氏

rd2016_a1.png 本セッションでは、ダイキン工業様における新たな価値創出のための取組みについてご講演いただきました。
 海外での価格競争の激化、産業構造の変化に伴う価値の多様化が進展する中で、「協創イノベーション」による新たな価値創出を目指したテクノロジーイノベーションセンター(TIC)を設立した背景やねらいについてご紹介いただくとともに、このTICで実践する「コトつくり」強化へ向けた研究開発の取組み、TICを核とした国内外産官学の多様な人材との協創促進の仕掛けづくりなどについて、事例を交えたたいへん興味深いお話をしていただきました。
 とくに、多様な人材の協創を行ううえで、イノベーションリーダーの育成が非常に重要であることは参加者も共感を持って聴講されている様子でした。講演後は、TICに興味を持たれた参加者の方々が名刺交換のために長い列をつくられ、関心の高さが伺えました。

A-2 製品・技術革新セッション

IoTに向け、変わる当社のビジネスモデル〜センサネットワークモジュール開発事例と現在の取組み〜
アルプス電気株式会社 民生・新市場業務部 担当課長 稲垣 一哉 氏

rd2016_a2.png IoT時代の産業構造変化に伴うアルプス電気様のビジネスモデル変革について、事例を交えながらご紹介いただきました。
 大量の引き合い案件があるものの、なかなかビジネスにつながらない。新規顧客が増え、案件ごとに仕様がばらばらで、数量が少ない一方、完成品に近い仕様が求められ価格条件が厳しい。そんな状況を鑑みて、今までのビジネスモデルから、ある程度の標準ノードをつくって網を投げ、ニーズを汲み取りながらビジネスモデルを決めていくという手法へ転換されたことを語られていました。
 その中で、具体的案件の獲得、クラウドまで含めたサービス展開、グローバル展開をしていくためにはパートナーが必要不可欠であり、実際の開発事例でのパートナーとの協業ポイントを語っていただきました。
 講演後は、ビジネスモデルの変革やパートナーとの協業について数多くの質疑応答が行われ、活発な議論がなされていました。

B-1 開発基盤強化セッション

プレミアム品質を実現するための品質保証教育体系再構築事例
ヤンマー株式会社 品質保証部 専任部長 野田 康宏 氏

rd2016_b1.png ヤンマー様では品質改善に対する長期振り返りから「品質改善活動が昔に比べて活発でなくなってしまったこと」を問題と認識されていました。
 そこで、品質保証教育体系を再構築するために、
①QRM(品質ロードマップ)の立案(目指すべき品質水準と実現のシナリオの明確化)
②QRMを実現するためのステップ・教育体系の構築
を実施されており、自社での事例についてご講演していただきました。
 QRMの立案では、若手の意見を積極的に取り込み、10年後までの目標を明確にしています。また品質教育については、スピード感、全員参加、実践重視をポイントとしてプログラム化しています。さらに研修受講者の理解度評価のために評価ツールを活用されていることもお話いただきました。
 講演後の質疑応答では「不具合の解決方法」や「革新マインドの醸成」など聴講者の困り事についての質問が多く寄せられました。

B-2 開発基盤強化セッション

ASEAN開発拠点の自立化に向けた動向と課題
JMAC Thailand 社長 勝田 博明

rd2016_b2.png コンサルティング会社という立場から、タイの実態(マクロ環境、投資、企業の進出状況、生活環境)、タイの人材の特徴・気質を踏まえ、開発拠点の自立化に向けた動向と課題についてお話いただきました。
 タイは地理的にASEANの中心で、日本企業のR&D投資額も増加傾向にあり、ビジネスの拠点としての期待は大きいことがわかります。しかし、問題解決力が高まらない、役割分担主義で技術蓄積ができない、社員が根付かないといった問題があります。
 これらを解決し、開発拠点が自立化するためのポイントとして、ハイコンテクストなものをローコンテクストに翻訳する能力、開発者が現地・現物・現実でマーケットリサーチすること、ナショナルスタッフ・日本人の事情に合わせた人事制度・人材開発、開発ツールのグローバル化が重要であることを話していただきました。

