第4回 開発・技術マネジメント革新大会
- R&D・技術戦略
日時・場所
東京大会 2000年5月11日 (虎ノ門パストラル)
大阪大会 2000年5月18日 (千里ライフサイエンスセンター)
革新大会 全体レポート
「開発・技術マネジメント革新大会」は今年で第4回目を迎え、東京と大阪で300名以上の方々にご参加いただき、多くの方から今後の研究・開発設計・生産技術部門の方向付けに参考になったとの評価を得ることができました。
基本テーマ
■R&Dビジョンの確立と実践化(From now Vision)
・事業戦略・R&Dビジョン・R&D戦略の再構築とコンカレント革新
・将来競争力優位を確立するためのRD活力革新
■チャンスを育てる俊敏な事業と開発力の実現(Agility management)
・市場・顧客の進化をとらえたビジネスプラットフォーム変革と開発革新
・内外CE連携力強化を含めた戦略的開発プロセス革新
■顧客から認知される技術力・製品力の強化(Satisfid Technology)
・開発スピードアップとコア技術強化のための開発業務革新
・市場競争力強化のためのライフサイクルプロフィットマネジメント
■R&D戦略と開発革新能力の強化(Organize Innovation)
・事業戦略にリンクし「My Will My Vision」を鮮明化した開発力強化活動
・事業シナリオ・研究テーマ設定・人材アセスメント
を掲げ、活動を実践されている企業の方にご依頼し、貴重な講演をしていただきました。
以下に、講演内容の簡単なまとめを紹介させていただきます。
特別講演
『日経プリズム研究から見た優れた会社の条件』
日本経済新聞社 大村 芳徳氏
日本経済新聞社 編集局産業部次長 大村 芳徳氏 特別講演では、「日経プリズム研究から見た優れた会社の条件」というタイトルで、日本経済新聞社編集局産業部次長の大村芳徳氏から講演していただきました。
日本経済新聞社の多角的企業評価システム「プリズム」による優れた会社研究は「収益と成長力」「社会性」「開発研究」「若さ」の4つの視点から企業をとらえています。今回の調査では例年に比べて「開発研究」と「若さ」の寄与率が高まったことが特徴です。
この研究を通じて、浮かび上がってきている先端技術経営・核となる事業と戦略目標・グローバル連結経営・斬新なアイデア・IT環境と独自の発想の業務革新等の優れた会社の条件について考えてみる、ということをテーマにお話しいただきました。
ネーミングの由来、どのぐらいの規模の調査なのか、というさわりの部分を講演内容から抜粋しました。
■ 多角的企業評価システム「プリズム」
「プリズム」はPrivate Sector Multi Evaluation System(PRISM)で、民間部門の多角的な評価システムということです。皆様の会社も、製品をつくったときに呼びやすいネーミングを考えると思いますが、弊社も、呼びやすくて、人の頭の中に残る名前はないかということで、あとづけでうまくくっつけて「プリズム」にしたのだと思います。今年の2月21日に掲載した分で7回実施しています。
どういう発想から「プリズム」を生み出したかというお話をしましたけれども、数量情報だけでは企業を評価しきれないので、人、技術力等、数値になかなか表しにくいものも反映させるような評価の仕組みがつくれないかということでつくったのが「プリズム」です。
(~中略~)
■ 評価対象企業
有価証券報告書、会社案内等々、皆様の会社はいろいろな情報開示活動をされていると思います。「プリズム」の調査に関しては、有価証券報告書等に記載されているデータだけでは評価できませんので、今年のケースでいうと、50数項目あるアンケートを東証の一部・二部上場企業、それに準じる非上場の有力企業、例えば大阪でいえばサントリーさん、竹中工務店さんなどにも送らせていただきました。その総計は1885社です。
「プリズム」も7回を重ね、認知度が高まりまして、企業の広報や経営企画の方々から、きちっと回答をいただけるようになりつつあります。それでも、全社からはご回答いただけず、回答企業数は1164社、有効回答企業数は1162社です。アンケートの3分の1ぐらいが空白の企業に関しては、追加で電話等々で記述してほしいとお願いするのですけれども、それでも返ってこない企業がありまして、3分の1以上白紙で返ってきた場合には有効回答と認めていません。しかし、2000社弱を対象にしたアンケートで回収率が60%を超えるというのは、そこそこ回収率の高い調査かと思っています。
