【業務マニュアル作成の手引き・後編】マニュアルが活用されるための環境づくり
- 業務改革・システム化
梅田 修二
前回のコラムでは、業務マニュアル作成の意義についてお話しした。
しかし、せっかく時間をかけて作成した業務マニュアルが活用され続けなければ意味がない。今回は業務マニュアルの活用方法と更新方法を説明する。
「業務マニュアル管理表」による探せる環境づくり
業務マニュアルを活用するには、必要としているマニュアルがすぐに探し出せる環境をつくる必要がある。それにはまず、部門の業務項目を棚卸し整理した「業務体系表」を作成する。その上で、業務マニュアルの有無と業務マニュアルが保存されている場所、更新担当者の情報を付加し「業務マニュアル管理表」の作成を行う。
異動してきた社員はそもそも業務マニュアルの存在を知らない、もしくは、どこにあるかすぐに探せないから聞いた方が早いという理由で、業務マニュアルが活用されなくなるということがよくあります。この「業務マニュアル管理表」があることで、すぐに業務マニュアルを探せるようになる。
また、管理表で更新担当者を明確にすることで、マニュアルを新しい状態に保つことができる。さらには、業務マニュアルを使用した際に、不備や不明点があった場合の確認先も明確になる。
業務マニュアルが活用されない理由
分かりやすい・探しやすい業務マニュアルを作成できたとしても、残念ながら「活用しよう!」という掛け声だけでは、なかなか活用されない。なぜなら、業務マニュアルの作成方法に起因した理由以外にも、活用されなくなる理由が2つ存在するからである。
理由1:使わなくても困らない
ベテラン担当者は、業務マニュアルがなくても業務遂行できるため、業務マニュアルは活用しない。しかしながら、長年業務をやっているといつの間にか業務マニュアル記載の業務手順と違ったやり方をしていることがよく見受けられる。
そのため、ベテラン担当者でも一度初心に返って業務マニュアルを確認し、記載されたやり方通りに業務遂行できているかを確認する必要性がある。
理由2:活用方法を知らない
担当者の引き継ぎや休みの時は業務マニュアルの活用を意識しやすいが、活用シーンはそれだけではない。活用方法をしっかりと理解する必要がある。。業務マニュアルの活用方法をしっかりと理解する必要がある。
【新人】
業務マニュアルを読みこみ、その通りやってみて仕事を覚えるために活用する。
【中堅社員】
業務マニュアルに記載されたやり方を確認し、改善検討を行うためのツールとして活用する。
【管理職】
業務マニュアルを使って部下が業務マニュアルの手順通り業務遂行しているかの確認と指導に活用する。
【退職時】
異動前の担当者:ノウハウを組織に残すために業務マニュアルに業務要領を追記するために活用する。
このように、業務マニュアルは、あらゆる立場の人がさまざまな目的で活用することがある。
「活用する場」を設定しないと活用されない
業務マニュアルを活用するには、ある程度強制的に「活用する場」を設定する必要がある。
定期的に業務マニュアルを担当者本人もしくは第三者が業務マニュアル記載の手順どおりにやっているか確認する場を設けたり、新人教育は業務マニュアルを活用して行うルールを決めたりとするといったことである。
この「活用する場」の設定こそが業務マニュアルを活用し続けるための最大のポイントである。
「活用する場」の一つとして、「デイリートレーニング」という方法を紹介する。これは、ベテランと新人がペアとなって業務マニュアルを活用しながらお互いに業務遂行しているところを見せ合う方法である。
実施手順としては以下になる。
ベテランが業務遂行
ベテランが業務遂行しているところを新人が業務マニュアルを見ながら観察する。その際、業務要領やマニュアルと違う点など質問があればベテランに確認する。新人にとっては学ぶ場であり、ベテランにとっては標準手順を遵守できているかの確認の場になる。
新人が業務遂行
次に新人が業務マニュアルを見ながら同じ業務を遂行する。その際、ベテランは業務要領をアドバイスしたり、業務手順誤りの指摘を行うことで、新人のスキルアップを支援する。
業務マニュアルの更新
お互い業務遂行する中で、残すべき業務要領があれば業務マニュアルに追記し、誤りがあれば誤りを修正する。
デイリートレーニングは、担当者同士のペアで行うことから比較的実施しやすく実務的なことから、多くの企業で取り入れられている。
更新し続けるための業務マニュアル管理体制
業務マニュアルは個人任せではなく組織的に管理し、更新し続けていく必要がある。そのためには、管理体制を整備しておかなくてはならない。
また、各更新担当者が勝手に更新することを防ぐために、「業務マニュアルを更新した際には、マニュアル管理責任者や部門長の承認を得る」というルールにしておく。
業務改善やシステム変更などが行われ、業務のやり方を変えたタイミングで業務マニュアルを更新する必要性が発生する。基本的には、この更新の必要性に気づいた時に、随時更新を行う。しかし、随時更新だけではどうしても更新漏れが発生する。そのため、あらかじめ業務マニュアルを総点検する「定期更新」を設定するとよい。
定期更新のタイミングでは、更新漏れしている業務マニュアルの更新に加え、あらたに始めた業務や廃止された業務を確認し、「業務体系表」の更新も行う。「業務体系表」の更新に合わせて、業務マニュアルの新規作成、削除も行う。この新規作成・削除については、随時更新では行わないため、定期更新を設定しておくことは重要である。定期更新を確実に行うためにも、あらかじめ年間カレンダーに定期更新のタイミングを設定しておくと良い。
最後に、業務マニュアルは活用しないと、更新の必要性には気づかない。「マニュアルが更新されておらず古い」というケースが発生するのは、そもそも活用していないから、更新の必要性に気づいていないからである。活用こそが更新し続けるための絶対条件で、そのためには「活用する場」を設定することがポイントになる。
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