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経営層が見ている品質 「感動品質を創る」 

JQMQvol.8_20120630.pdf

品質を「あたり前品質」と「感動品質」に分けて語ることが多い。
前者は、顧客の必要としている機能・性能を満たすことであり、後者は顧客が商品を保有・使用することによって、感動レベルの満足度を得ることを言う。当然のこととして、「感動品質」を得られる商品は販売価格を高く設定できるため、高収益商品となることが多い。市場の成熟した日本においては、「感動品質」レベルの商品を開発することが新たな市場の創造や、競争のない商売に繋がることになる。どの企業も「感動品質」レベルの実現を目的とした商品開発に取り組んでいることと思われる。
しかしながら、これまでのコンサルティングの経験をとおして、成功パターンと失敗パターンに行動の差が見てとれる。 
 まず、成功しているパターンとして、商品企画の段階において、商品企画及び開発部門の社員自らが、顧客が商品を使用する現場に足を運び、深い観察をしつこく行っていることがあげられる。
 一方、あまり成功していないパターンについては、アンケートなどにより収集した顧客要求事項をもとに、商品への要求仕様を作成し、商品開発部門に渡している。これは、大企業のなかでも機能分業している場合に多く見られる。ここには、2つの問題が内在している。
1つは、社員が顧客の実際の商品使用「現場」を観ていないため、潜在ニーズの把握や創造的思考の機会を逃していることである。2つ目は、要求仕様をまとめる側(商品企画)と、それを具現化する側(開発・設計)との間において、情報の切れ目が生じ、伝達効率の悪い伝言ゲームとなっていることや、開発側からの技術活用の「気付き」、シーズ活用等の機会を逸していることである。
 商品企画と開発部門の双方が、顧客の商品使用シーンを観察し、「困りごと」「うれしくなること」をしつこく拾い上げ、潜在ニーズの発見や、解決に向けた複数の代替案の検討によって、「感動品質」をもたらす商品を創造できる。こうしたことを推奨する経営者の少なさがコンサルティングの現場で気なる、今日この頃である。    

コンサルタントプロフィール

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チーフ・コンサルタント 石田 秀夫

大手自動車メーカーの生産技術部門の実務を経て、JMACに入社。ものづくり領域(開発・設計~生産技術~生産)のシームレスな改革・改善活動のコンサルティングに長年従事。生産技術リードでものづくりを変え、日本製造業の強みである「造り込み品質」や「ものづくり」の力を引き出し、企業を段違いな競争力にするコンサルティングを推進中である。近年は日本版インダストリー4.0/IoT化によるQCDダントツ化デザインや生産戦略/生産技術戦略、ものづくりグランドデザインを主要テーマにしている。

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