~その他、以下のような内容で、優れた会社の条件を探っています(抜粋)。~
・ 分析に使用したデータ
・ 共分散構造分析とは~共分散構造とパス図について~
・ PRISM評価モデル概略図
・ PRISM4因子の指標
・ 過去4回のトップ10
・ 過去4回の評価因子(軸)とその影響力
・ 企業評価システム「プリズム」過去7回のトップ30
・ 日経の「研究開発活動に関する調査」の研究開発費ランキング
・ 研究開発調査・過去7回の順位
Aセッション
次世代R&D戦略
『リコーの長期技術戦略策定プロセスとその一例』
株式会社リコー 塩田 玲樹氏
Aセッションでは、『次世代R&D戦略』を大きなテーマに掲げ、「リコーの長期技術戦略策定プロセスとその一例」というタイトルで、株式会社リコー研究開発本部オフィスシステム研究所課長の塩田玲樹氏より講演していただきました。
リコーでは、現事業の開発部門と研究開発の役割を明確にし、研究開発が何を目指すべきかの中長期戦略を検討策定しました。この中長期戦略の策定にあたって、市場や技術の予想される変化をイメージとしてまとめ、さらにその中から、何をすべきかをまとめていきました。
この長期技術戦略策定プロセスを以下に抜粋しました。
■長期技術戦略策定プロセス
では具体的にどういう方法論をとったかということになりますが、これは何の目新しいこともありませんがステップとして書くとこういうことです。
まずトップに積極的関与して頂いたということがありますので、関与して頂くにあたって最初にトップビジョン・デザイヤーを確認します。そして、長期というのは戦略立案の中で10~15年という表現をしていますが、10~15年先の一般的な世の中の動向変化を予測し、シナリオライティングをやり、アイデアを出します。これは一般的な動向として記述していますので、この中で我々は意志を持って進むべき対象を決めて、リコーが提供する、将来のオフィスのあるべき姿を仮説として立てます。この仮説を立てますと後は順繰りで、どんな機能があれば実現できるか、どんな商品が必要か、どうすればできるかという順序になります。
~その他、リコーでの活動を以下のような内容でお話しいただきました(抜粋)。~
・ 長期技術戦略策定の狙い
・ ImageImage Communication~5つのコンセプト~
・ 長期技術戦略の対象
・ 具体的な実現プラン:プロトタイプ
・ 中・長期戦略の全体の流れ
・ 戦略策定にあたっての注力点
・ トップによる運営
・ 戦略軸と行動軸の一致
・ 具体例-1:ドキドキュメントのマルチメディア化、マルチメディアドキュメントの例
・ 具体例-2:デデジタルペーパー、電子情報と紙情報の氾濫
・ 最近の開発事例
Bセッション
開発設計革新
『開発設計革新』
富士電機モータ株式会社 山本 尚氏
Bセッションでは、『開発設計革新』を大きなテーマに掲げ、「設計技術標準化によるビジネスプロセス革新」というタイトルで、富士電機モータ株式会社開発部基幹技術課課長の山本尚氏より講演していただきました。
産業用モータという成熟した製品を対象に、構造や技術の先行標準化活動を通じて機種戦略、商品コンセプトを見直し、事業再編やビジネスプロセス全体を改革していく活動につなげていった事例を紹介します。
また、成熟市場において競争力の源を見出す視点なども非常に参考になるお話でした。講演内容から、開発思想(コンセプト)についての部分を抜粋しました。
開発の思想として、我々が考えたのは、部品レベルはミニマムで、それでつくり上げられる製品のバリエーションはマキシマムを狙ったような、モジュール発想の標準化をするということです。
絵のイメージの解釈ですが、分析する対象、お客様からくる要求はすべてデータにします。標準品、一般受注品、継続受注品は、我々のつくっているモータのすべての種類を表します。これを視野に入れた新たな製品ラインアップの仮構想を持ちます。ここまでは製品のイメージです。この製品を効率よくつくり上げるために、モータを構成しているパーツごとに構造モジュールができないかと発想しまして、構造モジュールごとに、あるいは部品レベルごとにどうすべきかを考え、標準部品群をつくることにします。
そうすると、少なくともこの3つ(標準品、一般受注品、継続受注品)に対しては、ここで使った標準部品が有効に活用できることになります。これ以外の、イレギュラーに発生するような極めて特殊なものに対しては、標準部品を最大に活用して、こういったモータ(特殊環境用モータ、特殊機能用モータ、高性能モータ)にも適用できるところまでは考えておきます。極めて特殊なものについては、ある程度の例外措置的な考え方も入れた標準化をすることを、我々のコンセプトとして実行してきました。
