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第9回 開発・技術マネジメント革新大会

  • R&D・技術戦略

日時・場所

2005年6月8日(水) 9:45-18:00 
東京コンファレンスセンター品川 (JR品川駅 港南口より徒歩2分) 

革新大会 全体レポート

今回で9回目の開催となる開発・技術マネジメント革新大会は、毎年300人以上の方々にご参加いただき、ご好評をいただいております。今年の大会では、基本テーマを「成長のための前進的破壊」とし、開発・技術マネジメントの各分野での先行事例をもとに、皆様とこれからの開発・技術マネジメントを研究・相互交流していきたいと考えております。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

基本テーマ

成長のための前進的破壊

貴重講演

「技術からみた成長戦略」
 松下電器産業株式会社 代表取締役専務 古池 進 氏

基調講演では、松下電器産業株式会社 古池専務より 「技術から見た成長戦略」というタイトルでご講演いただきました。
講演の中では、「事業の付加価値の源泉がR&Dにシフト」した今、グローバルな大競争の中で日本が生き残るためには、「技術戦略・マネジメントが改めて重要」であるとの現状認識を語っていただきました.。
そして、松下電器産業様がこれまで構築してきた技術戦略・マネジメントについて、事例を交えてご紹介いただきました。内容としては、技術戦略の全社共有化の取組み、研究テーマのマネジメント方法、統合技術プラットフォームの考え方、ブラックボックス技術など、非常に興味深い内容で、V字回復を果たした松下電器産業様の強みの源泉をうかがうことができるご講演でした。

特別講演

「技術者よ 大志を抱け」
~ パラダイム・シフト時代の研究開発 ~
日経エレクトロニクス 編集長 浅見 直樹 氏

日経エレクトロニクス編集長の浅見様からは、改善型ではなく、画期的な技術・製品の開発が必要とのメッセージを発信いただきました。
ここ数年の、企業の短期的な収益志向を受け、R&Dの現場でも短期的な成果を重視して、改善型の技術や製品に走る傾向が見られます。
ただ、本当にそのままでいいのか。今だからこそ、改善型ではなく、画期的な技術や製品の開発が必要なのではないか。実際に同社が読者に対して実施した調査でも、「画期的な技術や製品の開発が必要」と感じている人が、全体の約8割にものぼっているそうです。


では、画期的な技術や製品を生み出すには何が必要なのでしょうか。日経エレクトロニクスの調査では、「技術者の熱意」や「明確な目標設定やビジョン」が重要で、「成果主義」や「表彰制度」などは、それほど重要ではないこと、組織面では「既存組織や会社の壁を越えた人材を集めること」が大事で、従来型の「堅い結合」の組織から「緩い結合」の組織への移行が重要になってきていることなどの紹介をいただきました。
最後に、ソニーのCellの事例を用いながら、エンジニアには、「部分最適に陥るのではなく、システム全体を見わたせ、未踏に挑戦していく姿勢」と「今日の常識は明日の非常識」と常に常識を疑っていく姿勢が求められており、これが画期的な技術や製品の開発につながっていくということであり、正に「技術者よ 大志をいだけ」というタイトル通りの主張をいただきました。

Aセッション

R&D戦略革新

「知識社会における成長エンジン
R&D現場戦略:知識創造力の革新を目指して」
JMAC チーフ・コンサルタント 平木 肇

工業化社会から、情報化社会、知識社会への移行が進んでいる。そのような中で、顧客、社会に対して新たな価値を生み出し、提供していけるかが企業の競争優位を左右する重要なファクターとなっており、新しい価値を創出する源として、R&D現場の”革新力”をいかに高めるかが重要な経営課題となっている。そのような問題意識のもと、JMACとJAIST北陸先端科学技術大学院大学は共同で、R&D現場の知識創造メカニズムの研究に取り組んでおり、その成果として、集成、交流、構想の3つの場による知識創造メカニズムのモデルが本講演の中で紹介された。
今後は、さらに研究をすすめることで、知識創造メカニズムのモデルを検証していき、知識創造力を評価するための診断ツールとして発展させていくと同時に、知識創造力を高めるためには、マネジメントとしてのどのような取り組みが必要かを明らかにしていきたいとの話でした。

「攻め型経営への転換を図る技術者の高度な創造的思考の
メカニズムと人材の育成」        
JMAC RD研究会 アドバイザー 
元シャープ株式会社 生産技術本部 
技監  笹田 泰三

高度な実力をもつトップエンジニアとなるためには、高度な想像力、発想力が求められるが、それは顕在意識ではなく、潜在意識の閃きによるところが大きい。
また、発想力は、実体験を通じてのみ会得されるものであり、そのポテンシャルは幼児期にある程度形成されてしまうという特質を持つ。
それゆえ、企業としては、きちんと適正のある人材を見極めて採用し、育てることがトップエンジニア活用に必要となり、それがこれからのメーカーの攻め方経営への転換へとつながっていくとの話でした。

