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今から「働き方」の話をしよう

第1回 生産性向上に向けて〜本社・オフィスの職場の周りで何が起きているのか?〜

田中 良憲

「日本企業のホワイトカラーの生産性は低い」ことはずっと言われ続けている、いわば永遠のテーマだ。

日本生産性本部が出している『日本の生産性の動向』2013年版によると、「労働者1人当たり名目付加価値額」がOECD加盟国34ヵ国中21位、時間当たりでも順位も20位という事実がある。とくに最近では、時間当たりの生産性の低さが問題視されている。厚生労働省の調査データによると、2014年の正社員の年間残業時間は173時間、前年より7時間増え、20年前より36時間増えている。

なぜこのようなことが起きているのであろうか? 大きな視点で捉えると企業の内部環境、外部環境の変化に対応し得る、本来求められる分担と機能設計、仕事の進め方の対応の遅れがこのような不具合現象を生じさせていると考えている。相変わらず多くの日本企業が、かつての成長モデルにフィットした「オールドスタイル」に固執していないだろうか?

本コーナーでは本社機能やオフィスワークという領域に的を絞り、この「オールドスタイル」を打破し、いかに「ニュースタイル」への変化に対応していくかを、みなさんとともに考察していきたい。まず第1回として、本社・オフィスを取り巻く環境変化を取り上げ、これらの課題を共有したい。

本社・オフィスワークに求められるミッション、機能の変化

この数10年で日本企業は積極的にグローバル化を進めており、事業領域と活動単位が広く拡散している。これら活動単位に方針やあらゆる施策を素早く浸透させ、オペレーション状態を統括管理し、活動結果である実績を収集することで次の戦略・戦術を"さらに速いサイクル"で検討することが求められる。

機能発揮するための扱う情報種類の変化

ERPなどの会計実績データをリアルタイムに集計できる現在、それらの結果の因果関係を考察する情報収集、解析にもこれまで以上にスピーディな対応が求められている。それらの情報は会計データではない、事業活動に必要な多岐にわたる活動情報(事業を形成する社内活動プロセス、顧客も含めた社外活動プロセス、ライバルも含めた外部環境情報)が対象となる。情報の範囲・量が増えているため、それに応じてあらゆる視点で解析・考察することが求められる。

情報を扱うための方法論、ツールの変化

ミッション・機能、扱う情報の変化に対応するための方法論も多岐にわたっている。技術革新によってもはや「IT」と呼ばれていたのは、はるか昔の話。今は「ICT:Information and Communication Technology」と呼ばれている。それらのツールの特性を総じて言えば、ERPのように情報をストックし、抜き出すものではなく、情報そのものを加工するツールといってよいだろう。これらの情報を加工するツールを有効に使うことが必須である。

仕事を進めるための内部リソースの変化

1990年代のバブル崩壊・金融危機以降、日本企業はあらゆる構造改革を断行してきた。人事・評価制度の見直しも含め、雇用形態を変化させ、また、いわゆる"ノンコア"とされる仕事のアウトソーシング・アウトタスクも常識化している。結果、オフィスで働く人の「働くこと」の目的意識は多種多様になっており、高度経済成長期のような画一化した社員を形成することはもはや不可能である。この前提を踏まえたうえで、人的リソースを1つのベクトルに向けていくことが求められる。

以上、本社・オフィスを取り巻く環境変化をまとめてみた。

この4つの潮流・変化に対して「これまでの常識」にとらわれず"具体的に"働く構造を変え、「ニュースタイル」に近づけなければ、単に時間というリソースの浪費だけではなく、「より高い価値創出」機会を逸し続けることになるであろう。

次回以降、大胆な生産性向上を実現するためにどう活動すべきかについて、変化に対応する方向性を『1.働き方改革』と、『2.ビジネスプロセス改革』と大きく2つの領域に分け、具体的に解説していきたい。

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