この長期技術戦略策定プロセスを以下に抜粋しました。
~その他、開発現場での活動を以下の内容でお話しいただきました(抜粋)。~
・ 小形三相モータのバリエーション
・ 産業用小形モータの特性
・ 環境の変化
・ 開発の背景1、2
・ 開発の着眼点
・ 開発のアプローチ
・ 活動の枠組み、ステップ、苦労点
・ 活動のポイント1、2、3
・ 文化・常識の変革
Cセッション
組織・人材開発戦略
『構造こわしと新しい基軸づくり/事業革新に向けて』
九州大学大学院 教授 古川 久敬氏
1990年に「構造こわし(組織変革の心理学)」を発表し組織年齢をベースに組織変革について考えてきました。
デジタル革命の大波のなかで全てが変化するような議論もありますが、組織論において不変の課題もあります。たとえば、個人の意欲が生まれる心理メカニズムやチーム業績の源となる効果的「学習」の条件です。
今回は、組織の構造こわしと新基軸づくりという視点から21世紀に向けた創造・変革のリーダーシップ論について最新の研究成果を紹介します。
まずは、組織が成長し、発展を続けられる条件として、以下の図を示されました。
この条件を確認することから始め、リーダーシップ論、組織論について、最終的にはこれから日本が進んでいくべき方向を提示してくださいました。
~その他、以下のような内容でお話しいただきました(抜粋)。~
1.組織が成長し発展を続けられる条件
・ リーダーに期待されている役割のシフト
・ 必要とされる2つのリーダーシップ
2.リーダーシップ第1原理
・ 経営課題とそれを成し遂げる人材
・ 「基軸づくり」
3.リーダーシップ第2原理
・ 制度改定のキーワード、その効果と副作用
・ 意欲が「創造性」と「業績」を生むために必要とされる6つの学習
4. 「学習させる組織」をめざす
・ 学習を意図的にさせる組織づくり、チームづくり
・ 営業支援システムの保存されたログの分析(実証研究)
5. あらためて日本企業の強みづくり
『富士通の人材開発戦略/技術教育における新基軸づくり』
富士通株式会社 小林 正明氏
富士通では21世紀に向けた人材開発戦略を積極的に進めています。今回はその中から特に1990年代の中盤から取り組んできた技術教育の再構築と実践についての紹介をしています。
富士通の技術教育の基本的な考え方は「知力と人間力の同時強化」です。組織的な設計技術教育の再構築とあわせて、開発設計マネジメント教育にも力をいれています。開発部門の現状をふまえた源流プロセス革新や幹部層の革新ビジョンづくりと実践化活動を進めています。これは富士通の「夢をかたちに」というスローガンです。夢は楽しくて、人を幸せにするものですが、簡単にかたちになるものではありません。夢をかたちにするためには、いろいろなプロセスやビジョンが必要だろうと思います。
(~中略~)
「夢」はまず「目的・目標」のかたちに具体化する必要があります。それから、社会の状況や技術の状態、将来形などを「洞察」しまして、これをこうしようという強い「意志」にまで高める必要があります。甚だ独断的ですが、「目的・目標」「洞察」「意志」の部分を「ビジョン」と呼びます。これがしっかりありますと、その下に「先見・構想・戦略」がありまして、「計画・予算・実行」となり、「かたち」にすることができるわけです。 「夢」はまず「目的・目標」のかたちに具体化する必要があります。「目的・目標」「洞察」「意志」の「ビジョン」がしっかりあると、「先見・構想・戦略」があり、「計画・予算・実行」となり、「かたち」にすることができるわけです。
こういった信念のもと、ビジョンを確立し技術教育の再構築が進められました。
~その他、以下のような内容でお話しいただきました(抜粋)。~
・ ありたい姿…6つの視点
・ 企業ビジョンとBUのビジョン
・ 技術者が具備すべき技術力
・ 求められる技術力の要素
・ 社会の発展と技術教育への要求
・ 技術教育の重点、ビジョン
・ 共通技術教育カテゴリー
・ 設計品質マネジメント講座の体系、これまでの状況
・ 設計業務改革の活動目的、展開、実践研修後の変化レベル(革新展開力)
・ BU単位実践 1年目の成果例(98/下~99/上)
・ 外向きのマネジメント:上方影響力
・ リーダーの上方影響力と部下の満足度
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