今こそ環境経営の推進を
第4回 現在の省エネルギー活動の悩み
山田 朗
前回までは、前振り的にエネルギー生産性向上(省エネ)に本気で取り組む必要性を述べてきました。実際、省エネ活動を行っていない会社はまずないと思いますが、大切なことは十分な成果が出ているかどうかです。みなさんの会社ではいかがしょうか?
私はときどき省エネ関連のセミナーを実施し、参加企業の方々にアンケート記入をお願いしています。今回は50数社のアンケート結果から「省エネ目標レベル」「エネルギーの見える化レベル」「省エネ活動の問題点」という3つの質問項目を抜粋して紹介します。なお回答いただいた企業は、ほとんどが一部上場会社の大企業で、省エネ法に該当するエネルギー多消費製造業です。
省エネ目標のレベル
まず、どのレベルの省エネ活動に取り組んでいるのかを確認しました。中長期目標を設定している企業もありますが、ここでは昨年に対して今年1年間でどれだけ削減するかを問うています。
総量での目標設定と原単位での目標設定の企業数はほぼ同数ですが、若干原単位での目標設定をしている企業が多いという結果です。
原単位での目標設定企業については、省エネ法の努力目標である年平均原単位で1%削減に合わせた目標レベルの企業が、全体の36%と最多を占めました。
一方、総量での目標設定企業では、1%削減程度の目標レベルは23%と最多ですが、原単位目標企業と比較すると少なく、2〜5%程度の目標を設定している企業の割合が多くなっています。
また、総量または原単位で5%以上のチャレンジングな削減目標をかかげて活動している企業も24%ありました。
なお、グラフには表れませんが、総量目標と原単位目標の両方の目標を掲げている企業は19%となっています。
エネルギーの見える化レベル
下のグラフは「工場におけるエネルギーの見える化状況(計測できている状況)はどの程度ですか?」という質問に対する回答です。帯の右方向へ行くほど見える化レベルが高いと言えます。
「見えないものは改善できない」は改善の原則です。改善活動はまず見える化から始まります。コスト削減活動や品質改善活動でも、「どの工程・設備でどんなコストがどれだけかかっているか? どんな不良がどこでどれだけ出ているか?」を定量的に見えるようにしていますよね。しかしそれらに比べエネルギーについては、それが十分でないことが上のグラフでわかります。
大手企業の省エネ法特定事業者でもこのレベルですから、小規模事業者やオフィスなどは、全体でしかわからないという場合がほとんどでしょうね。
みなさんの会社はいかがでしょうか。エネルギーは見えないもの、見えないことが当たり前と思っていないでしょうか?
省エネ活動の問題点
省エネの目標が厳しくなる中で、省エネ活動が思うように進まないという悩みをよく聞きます。下のグラフは「省エネ活動の問題点」という質問に対する回答です。
複数選択で聞いていますが、下の3項目が突出して多いことがわかります。
回答企業は、省エネ活動はかなりやってきている企業と思われるので、ほぼすべての企業が「効果の高い新たな省エネのネタが見つからなくなってきており、あとは投資をして最新の省エネ型の機器に代替していくしかないが、容易に投資はできない」と感じているようです。
また、3分の2の企業は、「より突っ込んだ専門技術的な分野での省エネが必要とわかっていても、社内に専門家がいない、いたとしても検討時間が取れない」などの問題も抱えていることがわかりました。
以上のことからもわれわれコンサルタントとしては、「投資に頼らない、技術的な専門分野に入り込んだ支援」の必要性を感じています。
さらに、3分の1の企業は、「社内の省エネ意識が低い(省エネ意欲が十分でない)」「省エネの推進部門が明確ではない(製造、生産技術、工務、環境など各部門の連携不十分)」「どこでどれだけエネルギーが消費されているのかわからない」という問題意識を持っています。
こうした結果から見えてくることのひとつとして、省エネ活動が全社的なコスト削減活動、TQM活動、TPM活動などに比べて、まだ全社をあげての本格的な活動になり得ていないと言えます。
最近はエネルギーコストの上昇に伴い、省エネへの関心は高まってきていますが、製造コストに占めるエネルギー費用は5%以下の企業が大半です。こうした企業の方々が本格的に全社活動を実践していくには、単なるエネルギー削減活動から、「ものづくりを革新する(QCD革新活動)省エネ活動」へと考え方も方法論も転換していく必要があります。
次回以降は、現在の省エネ活動の問題点を深掘りし、ものづくりの革新活動となる新たな省エネのアプローチを紹介していきます。
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