今から「働き方」の話をしよう
第4回 「働き方を変える」メカニズム
田中 良憲
前回は「働き方改革をはばむ課題」を客観的に四つ提示した。
第一に、成果・ゴールそのものの経営としての認識、第二に、目的の組織浸透の難しさ、第三に、目的達成のための正しい方法論の明確化・選択、第四に、目的達成後の評価の仕組み化である。これらの課題をなかなか克服できないことで、真の成果に行き着けていない企業が多いのが現実だ。
一方で、この課題克服は内的にも外的にも強く求められていると認識することが求められる。
これからのオフィスワークは、一定情報を大量に処理する仕事(=定型的業務)ではなく、人能力を活かして情報を加工する新しい課題に対応する仕事(=問題・課題対応業務)がますます求められる。そのためには時間制約がある社員も含め、より高度な情報を取り扱える多様な社員を、質的にも量的にも獲得・維持し続ける必要があるのだ。
また、政府もさまざまな背景から「長時間勤務を抑制する」主旨の政策方針を明確に打ち出していることから、早いタイミングで労務管理を含めた企業活動を統制していくことが想定される。
今回から「働き方改革をはばむ課題」をどのように克服していくか、具体的に主張していきたい。
成功企業で共通している働き方改革の"メカニズム"
ダイバーシティ、ワーク・ライフバランスを正面から取り組んでいる企業、すなわち"見せかけではなく、本質的に働き方を見直し、経営成果にまでつなげている企業"には共通した特徴がある。個々の仕事の見直しや、従来の業務改善だけではなく、他にも巧妙な"仕掛け"を組み入れ、"システマチックに"改革を進めていることがわかっている。
どのような仕掛けなのかをご紹介したい。これらの仕掛けは〈5つの部品〉で構成されている。
【1.明確で強いトップ方針】
ダイバーシティやワーク・ライフバランスといった、きわめて抽象的な達成状態に対して、自社特有の課題を踏まえた達成状態「会社・社員はどうなってほしいのか?」「最終的にどのようにどう競争力に結びつけるのか?」を、具体的かつわかりやすい大方針・指針を明示している。
【2.働き方実態の見える化】
大方針・指針を実現するために、自社の働き方の実態(長時間勤務や有休状態など)を徹底的に見える化し、組織内で共有化・評価している。"見える化された働き方実態"に従って、さまざまな働き方見直し問題課題も"見える化"している。
【3.働き方見直しノウハウづくり】
課題解決のために取り組みたい、あらゆる働き方の見直し施策が職場で検討されている。主たる施策は職場内の労働時間の短縮方法だが、それらを抜本的に具現化するために、職場内コミュニケーションの向上から人事労務制度の改定まで多岐にわたる。また、これら有効施策が各職場に埋没せず、全社的に共有・展開されている。
【4.ドライブとなる組織編制】
働き方の見直し施策を職場に浸透する機能・役割を担う部門や体制が社内に設定されている。それらの機能は方針・指針出しに留まらず、職場支援・指導など踏み込んだ活動を行っている。
【5.意識改革マネジメント】
いわゆる"チェンジマネジメント"である。職場に新しい働き方を理解・浸透させ、変化の意識改革を促すとともに、変化活動の過程と結果を適正に評価する。これによって、とくに職場づくりの中心であるミドルマネジメント層の自律的な変化活動の促進と定着化をねらう。
これら5つの部品から構成される仕組みは一過性のものではなく、働き方を変え続けるサイクルを回す力強いエンジンとなる。
JMACでは、このメカニズムを図のように2つの車輪と駆動装置、方向装置、運転者に模した「二輪車」モデル="Business Improvement Cycle : Bicycle Model"と称し、お客様企業への導入促進を図っている。
次回以降、働き方改革を実現する "Bicycle Model" の各部品を、それぞれ具体的に述べていく。
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