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第8回 開発・技術マネジメント革新大会

  • R&D・技術戦略

日時・場所

2004年6月9日(水) 
東京コンファレンスセンター品川
9:45-18:00

革新大会 全体レポート

第8回開発・技術マネジメント革新大会は、お陰さまで盛況のうちに終了いたしました。多数のご参加をいただきましてありがとうございました。大会の中では、企業での開発革新活動の紹介、ならびにJMACからの最新マネジメント手法の提案などが発表されました。

基本テーマ

成長革新と価値創造

貴重講演

「新たなる価値創造へのチャレンジ~マイクロマシン・ナノテクノロジー研究を通して~」
オリンパス株式会社 代表取締役社長 菊川 剛 氏

基調講演では、オリンパス株式会社菊川社長より「新たなる価値創造へのチャレンジ」と題してお話いただきました。
オリンパス様は経営理念「Social IN」で価値創造企業の姿勢を明確に打ち出され、そのコアコンピタンスはオプト・デジタル・テクノロジーとされています。

オリンパス様の技術コンセプトは、工学技術・精密技術(1990年以前)→センシングテクノロジー(1990年代) →マイクロテクノロジー(2000年以降) →ナノテクノロジー(近未来)の流れにあり、それらの技術革新がもたらした医療分野での価値提供の移り変わりを実例でご紹介いただきました。さらにナノテクノロジーでゲノム・タンパク・細胞レベルでの診断・治療や最医療での新たな価値創造に現在取り組まれています。
2003年4月に未来創造研究所を作られ、そこでの研究についてもご紹介いただきました。最後に実際の技術開発の一端をビデオで紹介いただき、オリンパス様のマイクロマシン技術やナノテクノロジーへのチャレンジ姿勢がよくわかるご講演でした。

RD&Eマネジメント革新センター活動報告

「MissionⅢへの取組みとアクションプラン」
JMAC 取締役 シニア・コンサルタント 大岩 和男

RD&Eマネジメント革新センターの今までの活動概要と今後の取組みについての話があった。RD&Eマネジメント革新センターは1997年度から500社以上の企業の皆様・大学等のご支援を頂きながら、「技術と創造と革新をキーワードとした企業経営の進化の追求」、「世界に向けた革新プラットフォームの提供」、「研究開発・設計・生産技術領域のマネジメント革新を通じた経営革新社会の発展への貢献」の3つの理念の下に活動を行ってきている。

その活動を通して、「300社、500名のメンバーとのマネジメント分野別交流」、「企業における革新実践事例の蓄積と革新ケース化」、「企業間の革新交流の場の提供とネットワークづくり」などの活動成果が出てきているとのことであった。今後は、RD&Eコンサルティングの新たな潮流をふまえて、「分散・自律・自己実現型の革新プラットフォームの発展」、「変化の先に立つ先導型マネジメント情報の発信」、「先進的×先端的な革新活動の現場知の融合によるオリジナルマネジメント技術での世界への貢献」を狙いに、企業・大学の皆様とともに、より一層活動に力をいれていきたいとの意気込みを話された。

Aセッション

R&D戦略革新


「知識科学を基盤にしたMOT改革の実践」
北陸先端科学技大学院大学 知識科学研究科 教授
近藤 修司 氏

今時代は、知識をベースとして価値を創造する構造転換にあり、キーワードは「未来を作り出す経営」である。未来を創り出す原動力となるのは「人間力」であり、「技術的人間力」と「情緒的人間力」のバランスをとる文理融合が企業の競争力を生み出す。「人間力」を軸とした技術経営の実践として、死の谷を乗り越えるヘリコプター経営が求められており、シーズとニーズを新結合し、進化させる人が必要となっている。人間力、すなわち、ありたい姿の実現力のためには、7つの「心の姿勢」が求められており、心の姿勢の変換が、技術経営の基本となる。会場内では、「本質的問題のつかみ方」や「知識の現場適応」などについて活発な意見交換があり、今後の知識科学を考える上で良い研究の場となった。

「先端技術思考の島津製作所のR&D革新」   
株式会社島津製作所 人材開発室 室長
藤井 浩之 氏

社会に役立つ技術を提供することが、島津の技術者の使命であり喜びである。島津では一人の技術者があらゆるプロセスに関わる、やりがいを実感できる仕事を提供している。一方、計画納期の遅れが常態化し、開発部門の生産性向上が長年の課題であった。‘98に過去の成功要因を分析し、島津に合った開発プロセス革新活動を進めている。島津の風土、技術者の働きがい、人が育つ環境を考慮し、単なる効率化活動でなく、技術を強めていくような活動を実践している。受講者との質疑応答の中でも、“技術”、“人”を大切にする風土、経営者と技術者の風通しの良さの紹介があり、田中耕一さんに代表されるような、素晴らしい発明を生み出す島津の技術マネジメントが感じられた。