Bセッション

 開発設計革新

「これからの開発マネジメント革新の進め方」
~ 新3Cマネジメントによる開発プロセス革新 ~
JMAC チーフ・コンサルタント 渡部 訓久 

JMACで2004年に実施した実態調査から得た6つの提言を説明した。この6つの提言から、今後に必要な開発マネジメントは、コラボレーション、コンカレント、コミットメントの3つの“C”による開発プロセス革新である。これらは企業のトップのみが意識するのではなく、部課長、リーダクラスなど組織全体が意識して取り組み、変化し続けていく必要がある。特にマネージャ層は、中堅クラスの方が自部門の役割を超えて自主的な動きをしやすくするようなインフラ作りをすることが重要である。
 受講者からは、技術者の企画力を向上するためのマネジメント上の問題点、それを打破するための取り組み方について興味を持っていただいた。

「一眼レフデジタルカメラ事業に貢献する戦略的開発プロセス革新」~ファームウエア開発事例を中心に~
株式会社ニコン 映像カンパニー 
第1設計部 第1設計課
マネージャー 川村 晃一郎 氏

フィルムカメラ時代は、約10年かけて1つの開発を行なっていたが、デジタルカメラ時代では1~3年で開発しなければならなくなっている。また、デジタルならではの多くの機能を盛り込む必要にも迫られている。このような機能のほとんどはファームウェアによって実現している。そのため、ファームウェア開発を革新することは品質向上と納期短縮のために非常に重要なことである。
ニコンのファームウェア開発では、開発の各工程のターゲットを明確にする、仕様に対して積極的に提案をしていく、各個人の役割革新を促すなどの取り組みを行なっており、その具体例を紹介した。
受講者からは、バグ管理以外の設計時の管理指標、受け身体質を脱するためのポイントなどについて興味を持っていただいた。

Cセッション

製品・サービス革新

「デザイン&プロモーション革新によるブランド向上マネジメント」
~ 顧客シーンを起点にした実践的アプローチ ~
JMAC チーフ・コンサルタント  鬼束 智昭
     コンサルタント        新井本 昌宏

講演は、
 1.ブランド向上マネジメントの課題とアプローチ
 2.デザイン革新によるブランド向上
 3.プロモーション革新によるブランド向上 
 ~コンビニエンス・ストアのブランド棚構築を事例として~

の3部で構成され、前半(1.2.)を鬼束が、後半(3.)を新井本が講演した。前半は、最近のブランドマネジメントの問題として、「現場での実体験」によるブランド向上に対する取り組みの不足を指摘し、デザインとプロモーションの革新による顧客接点の改革を訴えた。後半は、コンビニエンスストアの棚をとるための商品群開発を事例に、店頭プロモーションを念頭に置いた商品群ブランドの創出および商品開発のポイントを説明した。会場では、ブランド向上のための取り組みについて、活発な意見交換がなされた。

「'思わず買っちゃう'
価格を超えるコミュニケーション」

カルビー株式会社  
CRMグループ
プロモーション・ファースト室長 加藤 孝一 氏

カルビー株式会社では、成熟市場となったスナック菓子の売り上げ向上の為、顧客起点に立ち戻り、購買理由を徹底的に調査した。その結果、低価格化よりも個人の嗜好や健康意識に対するメッセージの伝達が重要であることが分かった。そこでプロモーション革新に取り組み、販促ツールのパッケージ化と活用の促進に取り組んだ。更にこうした活動を評価するためのモニターネットワークを組織化し、顧客との双方向コミュニケーションによる改善活動を実施している。会場からは、マーケティングと研究開発の関わりや商品創りの着眼点などについて活発な質問が交わされた。

Dセッション

開発システム・人材開発革新

「技術KI計画による組織と
人の活性化と知的生産性向上」

JMAC チーフ・コンサルタント 中村 素子  

現在、R&Dの分野では、 開発や研究がスムーズに進むだけではなく、そのプロセスで人が成長し、組織風土が活性化することが求められている。
この組織風土の活性化には、開発手法の革新よりも、一人一人が活性化することが大切であり、そのためにも、一人一人の現実を直視し、現場の悩みをつかむことが最も重要である。
KIでは、①ミーティング革新、②見える計画、③マネジメント革新 により、働く一人一人の抱える課題を事前に発掘し、解決のためにマネジャーが手を打つことで、仕事を成功させ、日常の活性化を図る。これを自律的な活動へと定着させることで組織風土の活性化を実現するものである。会場には、この活性化のための知識・情報を得ようという参加者の熱気が溢れていた。

「研究所の活性化」~ 成果早期創出と人の成長を目指した技術KIの取組み ~
出光興産株式会社 化学品研究所
        所長 木村 敏男 氏
用途開発研究室 室長 富田 幸次 氏

