ウシオ電機株式会社
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これからの「光」を社会に提供する ~開発現場のマネジメントの新たな挑戦~
ウシオ電機株式会社では業績が急成長する一方で、OEM 中心の開発現場が日々増え続ける業務に忙殺されていた。現場のマネージャーが解決策を探し、セミナーに参加する中で出会ったJMAC の日本的な『技術者の組織マネジメント改革』、その導入をきっかけに開発現場が徐々に変わり始めた。7 期に渡る活動のご苦労や、更なる飛躍を目指す2015 年度からの活動についてお伺いした。
「光」の高度な技術を追求し続ける
ウシオ電機株式会社(以下ウシオ電機)は、1964年の創業以来、産業用の光源や光学技術を核に、産業の最先端分野が求めるさまざまな「光」を切り口とした製品やサービスを開発し提供し続けてきた。
同社の創りだす「光」は、ハロゲンランプや放電ランプなど、多種多彩なランプにはじまり、これらを組み込んだ光のユニット、光応用装置、光のシステムへと拡がって行った。さらにはモジュールやシステムとなって、光のソリューションへと発展し、現在では「エレクトロニクス」「映像」「メディカル・ライフサイエンス」を中心に、世界のさまざまな産業分野で活用され、世界初や世界トップシェア製品を多数生み出している。
世界の産業分野に多くの優良企業を顧客として持つ同社であるが、その一方で、いずれの分野においても高い専門性と高度な技術が求められるようになり、その技術的課題の解決もより困難で複雑なものとなっていった。
職場のマネジメント改革の断行へ
このような背景の中、2005年ころからJMACが主催するセミナーや開発・技術マネジメント革新大会などに参加し、開発部門のマネジメント改革に何か良い手法や手立てはないかと模索をしていたのがR&D本部 執行役員 副本部長 吉岡 正樹氏だった。当時ウシオ電機は、順調に事業を拡大していたが、同時に開発現場では、残業も多く、担当者の課題が上司に上がってこない、技術的な不具合が頻発するなど多くの問題を抱えていたのである。吉岡氏は「当時の開発部門では、忙しい割には新製品がなか
なか出てこないことや、人材面ではミドルクラスのマネージャーの育成がうまく進んでいないという課題がありました。何か解決する手段はないかと、JMACの様々なセミナーに参加する中で出会ったのが日本的な『技術者の組織マネジメント改革活動』でした。セミナーの事例企業が抱える課題は、当社の課題に非常に近く、自社の開発現場にも馴染むと感じました」と振り返る。
また、光源事業部 技術部門 部門長 北野 洋好氏は「現場では仕事がどんどん増えて、開発納期が遅れるなど、マネージャーは頭を悩ませていました。製造現場には改善ツールやマネジメント手法が多数ありますが、そのまま開発現場に適用しても馴染まない。そのような中、開発現場に特化した『技術者の組織マネジメント改革活動』の説明会が社内で開催されました」という。
説明会を経て2006年7月から半年間、トライアルとして3つの職場に絞り、実際のプロジェクトに直結した課題ばらしを中心に活動がスタートした。JMACからはチーフ・コンサルタントの柏木 茂吉がその支援を行った。 柏木は「当時ウシオ電機さんは急成長をされて、製造業では数少ない高収益の業績を残されていました。しかしながら現場の方々にお話を聞くと、日々の業務に追われて様々な課題があると感じました。その一つとして、職場のメンバーは技術を通じて社会に貢献したいという気持ちがありながらも、その力を活かしきれないジレンマを抱えていることでした。これは急成長されたがゆえ、内部マネジメントに課題があると感じました」と振り返る。
トライアル期間を経て2007年度から活動は本格スタートを切った。
メンバーもリーダーも共に成長できる場へ
プロジェクトに参加した光源事業部 技術部門 次長 岡崎 佳生 氏は「私は当時、部下の育て方に悩んでいる時期でした。普段から良く会話もしていて、話しやすい関係が出来ていると思っていましたが、この活動を通じて部下の本音を聞いてみると全く違っていたのです。コミュニケーションを取ったつもりになっていたことに気づかされました。開発現場は多様な考えや価値観を持った集団です。その育成やマネジントとしても本活動が有効と感じ、より積極的に活動に取り組むようになりました」と自身の変化を語る。当時岡崎氏の部門は、新入社員が配属されたくない部署No.1だった。しかし現在は組織の風土に関する職場のアンケートでは良い結果へと変わってきている。この活動の成果だけではないが、職場の雰囲気が変わった結果である。
北野氏のチームでは「当時の職場には世代間のギャップがあり、私が意見を言うと皆がそれを聞いてしまって成長しない、そんな悩みがありました。そこで本活動に参加したところ、メンバー間で議論し答えを出す姿勢が芽生えてきました。JMACの支援後もさらに成長し続けて、今ではエース級にまで成長してくれたメンバーもおり、とても良い経験だったと思います。私自身も任せることの大切さを学びました」とマネージャー自身の気づきにも繋がると語る。
柏木は「マネージャー層には、メンバーに任せる課題と、手を差し伸べるべき課題の切り分け、メンバーの力量を捉えた上で少し高い課題を与えることなど1人ひとりきめ細やかに考えていただきました。問題意識を持ち真剣に取り組んでくれる姿勢を見て、マネージャー、リーダーの現状を変えていこうという本気度を感じました。この活動の原動力はマネージャー層の本気度だったと思います」と語る。
活動がリーダー発掘の場に!
