イノベーション(Innovation)
経済発展の概念を生み出したオーストリアの経済学者シュンペーターは、同質をいくら重ねても現状の改善レベルの変化にしか至らず、産業発展はサチレートしてしまう、そこで異質な新しいものを導入し、既存の産業構造を「創造的に破壊する」ことによって、飛躍的な産業発展が実現されると考えた。この異質な新しいものを導入することを「新結合」と呼び、新結合を実行することを、ラテン語の"innovare"(内に新しい発想を導入し、新しくする)に、実行するという意味をかけて、シュンペーターが造語したものが"innovation(新結合の実行)"である。
よって、本来の「イノベーション」という言葉の意味するところは、「技術革新」よりも広い概念であり、技術・製品革新だけではなく、組織やビジネスモデル革新も含め、既存の産業構造の発展カーブとは非連続の、次の新しい産業発展のS字カーブを創り出すことを示している。
シュンペーターによる「経済発展の原理」(1934年)において定義されたイノベーションの定義を以下に示す。
① 新しい財貨、新しい品質の財貨の生産
② 当該産業部門において実際上 未知な生産方法の導入
③ 当該国の当該産業部門が従来参加していなかった市場の開拓
④ 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
⑤ 新しい組織の実現による独占的地位の形成、あるいは独占の打破
これらを今日の企業活動になぞらえてみる。
① 研究所、開発設計部門、品質管理部門における新製品開発
② 生産管理部門、開発設計部門における生産技術開発
③ 営業・マーケティング部門における新市場開拓
④ 購買・資材調達部門におけるサプライチェーン構築
⑤ 経営戦略、人事教育部門における事業構造・組織改革
イノベーションの定義からも、技術革新と訳されるイノベーションは、開発部門中心の①と②の狭義の捉え方に過ぎないことがわかる。誤解を招きやすい狭義のイノベーションと、本来のイノベーションとを峻別するために、たとえば3M社では、「斬新な新しいアイディアを考え出すこと」をCreativityとし、「新しいアイディアを考え出すことに加え、その実現に向けて実際の行動を起こすこと」をInnovationと明確に定義し、マネジメントが推進し、評価するのはCreativityではなく、あくまでもInnovationであることを明言している。
(文責:JMACコンサルタント 高橋儀光)
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