出光興産株式会社 化学開発センター化学品研究所 では、KIを活用し、「無理、無駄、ムラなく関係部署との連携の取れた研究所」、「高度な専門性を有し、経営マインドのある、生き生きした研究員」、「スムーズな研究活動」、「研究所の活性化」を目指して継続的な活動をしています。
当日は、「日常の課題を出し、見える化によりマネジャーが手を打つこと」でいかに組織の活性化を図ったか、研究が事業に直結するように始めた新たな試みである「事業KI」についての話を、現場の苦労話も交えしていただきました。また、ミーティングを行いやすくするためのKIルーム、といった独自の工夫も紹介していただき、組織活性化や、KIについて初めてのお客様に加え、既にKIを導入されているお客様にも役立つお話をしていただきました。質疑応答では、KIを導入する時のポイント等の質問が飛び、とても充実した時間でした。

Eセッション

成長戦略・事業戦略革新

「固定概念を打破し独創力をあげるための企画法
6 SMART-Angleの実践」
LG生活健康株式会社
研究戦略・企画部長 崔 昌日 氏

生活用品、化粧品を取り扱うLG生活健康株式会社(LG H&H)での独創力を上げるための企画法としての6 SMART-Angleの実践が紹介された。
6 SMART-Angleとは、「新しいアングル」、「拡張アングル」、「現場密着アングル」、「創造的アングル」、「展開アングル」、「内部アングル」であり、固定概念打破へ向けたそれぞれの視点を具体的ケースを豊富に交え話された。「展開アングル」の事例として過去の延長線上でない挑戦的な将来イメージを描き、フューチャー・マネジメントをしていくことの重要性を語られた。また「内部アングル」では、リーダーの役割や企業家マインドまで言及される内容であった。最後にツールだけでなく、創造的文化づくり、技術的コンピテンシー、コラボレーションの重要性も述べられ、同社の強みが感じられた。

「事業成長に貢献するための
将来事業デッサン力の強化」

田中貴金属工業株式会社
取締役 技術部門担当 児玉 秀臣 氏

技術志向の強化がミッションである田中貴金属工業。CTOチームを中心とした新規事業開発成果とさらなる将来思考力強化活動についての話があった。フューチャー・マネジメントの事例として、「戦略振り返り分析」による過去のプロジェクトの成功要因とレベルアップ課題の抽出と将来顧客・技術・あるべき姿からの「将来事業デッサン」の紹介がされた。
CTOチームの成果としては、将来戦略を描けたのみならず、自ら行動するリーダーの育成などの人材開発成果も挙げられた。「実践」は「理解」に先行する、「この手で未来を切り開く」姿勢には和やかに進んだ講演の中でも未来に対する意気込みが見られた。

Fセッション

次世代R&Dマネジメント研究

「日本企業の中国への効果的な
RD&E機能進出に向けた課題」

JMAC チーフ・コンサルタント 野元 伸一郎

講演は,
・これまでの外資系企業の中国へのRD&Eの進出状況と現地企業のRD&E推進状況
・現在の中国の状況とこれまでの外資系企業の中国へのRD&E進出における問題点と課題
・中国へのRD&E進出におけるポイント
の3部で構成され、RD&E機能が中国に進出するにあたっての興味深い話であった。

その中でも特に、「中国へのRD&E進出におけるポイント」については、時間を割いて詳しく説明していた。進出におけるポイントは3つある。1つは「中国の文化・市場を知るためのさらなる努力」である。「日本で売れた商品は中国でも売れる」と考えては駄目で、「中国人を顧客として、徹底的に分析すること」が大事であると事例を挙げ、説明していた。つまり、徹底した現地志向と融合化が必要といえよう。2つ目に「中国進出の目的の再確認」についても力説し、現在必ずしも目的が明確でない場合もあり、グローバル開発拠点のひとつとしてどう位置づけるかが大事であるとのことであった。3点目として、「ローカルエンジニアを動機づける方法の再検討」については、特に商品・技術のロードマップと連動した現地エンジニアのスキルアップ/キャリアパスプランが重要であるとのことであった。

「石油探索装置開発を通してのグローバルR&D展開」
シュルンベルジェ株式会社
クオリティ・マネージャ 笠井 実 氏

石油探査ビジネスの概要、石油探査サービスについて説明のあと、同社が石油探査装置開発を通じて行っているグローバルR&D展開について紹介があった。講演の中では、同社のR&Dのやり方について、いくつも興味のある話が述べられていたが、その中でも「QHSE」と「標準化」については詳しい説明があった。QHSE(Quality:品質、Health:健康、Safety:安全、Environment:環境)とは、多くの危険がともなう石油探査現場へのサービス提供経験から得られたリスク管理の考え方である。その基本的な考え方は、「リスクを未然に明確化」、「問題の報告」、「リスクのアセスメント」、「リスクの低減」からなる。同社では、これを石油探査装置の製品開発に適用し、プロジェクトのリスク管理を行い、これが、かなりリスクの低減につながっているとのことであった。この考え方は、日本が進んでいる部分もあるが、グローバルで展開されているとのことであった。 また、標準化については、同社が部品や設計ルール、製品開発プロセスなどを標準化する際には、基本思想として、「どこで設計されようが、どこでも製造できる」という考え方があると述べられていた。 最後に、グローバル展開の中での日本部門の役割についても話があり、日本は主に「開発実現力」が期待されているとのことであった。

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