北野氏は「この活動はリーダーの真剣度や、活動の理解度が問われると思います。メンバーだけでなく自身も成長するリーダーもいます。その一方、やらされ感で取り組んで活動の成果を出せないチームもありました。そういう意味では、リーダー発掘の良い場にもなると思います。JMACは様々なテーマを持つチームの特性に寄り添い、現場に合った指導をしてくれると感じています」と活動がリーダー育成、発掘の場にもなっている。また「JMACは常に現場目線で、それぞれのチームの状況に合わせてアレンジしてくれました。薬に例えると、現場の症状に合わせて処方箋を書いてくれる、そんな感じでした」とは岡崎氏。こういったコンサルタントと現場の信頼感がリーダーの変化にも繋がるという。
そして吉岡氏は「JMACは日本のものづくりの現場に精通していますし、技術部門の現場に合った指導をしてくれるなと思っています。我々は活動を通して柔道の型のように基本の型を覚えている段階です。開発現場に普遍的な型ができれば仕事が楽に進むと思いますし、基本の型を覚えたら応用で幅が広がっていくと思います」と本活動の先を見据える。
柏木は「型を作ることは、マネージャーの共通認識や共通言語を作るためにも必要だと思います。またそれによってウシオ電機流のマネジメント思想ができていくと思います」という。
組織力と、突き抜けた技術で次なるステージへ
今年10月経営トップの交代を受け、同社では今までの顧客を大切にしながらも、新たな分野や技術への挑戦が始まった。2006年に始まった本活動も、JMACの指導の下2013年3月まで7期継続したが、2015年からまたJMACが加わって活動を加速させる予定だ。
吉岡氏は「当社は80年代、90年代とOEMを中心に成長してきました。しかし、そのビジネスモデルが踊り場に来ています。今年マーケティング&イノベーション部門が新設されて、新しい分野、技術への挑戦が始まりました。その実現のためには、今までと違うことにチャレンジする人材が必要です。実際にそれが出来るポテンシャルを持った、社会への貢献意識の高いエンジニアが多数いると思ってい
ます。2015年からはヴァージョンアップする本活動をきっかけにして、より組織が活性化して、エンジニアが一丸となって革新的な技術を生み出していって欲しいと思っています」と大きな期待を持っている。また、岡崎氏は「7期の活動で、約半数の社員が本活動に参加し既にベースはできています。JMACにはこのレベルまで行きましょうと、もっと引張り上げてもらいたいと思っています」とJMACへの期待を語る。
優れた専門性を持ったスペシャリストも多くいる同社だが、これからはエンジニアの総力戦が求められ、その力の発揮、融合も大きな鍵になるという。これからマネジメント、スペシャリスト、若手、職場が一体となって議論をしていく場がますます必要になってくる。
そのために柏木は「今までの活動を通して、組織で課題を共有化し、解決していくベースはできています。それに加えて、一人ひとりのエンジニアがお客様と向き合いどう貢献するか、それにはどんな技術的な進歩をさせていけば良いのか、ウシオ電機の原点である、強く個性あるエンジニアを育てることが求められていると考えています」と来期の活動には、エンジニアの高い技術力と組織活動の融合で更に強い開発組織を作ることが必要だと語る。
同社は新たな挑戦に向かい、開発部門の活動も「忙しさからの脱却」から、「新たなる挑戦」へとギアを上げていく。活動を進化させ、新たなステージに向かうウシオ電機のチャレンジが楽しみだ。
担当コンサルタントからの一言
今求められるマネジメントは組織力とリーダーシップの両立
これまでの日本企業の特徴は、担当者に近い目線でコミュニケーションを取り、日々のプロジェクトの現場に近い視点で意思決定を行うミドルマネジメントの強みがあったと思います。しかし技術部門では、これだけでは担当者とマネージャーの役割分担が不明確になり、変化の激しいプロジェクトを正しく導き、競争を勝ち抜くことが難しくなってきています。そこでコミュニケーションや日々のプロジェクトの現場に即して「組織力」を引き出しながら、ありたい姿に向けた迅速な意思決定といった「リーダーシップ」を両立することが求められています。この両立を日々の実践を通じて強化することこそ技術者の組織マネジメント改革の要です。
柏木茂吉(チーフ・コンサルタント)
※本稿はBusiness Insights Vol.55からの転載です。
社名・役職名などは取材当時のものです。
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