プロフィット・デザイン
第4回 顧客を魅了する 〜フック要素〜
横山 隆史
前回は、顧客のプロセスに呼応して連鎖的に価値を提供する、プロフィット・ステップという考え方を紹介しました。このようなプロフィット・ステップを実現した企業をみると、おそらく羨望のまなざしに映るかもしれません。顧客との持続的な関係構築を実現した企業は、将来の大きな利益が約束されているのです。
このようなプロフィット・ステップを実現するためには、押さえるべき3つの要素があります。
それが
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- フック要素 :顧客を魅了する
- ロック要素 :顧客を離さない
- チャージ要素 :顧客の負担を軽くする
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というものです。
継続的な関係を構築するためにも、まずは顧客とつながらなければ何も始まりません。顧客を魅了し、まずは「使ってみたい」「利用してみたい」と思わせる要素がフック要素となります。そして、いったんつながった顧客をそのままにしておいたのでは、いわゆる"単品売り切り"となってしまいます。顧客のスイッチングを防止し、長期にわたる関係を構築する要素がロック要素となります。さらに、長期持続的な関係が構築されたのならば、課金の方法を大胆に変えられる可能性が出てきます。顧客にとっての"支払いやすさ"を考えることがチャージ要素となります。
第4回では、このうちフック要素を取り上げます。
顧客の「買いたい」を刺激する
"フック"とは文字どおり、顧客の「買いたい」という欲求心に引っ掛かる(フックする)ような、顧客を魅了する要素のことを指しています。プロフィット・デザインを実現するためには、まず顧客にプロフィット・ステップの一段目に上がってもらわなければなりません。そのためには顧客の「買いたい」という欲求を刺激するような要素が不可欠となってきます。
QCDだけでは顧客を魅了できない
Q:Quality(品質)、C:Cost(価格)、D:Delivery(納期)は、競争力の根幹・源泉であると考えられます。とくに日本のメーカーにとってこのQCDは生命線とも言えるもので、QCDを高めることで厳しい国際競争を勝ち残ってきたと言えるのではないでしょうか。
しかし、QCDだけでは顧客を魅了できなくなってきたようです。価格・納期について厳しい要求を突き付ける顧客をイメージしてください。顧客はその製品・サービスに対する知識・経験を十分に持っている、と想像できないでしょうか? さらには、顧客側には豊富な選択肢があり、残る選別基準は価格と納期だけ、と考えられないでしょうか?
つまり、QCDが顧客の選別基準になっているということは、その製品・サービスは競合と大差がない、ということになってしまうのです。このような製品・サービスの場合、まずはQCDによる競争から抜け出ることを考えなければなりません。
顧客を魅了するためには、競争上のポイントをずらす
この点については、スマートフォンの浸透を例にすると理解しやすいと思われます。
スマートフォンが現れた当初、携帯電話の端末メーカーはこれほどまで急速にスマートフォンが浸透するとは想定していなかったのではないでしょうか。なぜなら、端末メーカーはインタビューやアンケートを通じて顧客要求をしっかりと把握し、十分に応えてきた自負があったからです。顧客要求としては、カメラの画素数、メール機能の充実、ワンセグの有無、決済機能(おサイフケータイ)などがあげられます。これらの機能を強化することに競争上の焦点があてられていたのです。
しかし、スマートフォンはインターネットとアプリという、まったく異なる競争ポイントで参入してきました。従来型の折りたたみ携帯電話では、インターネットはかなり限定的な利用しかできませんでしたが、スマートフォンはそこへ切り込んできたのです。かつ、従来型の携帯電話とは比較にならない豊富なアプリで、ほぼ自分好みにカスタマイズできるのです。競争上のポイントをずらしたからこそ、急速な普及・浸透が進んだものと想定されます。
顧客を魅了するためには、それまでの競争上のポイントをずらさなければなりません。知れたる競争上のポイントで勝負しても、競合との厳しい競争は回避できません。競争上のポイントをずらすことができれば、ビジネスの新境地を開くことができるのです。スマートフォンは、既存の携帯電話を代替しただけでなく、競争上のポイントをずらすことでまさに新境地を開き、新たな価値を社会に提供したと言えるでしょう。
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