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コンサルタントの視点 「品質ロスコストの効果的活用」

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品質を定量的に表す際、市場クレーム件数、製造不良件数、試作不具合指摘件数、デザインレビューでの指摘件数等を活用することが多い。しかし、開発テーマの難易度やリソースのかけ方が異なると、一概にテーマ間で品質の善し悪しを比較することは難しい。そこで、様々な品質向上施策の成果をトレンドで把握するために品質ロスコストを活用したい。

品質ロスコストを日常的に活用されている企業も多いが、その場合でも、顕在化した市場クレーム、製造不良に対する廃棄費用、顧客への代替品提供費用、対応工数の費用換算のカウントなどにとどまっているケースが多い。

せっかく品質ロスコストを活用するのであれば、開発設計段階の手戻りロス、品質問題による開発期間遅延に伴う顧客の購入機会損失ロス、市場クレームを発生させたことによる販売機会ロスといった潜在的な品質ロスコストもカウントしたいものである。筆者のこれまでのコンサルティング経験では、業種・業態による違いはあるが、潜在的な品質ロスコストは、顕在化している品質ロスコストの約3倍程度である。

しかし、潜在的な品質ロスコストを正確に算出することは非常に困難であり、データ収集することも難しい。また、データを取得することに工数がかかってしまっては、本末転倒になってしまう。そこで、開発テーマの難易度、クレーム等の重大さ等よるパターン化と基本指標の作成、また重大クレーム発生の際の販売金額低下の実績サンプル収集による基本指標の作成によって、データ取得工数を緩和したい。

ある食品メーカーでは、クレーム件数と販売金額の低下の相関係数の算出と開発難易度別のパターン分けにより、関係組織と対応工数を標準化し、それを元に品質ロスコストデータを毎月算出し、改善施策の妥当性検証に活用している。

また、ある電機メーカーでは、開発の難易度とデザインレビューでの指摘内容・件数による対応工数の標準化を行い、デザインレビューの改善に努めている。

このように品質をコストに換算することにより、改善施策の妥当性をトレンドでウォッチングし、データを活用していくことをお勧めしたい。

コンサルタントプロフィール

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シニア・コンサルタント 野元 伸一郎

東京理科大学大学院修士課程経営工学専攻修了後、1993年にJMAC入社。一貫して研究・開発分野のコンサルティングを実施。設計品質向上をベースにした開発プロセス革新/コンカレントエンジニアリング、プロジェクトマネジメント、技術ロードマップ構築等を数多く推進している。2012/3に北陸先端科学技術大学院博士後期課程で知識科学博士号を取得。2016/3までJMAホールディングス ASEAN推進センター長を兼任し、AEC(ASEAN経済共同体)以降を見据えたASEANビジネスのあり方、各地域別に求められる製品品質・サービス品質について、研究、事業化を行っている。

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