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コンサルタントが見た「世界の品質」 『「自工程品質保証」、あなたの国ではどう伝えていますか?』

JQMQvol.9_20121017.pdf

 「次の工程に不良品を流してはいけない。自分の工程で完全品質を達成する。」という、日本の製造現場では誰もが一度は聞いたことのあるシンプルでとても大切なコンセプト。
これを海外工場の現場に浸透させるにはひとひねり必要だ。
日本であれば「次の工程の人に迷惑をかけてはいけないよ。次の工程はあなたのお客様なのだから。」と言われると、現場の日本人は自らの行動に注意する。子供の頃、親から「他の人に迷惑をかけちゃだめよ」と言われて育ってきた私たち、極めて集団主義的な日本文化の中で育った私たちには腑に落ちる表現である。
一方、個人主義の強い文化の国々では、このような言い方をしても現場の意識は全く変わらない。極端に言うと「隣の作業者がどうなろうと私には関係ない」といった具合である。なので「自工程品質保証」を説明する際には、その国にあった表現に変える必要がある。
例えばイタリアでは、「あなたの価値を100%この工程で発揮してほしい。それはあなたが会社に大きく貢献することにつながる。」と言った方が現場のイタリア人の心に響き、日々の実際の行動に変化が出る。 個人主義の強い国では他人(相手)ではなく、あなた(自分)を中心としたコミュニケーションが必要となる。
日系企業の海外の製造現場では、日本から持ち込まれた様々な改善用語が使われている。
しかしながら、本来の日本語を忠実に現地の言葉に直訳してしまっているために、表面的には日本的な良い方法がトランスファーされているように見えても実際にはなかなか成果が上がらないといったケースを多く見受ける。
これとは逆に日本人スタッフが全くいない現地企業の工場で、日本的なやり方を大変よく学ばれ自分たちなりに咀嚼している製造現場の中には、日本のエクセレントファクトリーと見誤るような素晴らしい現場があるのも事実である。
いずれにしても、現地の人の意識に働きかけられる言い回しを探し続けることが大切だ。

(JMAC シニア・コンサルタント 田丸 信幸)

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