今から「働き方」の話をしよう
第2回 生産性向上の2つの潮流 「ビジネスプロセス改革」と「働き方改革」
田中 良憲
前回は本社・オフィスをとりまく4つの環境変化――「本社・オフィスワークのミッション、機能の変化」「オフィス機能発揮に必要な情報種類の変化」「情報を扱うための方法論、ツールの変化」「仕事を進めるための内部リソース・働く人の変化」――をあげた。
これら4つの潮流・変化に対して「これまでの常識」にとらわれず「ニュースタイル」に近づけることが、「時間というリソースの浪費の防止」と「より高い価値創出」機会をつかむことができるはずだ。今回はこれら「時間」と「価値」それぞれが良い状態となる、すなわち、より大きな生産生向上を実現する方向性を主張したい。
なぜ今「働き方改革」なのか?
われわれはオフィスワークの生産性向上を図るためには、2つの方向性をとるべきだと考えている。
1つは、過去から取り組んできた「ビジネスプロセス改革」である。仕事を進めるうえでの手順について、情報システムによる自動化・簡略化や、アウトソーシング化も視野に入れた大胆な内外作化を検討することで、プロセスのQCD(品質・コスト・納期)の水準の向上、たとえば工数(人時)低減や作業リードタイムの短縮を目的として活動する。低減活動だけではなく、その手順に関わる情報内容を見直して成果物内容のレベルを上げることで、顧客満足度・競争力の向上実現をねらう。
これまで多くの企業が、この「ビジネスプロセス改革」、昔からの言い方では「BPR(Business Process Re-Engineering)」に長年取り組んできた。とくに2000年代の初めは情報システムの大中規模パッケージ導入にあわせてBPRを推進し、成果を実現した企業が多かった。
ところで、最近はこの「ビジネスプロセス改革」に加えて「働き方改革」「働き方の見直し」というキーワードが目に付く。これらは最近話題になっている「女性の活躍を推進」するための「カギ」として位置づけられている。たとえば、安倍晋三首相も政策説明の折に「働き方を見直して...」とその必要性を問い、日経新聞でも『働き方Next』という特集記事で「見直し」事例を発信している。
一般的に言われる「働き方の見直し」「働き方改革」がねらっている成果を整理してみると、「人・投入時間側」と「価値側」に分けることができる。人・投入時間側の成果追求には、
・長時間勤務の解消・ワーク・ライフバランスの実現
・柔軟な働き方の実現によるさまざまな労働力の確保
がある。これらの成果を追求した結果、価値側の成果追求として、
・女性活用も含めたダイバーシティ実現
・多様な価値観を活かした新しいサービス実現
がある。つまり目指す成果はこれまでの「ビジネスプロセス改革」と一致するわけだ。
そこでJMACは図のように「目指したい成果物」は「ビジネスプロセス」とその基盤となる「働き方」の2つを改革することで成立し、成果を得るためにはどちらも必要な条件だと整理している。
先にあげた4つの環境変化で、とくに「ミッション、機能の変化」「機能発揮に必要な情報種類の変化」の影響がいまや大きくなっている。ビジネスプロセスや手順そのものが定義しにくく、定義後に陳腐化しやすいことから、改善の方法論が通用しにくい領域が広がっているのだ。そのため別な方法論、すなわち「働き方改革」が今後ますます求められる。
「働き方改革」の課題とは
「働き方改革」に主に求められていること、解決したい課題は何かをあげてみたい。
■手順を定めにくい仕事も含めて仕事を見える状態にしたい
先に述べたとおり、ミッション・機能の変化、情報種類の変化によって、オフィスワークの仕事はますます手順が定めにくくなり、属人化傾向が強まっている。
これらの現象は最終的に「仕事ができる人」(個人)に集中することになり、特定担当の過勤状態を助長することになる。また仕事の集中化は結果的に部門の業務継続リスク(人が急にいなくなると仕事が止まってしまう、など)にもなりかねない。
■コミュニケーション手段をうまく活用し、効率と効果を両立させたい
オフィスの仕事は定例的な仕事の大量処理から、情報共有・コミュニケーションを取りながら情報を新しいものに加工=情報価値の向上活動に変化している。
一方で資料を使った会議やメールでの共有といったコミュニケーション手段が悪いため、価値向上どころかポテンヒットが起きたり、共有機会が過剰になったり(形骸的な会議が増える)といった現象が起きている。
このようなコミュニケーション不具合を減らすことで、仕事の効率を追いつつ、効果を上げることが求められる。
■時間当たり生産性の概念を組織に浸透させたい
オフィスワークでのさまざまな不具合は最終的に時間当たりの成果や生産性に悪影響を及ぼす。成果が出ないことに対して、これまではさらに時間を投入=残業によって何とか成果を維持しようとしてきたたわけだ。
しかしながらこれからこのように「時間投入」を前提にした働き方は実現しにくいと言われている。
その理由は、
・制限のない時間投入が許される社員数自体が少なくなっている
・時間投入すれば優良な価値・成果が出る保証はない
の2つである。
これからは"時間制約"を前提として「時間対成果=生産性」を意識して仕事を進める必要がある。
次回は『働き方改革』の課題・成果について、さらに深堀していく。
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