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第25回 R&Dイノベーションフォーラム

  • R&D・技術戦略

「第25回 R&Dイノベーションフォーラム」を2022年5月26日(木)に開催し、100名を超える方々にご参加いただきました。本フォーラム初となる会場参加(富士ソフトアキバプラザ)とZoom配信を組み合わせた、ハイブリッド方式での実施となりました。

今大会は、”「R&D」×「ソーシャル・イノベーション」”を基本コンセプトとしました。社会課題を解決するために重要な考え方や、社会課題解決に向けた取り組み事例などを中心に、第一線で社会課題に向き合っていらっしゃる方にご講演いただきました。

参加者の方々からは、「参加して良かった」「難しい課題だが、具体例などもあり分かりやすかった」といった声をいただき、多くの気づきと学びが得られた一日となりました。

基調講演

未来を実装する~社会の変え方のイノベーション~
東京大学 産学協創推進本部 FoundX ディレクター 馬田隆明 氏

テクノロジーの社会実装の方法論について、お話頂きました。
新しいテクノロジーを開発しても、受け入れて活用する社会を変えていなければテクノロジーを活用することが出来ません。ご講演では、第二次産業革命の蒸気動力から電気動力への転換を例に、テクノロジーと社会の両方を変えていくことの重要性を説かれ、社会を変えるにあたっては、デマンドとインパクトを基盤として、リスクと倫理、ガバナンス、センスメイキングで技術を社会に実装していくフレームワークをご提示頂きました。
・理想の未来(インパクト)を提示してデマンドを提起すること
・テクノロジーは人の悪い面もエンパワーしてしまうため、リスクと倫理を考えなければいけないこと
・ガバナンスは近年相対的に力を失ってきており、自分たちのガバナンスをアップデートすることが必要であること
・センスメイキングは、納得や腹落ちを指し、各種ツールを用いて受け手の意識を変えることが大切であること
など社会実装のポイントをお話頂きました。
また、事業戦略だけでなく、資本政策も考えることが求められており、資本は公共性が高い企業に集まる環境となってきています。そこで公共性を訴求するインパクトが重要になり、民間企業においても政策起業家的な要素が必要となってきていることもご紹介頂きました。

  

オープンイノベーションを基盤としたデータ駆動型新well-being社会システムの実現
弘前大学大学院医学研究科附属健康未来イノベーションセンター副センター長・教授 村下公一 氏

ヘルスケアとビッグデータを掛け合わせた社会システムについてお話頂きました。
日本が抱える2025年問題として、超高齢化社会の到来が挙げられ、死因の多くについて生活習慣が影響していることをご説明頂きました。産学官民連携で、強固なオープンイノベーション体制を敷き、ビッグデータの取得と解析でチームを編成し、健康未来のシミュレーションに取り組まれております。
企業・大学の枠を超えたプロジェクトを推進するにあたり、
・様々な領域が関わり、学術的なエビデンスを蓄積してイノベーションを起こす
・疾患の発症要因を特定するだけでなく、改善方針を立てることで情報の価値を高める
・様々なステークホルダーを巻き込み、実証実験できる環境を整える
・デジタルツインとソーシャルキャピタルの基盤を築き、両軸でデジタルとリアルをシームレスに行き来できるようにする
などのポイントをご説明頂きました。
また、質疑ではステークホルダーの巻き込みについて、活発な議論が行われました。

  

Aセッション

冷えとフレイルへ独自のアプローチ ~超多項目ビッグデータ活用による未病状態の改善~
クラシエホールディングス株式会社 経営企画室
R&D戦略推進チーム・チームリーダー 稲益悟志 氏


クラシエグループではCrazy Kracieを掲げ世界を夢中にさせる百年企業を目指されており、研究所では先駆けて新たな成長の種を見出すために、グループ横断型の基礎研究チームを立ち上げ、オープンイノベーション活動を推進されています。

本講演では、弘前大学のCOIモデルによる産官学民連携により、“冷え”という症状に対して、ビッグデータを活用したプラットフォーム構築により解明し、ソリューション開発につなげる取り組みについて事例を交えてご紹介頂きました。また、研究者目線だけでなく、経営者目線にたち、事業ストーリーを示すことに加えて、研究投資価値の見える化を行うことの重要性についても語って頂きました。
質疑応答でも、外部との協業の経緯やポイント、経営者目線での価値の見える化など、様々な観点で活発に議論がなされました。

  