Bセッション

 開発設計革新

「事業成果直結型の連続した開発プロセス革新を実現するための2軸思考と役割革新法」
JMAC チーフ・コンサルタント 野元 伸一郎 

景気は徐々に回復の傾向にあるように見えるが、技術部門はコストダウン/開発期間短縮対応等目先の業務をこなすことで疲れきってしまっており、新しいマネジメント・スタイルを考えていく必要がある。その際には、2軸思考/未来志向により開発経営のベースをつくっていくという考え方が重要である。このようなスタイルのマネジメントの推進においては、技術企画機能とスタッフ機能の強化がポイントであり、テクノロジー・ロードマッピングを活用した場の設定等による技術者のミッション・コミットメントが起点となる。また、このような考え方を踏まえた次世代プロジェクトマネジメントにおいては、「顧客」、「プロジェクト」、「水平展開」へ貢献することを念頭においた技術者の役割革新、それを支えるイノベーションスタッフの強化が重要である。会場内では、イノベーションスタッフの強化法、基盤力評価指標について活発な議論が交わされた。

「設計改革からナレッジマネジメントへ」
ソニー株式会社 セミコンダクタソリューションズネットワークカンパニー 
ミックスシグナルデバイスカンパニー
経営品質管理部 ナレッジ技術課 統括課長 鈴木 哲哉 氏

LSI設計の枠組みは流動的に変化するようになってきている。このような状況を踏まえた上で、設計品質改善のためには、①開発初期段階の課題抽出、②情報共有、③課題の確実な解決、という「当たり前」のことの確実な実施が本質的な対策になると考えた。具体的な施策としては、 ①「課題バラシ」手法の導入、②仕事をしながらデータを残せるDBの構築、③短時間検討会の高頻度開催、を推進した。この結果、トライアルProjectでの実績が高い評価を得て、カンパニー全体へ水平展開できた。当活動では、設計の経緯と情報を共有することで設計の質を向上させることを優先した。結果として蓄積される情報から知識を生み出し、設計現場にフィードバックすることが次のステップの課題である。会場内では、現場における推進の工夫について活発な議論が交わされた。

Cセッション

製品・サービス革新

「モノ創り価値を高める設計品質革新」
JMAC チーフ・コンサルタント 渡部 訓久

製品の開発スピードアップや他社との差別化が求められる中、設計品質向上のためには、問題対応に追われる“後ダレ開発”の悪循環を断ち切らなければならない。組織的に設計品質を高める革新活動(未来構想力/感動創造製品・サービス/独創先進技術/開発プロセス)を日常業務の中で行なう必要がある。設計品質を高めるための考え方に、「品質をキープする5原則」と「魅力商品を創出する3つの要素」がある。また、「知力」「人間力」を持つ設計技術者を育てることも必要である。参加者のみなさまには、技術力を組織としてどう高めていくかについて興味を持っていただいた。

「コクヨにおけるモノ創り価値革新
~ 設計品質強化活動 ~」

コクヨ株式会社 ファニチャーカンパニー 
商品開発本部 設計開発部 部長 橋本 厚 氏

 オンリーワン商品を創出するためには、コンセプト構築力・デザイン力・設計力を強化しなければならない。コクヨでは、過去に開発革新活動を行ない、そこで出た課題が再認識され、現在、設計力向上のため「設計塾」を実施している。 設計塾では、パートナー企業・企業トップや部門長・複数の部署を巻き込み、携力強化・シナジー効果を得ながら設計スキル向上を図っている。本講演では、具体的な手法・実施例やその効果、さらには今後目指すこと、やりたいことなどを説明していただいた。
参加者のみなさまには、技術力を組織としてどう高めていくかについて興味を持っていただいた。

Dセッション

開発システム・人材開発革新

「強い特許を生み出す技術人材育成の取り組み」
日産自動車株式会社 知的財産部 
特許管理グループ 課長 井野口 雅敏 氏

日産自動車株式会社における従業員教育については、「個々人が目標に向かって自己研鑽を行い、その目標を達成するための教育講座を会社は用意する。」ということをキーコンセプトとして体系を構築している。一方、知的財産に対する取組のポイントは「開発にリンクした特許活動の推進」である。このような背景の下、知的財産教育では、それらを達成するための方策として、①層別・対象・教育機会の見直し、②態度・行動変容重視の教育、③研究・開発、プロセスの中に知的財産活動を仕組として確立するための意識・風土の醸成、といったことを実施している。当日の講演は、日本企業の喫緊の課題をテーマにしており、会場内でも活発な意見が交わされた。

