PAC(Performance Analysis & Control)
PACとは
PAC(パック)とは、JMAC元常務、故 門田武治が開発したワーク・メジャメント(作業測定)を活用した、生産性向上及び維持管理システムである。
ここでいう生産性向上は、製造方式(メソッド)の改善効果は除いたもので、決められた製造方式の許における実施効率(パフォーマンス=標準工数÷実績工数)の向上のことをいう。
パックは、JMACのコンサルティング実践の中で生まれた。1965年頃から、雑誌にその事例が発表され、1970年に『バック-高度生産性の秘密』という書籍にまとめられた。当時のキャッチフレーズは、「設備投資なしに労働生産性を1.5〜2倍に向上させる!」というものであった。その成果の大きさと、大手製造業でも次々に導入されたことで、一般週刊誌でも話題になった管理技術であった。
PACの特徴
門田はパックの特徴として次の5項目を挙げている。
- 科学的な標準時間によるパフォーマンスの測定
- 金銭的刺激に代わる第一線監督者の指導力
- パフォーマンスの職位責任別の分離
- パフォーマンスに関する分析的な報告
- 日々の適正配員のための機動部門
この手法の鍵になるのは、第一に(1)の科学的な標準時間の設定である。効率的な標準作業方法を決め、それを適正な標準時間に置き換える。パックによってWF、MTM、MOST等のPTS(既定時間標準)法がわが国に広まったといっても過言ではない。
上記のような科学的な標準時間で測定すると、多くの企業でその実施効率(総合効率=標準工数÷就業工数×100)は、60%前後であり、それを半年から1年掛けて100%を超えるレベルまでに向上させるのが、パックの特徴である。
その中で重要になるのは(3)のパフォーマンスの職位責任別の分離である。就業工数の中には、作業者が作業をできない時間が含まれている。会議・打合や設備故障などの手待時間である。パックではこれらを除外工数と呼び、管理・監督者責任のロス時間と考える。そして、(就業工数-除外工数)を「作業工数」と呼び、作業者責任のパフォーマンスとして、作業効率(=標準工数÷作業工数×100)を、管理監督者責任のパフォーマンスとして、工数稼働率(=作業工数÷就業工数×100)を計算する。
パックでは、作業者責任の作業効率向上に重点をおく。ここで鍵になるのが(2)の第一線監督者の指導力である。作業者が自ら意欲を持ち、効率的に仕事をしなければ作業効率は上がらない。作業効率を上げるときには、第一線監督者が作業者を個人別に指導していかなければならない。パックの成功の裏には各社の各職場で数々の人間ドラマがあった。
PACの今日的意義
パックは成果の大きさで注目されたが、その本質は維持管理システムである。国内で、労働集約的な職場が少なくなっているが、生産計画時に正確な操業計画をするために、作業者の実施効率の把握は不可欠であるし、またセル生産方式、一人屋台生産方式などでは、適切な実施効率の管理を行っていかないと、改善成果が「絵に描いた餅」になりかねない。
近年、東南アジア、アフリカの企業で、パックの導入をおこなった。これらの国ではすでに奨励給を導入していた。奨励給の現場でも第一線監督者の指導力が重要であることが実証された。300人ほどの職場(現地企業)で、パックを導入し、作業効率が半年で1.5倍強になった。それと同時にその職場の長年の課題であった退職率が1/3程度になった。退職率改善の原因を調査すると、「監督者と作業者のコミュニケーションが良くなった」とのこと。
(文責:JMACコンサルタント 石田 恒之)
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