「筋電計測で社会を変える~“自分ごと"からの挑戦」
アルプスアルパイン株式会社 開発部 開発4グループ
筋電システム開発リーダー 伊藤隆幸 氏

同社における新事業検討活動の中で、社会課題の解決につながった事業化テーマ検討事例についてご紹介頂きました。
社会に関しての関心ごとから議論を行い、“自分ごと”として熱意をもって取り組めるテーマを選定し、仮説検証を繰り返し、本質的な価値提案につなげ、社会実装実験までつなげた検討過程を生々しく語って頂きました。
とくに、社会実装実験につなげるまでの過程では、フットワーク軽く社内外に対して仮説検証を繰り返し続け、周囲を巻き込みながら検討を進めていくことの大切さを語って頂きました。
質疑応答でも、テーマ推進判断や推進上の体制、人材育成など様々な観点で活発な意見交換がなされ、関心度の高さが伺えました。

  

Bセッション

SDGs達成に向けた社会課題解決のためのイノベーション技術開発
~ドライファイバーテクノロジーの応用による循環型経済の実現と環境配慮型のものづくり提案~
セイコーエプソン株式会社 執行役員 技術開発本部
本部長(CTO)市川和弘 氏

持続可能でこころ豊かな社会を実現するというありたい姿を掲げられ、実現のための価値創造ストーリーを策定し、マテリアリティの中でも循環型経済の牽引と産業構造の革新についてお話を頂きました。
具体的には、脱炭素や資源循環、お客様のもとでの環境負荷低減、環境技術開発に取り組まれており、社会課題に貢献する商品開発において、社会課題と製品の問題点、お客様の困りごとを考え、課題の本質を見定めること、従来発想ではなく発想を転換して技術開発すること、商品化プロセス全体を考え事業化・ブランディングを考えることをポイントとしてご紹介頂きました。
また、セイコーエプソン様はバイオマス分野への貢献や環境配慮型のものづくりへの挑戦、共創を通じたエコシステムの構築などにも取り組まれています。自社のコア技術をしっかり見定めて、未来の事業へ挑戦する中、環境性と経済性の両立にも悩まれており、会場ではその点も含めてディスカッション形式で質疑が展開され、大いに議論が盛り上がりました。

  

ゼロエミッションに向けた海運業の取り組み
~船舶による大量輸送はどのようにサステナビリティと向き合うか~
株式会社商船三井 技術革新本部 技術部 ゼロエミッション技術革新チーム
チームリーダー 大西暢之 氏

商船三井様は喫緊の課題が環境保全と温暖化対策であると認識され、環境ビジョン2.1を打ち出し、世界で最も早く2025年にネットゼロエミッションを宣言しておられ、それに向けた取組をなされています。海運業は成長事業であり、年々海上輸送量が増加している中、輸送船は重油の使用量が非常に大きく、GHG削減が強く求められている事業です。しかし、船の輸送効率が高いためGHG削減のハードルが高く、GHG削減の決定的な解決方法がないことに悩まれております。
GHG削減の手段としては、現実的なのは代替燃料であり、候補はいくつかありますが、重油に匹敵するエネルギー密度がある燃料はなく、先行きが見えない状態です。
そのような状況の中、動力を風力に変えるという発想の転換をし、帆船を新たに開発されています。非製造業のR&Dという立ち位置での中で、差別化のため欲しいものは自分達で開発しなければいけないと考え、自社での積極的な開発体制へ舵を切られております。社会課題解決のための積極的な開発体制を転換するにあたり、今欲しいものが出そろった後の世界を想像して次に欲しくなるものを探し、何が欲しいかを明確にすることやパートナー選び、プロジェクトオーナーの心構えなどのポイントをご紹介頂きました。

  

Cセッション

日本型ニューロダイバーシティの実現に向けて
~R&D部門からはじめる脳・神経、
認知の多様性活用のススメ~
Neurodiversity at Work 株式会社 代表取締役
一般社団法人子ども・青少年育成支援協会 共同代表
日本ニューロダイバーシティ研究会  発起人 村中直人 氏

脳や神経、認知の多様性を意味する「ニューロダイバーシティ」という概念について、
これからのR&D現場でどのように適用していくのかというテーマでご講演いただきました。
第一部では、ニューロダイバーシティの基礎知識として、人間の思考や行動の違いをソフト面だけでなく、脳や神経のはたらきというハード面からも見ることの重要性を説いていただきました。
そのうえで、脳や神経由来の特性を価値観や行動規範(神経由来の文化)の違いとしてとらえ、それらが活かせる文脈(環境)について考えるきっかけをくださいました。
第二部では、グローバル企業でのニューロダイバーシティの実践事例と、日本企業のなかで目指したい日本型ニューロダイバーシティとの違いについて説明頂きました。
同じ形のレンガを削り出してつくる「レンガモデル」だけではなく、様々な形、大きさの原石をそのまま活かしてつくる「石垣モデル」の考え方を提案され、ニューロダイバーシティを活かしていく組織マネジメントのヒントを投げかけてくださいました。
第三部では、村中氏と仁木(セッションコーディネーター)の対談を実施しました。
参加者の現場での工夫や悩みなども伺いながら、R&D部門でどのようにニューロダイバーシティの考え方を実践できるか、自由に議論しました。

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