「R&D人材マネジメント革新
~ 変革推進リーダー創出を目指して ~」

富士写真フイルム株式会社 人事部 担当部長
藤田 昇 氏

変化する事業環境に対応して、現在、富士写真フイルム株式会社において人材に求めることは、「新しい価値の創造であり、これを実現する人材を「革新リーダー」としている。そして、この革新リーダーを創出する仕組みとして、①ハイパフォーマーの発掘、②選抜教育、③選抜人事と活躍の場づくりという流れを構築しており、この一連の流れの中で「2軸指向」を技術者にいきわたらせることを指向している。「2軸指向」とは自己の将来像に向けた課題と担当テーマの課題について同時に成果を出すことであり、この人材育成への取組みが、社内の変革構造づくりの一つの場となっている。当日の講演では、会場から革新リーダー研修の具体的な内容についての質問等、活発な意見が交わされた。

Eセッション

成長戦略・事業戦略革新

「成長戦略のためFuture Managementの開発と実践」
株式会社FMIC  CTO シニアコンサルタント
岩崎 壽夫 氏

企業が先手を取り、独自の価値を提供する成長戦略を推進するアプローチとして、「未来からの変革デッサン(Future Management)」の活動成果と実践手法を紹介する。「未来は来るものではなく創るもの」というキーワードの元、3つの変革視点を挙げる。
・未来に対してどういう影響を及ぼすか
・独自ポジションの設計
・創発型戦略策定プロセス造り
Future Management導入企業の事例紹介にて「未来日記」などのツールの紹介と、導入意見例として、「現在からではなく未来からの見方により思考が変わった」、「ツールが斬新であった」などの声が紹介された。会場からは変革チームの編成についてなど実践的な質疑が活発に行なわれた。

「異業種・知の創発プラットフォ-ムを目指した
e4cリンクの取組みと新規事業開発」
株式会社イーフォーシーリンク 代表取締役副社長
横野 滋 氏

携帯電話やCDなど豊富な事例や体験を用いて現在の大きな変化とビジネスの変遷の紹介から始まる講演となった。1社単独のビジネスの限界が見え、顧客が予見できず、ネットワーク社会の到来からユビキタスへの変換が行なわれている環境変化の中、R&Dマネジメント、マーケティングのあり方も変わる。「相互作用」による新たな関係の中で新しい付加価値を持つ「創発の時代」をキーワードにe4c-linkでは一流のみの異業種企業、団体、個人の連携プラットホームの企画運営などを手がける。また、新規事業の生まれる土壌のポイントとして、新規事業の「種類」、「意味づけ」、「評価法」を明確にすること、ビジネスモデルの描き方などの実践的な手法も紹介された。会場は豊富な経験に裏打ちされた幅広い講演に熱心に聞き入っている様子だった

Fセッション

次世代R&Dマネジメント研究

「CTOのためのリーダーシップ開発」
HayGroup Korea コンサルタント
姜 信一 氏

米国、日本、韓国の比較を行いながら、CTOにどのようなリーダーシップ、コンピテンシーが求められるのかをテーマに講演が行われ、活発な質疑が交わされた。そのポイントとして、①好業績をあげることができるCTOは、部下である研究者が活き活きと研究できる組織風土をつくることができる。②好業績のCTOは、6つのリーダーシップスタイル(強制型、権威型、関係重視型、民主型、率先型、育成型)の一つに偏らず、複数のスタイルを状況に応じて使い分けることができる。③CTOの経営上の役割は、“こういう方向でやれば、必ずいい結果がでる“という自信を中心に、専門性、概念(コンセプト)思考力、イニシアチブ、育成力の4つを力を高い水準で持ち、戦略重点を絞り込んで資源を集積し、強い執着心を持って必ず戦略を実現させる事である。④リーダーとしての能力を開発するためには、自らの“気づき”が重要であり、そのためにはリーダーシップが測定評価できるようにすることが重要である。

「JMA2004年提言 独創重視のプロダクト革新と限界突破型リーダーの育成」
社団法人日本能率協会 経営研究所 研究部長
肥本 英輔 氏

2004年3月に発表されたJMA2004年提言の内容を中心に講演がなされ、活発な質疑が交わされた。JMA2004年提言は、国内外の企業への取材、経営者の方々との懇談会・研究会による研究活動の結果としてまとめられたものであり、5つの提言から構成されている。提言1は、“独創は、経営者の理念、哲学、美学の上に成り立つ“として、本田宗一郎氏、井深氏の言葉をひもときながら経営者の理念の重要性が確認された。提言2では、モジュラー型、インテグラル型の2つのモノづくりパターンを元にとして、ブラックボックス技術化することの重要性が語られた。提言3では、デザイン重視のプロダクト革新の重要性、提言4では、日本の強みを生かした環境重視、人間重視のプロダクト革新の重要性が訴えられた。提言5では、これらの独創的なプロダクト革新を率先できる人材として、コンセプト構想力と実践展開力を備えた限界突破型のリーダーの育成が重要課題であることが語られた。

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