C-1 組織・人材革新セッション

"自ら事業の途をつける研究所"への変革
積水化学工業株式会社 R&Dセンター 開発推進センター ヘッド 小笠 眞男 氏

rd2016_c1.png 既存の事業カンパニーに属さない新事業の創出をミッションとされる、同社開発推進センターの組織変革の取組みをご講演いただきました。
 材料単品での差別化は難しい、多数の企業が同じ市場機会をねらうといった非常に厳しい環境において、新事業を生み出すためには、ビジネスモデル、技術/アイデア、人材の「際立ち」が必要です。
 変革の「第1ステージ」では、全員面談で現状を把握したうえで、勝ちきる戦略づくりに取り組まれました。ビジネスモデル優先の考え方導入、具体的製品と上市時期の見える化、そして社内外への情報発信の強化などについてご紹介いただきました。
 「第2ステージ」では、企画・立上・上市という3つの段階ごとに議論を行い、動機づけや個人・組織のベクトル合わせに取り組まれていらっしゃいます。その結果生まれた成果事例についてもご発表いただきました。
 会場のみなさまからの質疑も活発に行われ、各企業の新事業を担当される方々がどのような変革を目指すべきか、大いに参考になったことと思います。

C-2 組織・人材革新セッション

技術経営を支える人材開発〜価値ある薬を届け続けるために〜
アステラス製薬株式会社 技術本部 技術企画部 人事統括グループ 課長代理 戸田 篤志 氏

rd2016_c2.png 医薬品産業は、新興国市場の拡大や国内の医療制度改革、新たな治療手段の進歩など、大きなパラダイムシフトを迎えています。そのような環境の中で自ら変革をすべく、技術経営の感性をもった高度な人材を育成するための選抜型人材開発事例をご講演いただきました。
 原薬・製剤開発、治験薬製造、スケールアップなどを担当するCMC部門は通常外部委託も盛んであり、自社保有機能の最適化について考え、経営に説明できる人材が求められます。そのため、サイエンスベースの技術論と経営の知識のどちらも必要です。
 取組みのひとつとして人材開発プラットフォームをご紹介いただき、階層/専門性によるマッピングと必要な能力の教育体系を取り上げていただきました。そして人材開発教育の事例として、MOT実践研修とその取組みについて、実際のカリキュラム内容や討議結果、受講者の声などを踏まえながらご説明いただきました。他部門の自部門に対する評価を聞く内部環境分析、トップマネジメント層と双方向の議論など非常に特色のある内容でした。
 質疑応答では活発に議論が行われました。技術経営人材の育成に携わっておられる参加者のみなさまには、大きな刺激になったのではないかと思います。

D-1 フューチャーマネジメントセッション

未来をつくる「自らイノベーション」フューチャーマネジメント
Future Management & Innovation Consulting Inc. チーフ・コンサルタント 鈴木 稔

rd2016_d1.png 株式会社Future Management & Innovation Consultingが提唱する「未来を自らつくるフューチャーマネジメント」についてお話いただきました。
 フューチャーマネジメントでは、「将来を開発する力をつくること」を目的としています。そのためには、今日と未来の経営のために①ゴールを描き、②お客様を起点とした、③「未来から」「今から」のANDの才能で、④試行しながら俊敏に、⑤自ら未来をつくる――ことが必要となります。
 ありたい姿・つくりたい未来を実現する解決ストーリーを立案・実践するために、「ANEW課題ばらし」により、事業目標と基盤目標の同時達成させながら、未来をつくるための力を自らつくるANEWプログラムの考え方と5つの実践手法をご紹介いただきました。
 また、SHINKA戦略・実践を通してT-CAPDoサイクルや大部屋式のK&Tマネジメントを行いながら、現場と幹部が一体となった将来事業づくりを実践した企業事例をお話いただきました。多忙な日常から将来に向けた仕事に目を向けるためのきっかけとなる、たいへん貴重な場となりました。

D-2 フューチャーマネジメントセッション

未来志向に基づいた事業スタイル変革の実践
富士通クオリティ・ラボ株式会社 顧問(元代表取締役社長) 髙橋 淳久 氏

rd2016_d2.png 富士通クオリティ・ラボ株式会社の事業スタイル変革の取組みをご紹介いただきました。富士通クオリティ・ラボ代表取締役として、方針・ビジョンの浸透の難しさやそれらの実現に向けた施策の展開・定着の難しさを身を持って体感され、フューチャーマネジメントの取組みをスタートされました。「未来戦略デッサン」と「革新エンジン強化」をサイクル化し、富士通の「∞モデル」を実践されています。
 本講演では、経営者チームによるV-SMILEの視点に基づいた「未来戦略デッサン」と部課長チームによるV-SMARTの視点に基づいた「革新エンジン強化」の具体的な実践事例についてお話いただきました。また、次業開発ワークショップ参加者・髙橋様の気づきや、戦略課題推進リーダー育成プログラムを通した次世代リーダー層の視座の変化などのご紹介があり、活動を通して組織的に未来思考へ変革していく様子が伝わってきました。
 講演後の質疑応答では経営者チームと部課長チームのつなぎあわせについてのご質問もあり、非常に活発な議論がなされました。

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