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「品質の掟(オキテ)」アンケート結果 ~日本製造業の「品質」を守るための【品質の常識】とは~

JQMQvol 11_201203.pdf

 JQMS編集部は、2012年12月~2013年2月に、会員の皆さまを中心に、設計や製造現場における「品質の掟(オキテ)」に関するwebアンケート調査を実施しました。
「団塊世代退職の10年問題」(2007~2016年問題)、契約社員・派遣社員の増加、製造拠点の海外シフト等に伴い、【品質の常識】(原則・掟「オキテ」)の伝達・共有が難しくなってきているように見受けます。加えて、品質に関わる原則や掟(オキテ)は、経験に基づく「常識」(組織知)であり、明文化されずOJTなど口頭で伝えられていることが多いため、伝達や共有が難しくなっているものと思われます。本号は、アンケート調査結果をご報告するとともに、 JQMS編集部の考える「品質の掟(オキテ)」をご紹介します。
(ご協力いただきました方には、ご回答いただいた代表的な品質の掟等も合わせてご報告しております。)

回答社数・掟の総数  
回答社数〔 105社 〕 *「品質の掟」無と回答した企業を含めると計107社
掟の総数〔 259個 〕 * 複数回答

◆「品質の掟」大賞

大賞は、多数ご回答いただいた中で最も「掟」としてまとまっており、かつ現場に即した内容となっている『ヒューマンエラー防止のための10か条』(以下)に決定いたしました。
本10か条の検討・推進展開において中心的な役割を果たされた柏幹雄氏に、当時のお話を寄稿いただきました。

 過去のトラブル事例を活かしたヒューマンエラー防止活動

変更・変化は、失敗のポテンシャルを高めます。新製品立ち上げ期間の大幅な短縮化や、需要の大きな変化等は、モノづくり現場に多様で大きな変化をもたらします。このような変化の影響を受け、多くの職場がヒューマンエラーの発生に悩まされていました。
 発生したヒューマンエラーを分析してみると「異品混入等の失敗が複数の部署で起こっている」「時間が経過すると同じ失敗を繰り返している」といった状況が見えてきました。
こうした状況を改善するために取るべき策は何か?いろいろと考え、過去のトラブルを活かす手段を講ずるべきとの結論に達し、ヒューマンエラー防止ワンポイントアドバイス (以下、HEPOPA1))を発行することにしました。
 HEPOPA発行のコンセプトは「記憶し易い短い文章で表現」し「作業するときに過去のトラブルを思い出してもらう」ことです。職場に掲示し易いように、パワーポイント1頁につきHEPOPA1件を記載しました。
 活動当初は日本語のみで発行していましたが、海外グループ会社から英語と中国語でも発行してほしいとの要求が出て、最終的に3ヶ国語で発行しました。
 右掲の10か条は、毎週1件、約2年半にわたり希望者にメールで配信し、社内イントラネットでも閲覧できるようにした166件のHEPOPAから選定したものです。
 ヒューマンエラー防止活動では、HEPOPAの発行と併せて、独自に資料を作成し、研修も開始しました。徐々にではありましたが、ヒューマンエラーの発生件数は減少しましたので、上記活動の成果が現れたものと考えています。

 注1)Human Error Prevention One Point Advice
(非鉄金属メーカー 元QAセンター長 柏 幹雄氏)

<ヒューマンエラー防止のための10か条>

1. 同じ場所で、2つ以上の品種/製品を同時に作業しない(させない)
2. 一時も、≪識別≫無しで≪モノ≫を保管/流動させない
3. 作業内容や製造条件などの現場への指示は、「口頭」や「メモ書き」ではやらない
4. 不良品は、すぐに 「赤箱」或いは「不良品置き場」へ、 若しくは「不良品表示」を!
5. ≪モノ≫は常に≪状態≫が分かるようにしておく
6. 集中を要する点検などの作業をしながら、同時に、別の作業をしない(させない)
7. 二人以上で一つの作業をするときは、話し合って、事前に手順・分担を確認する(確認させる)
8. 修理や手直しのために製品を工程から抜いたら、修理・手直し後の製品はそのまま元の工程に戻さずに、
  異常品として扱う
9. 現場で使用している作業手順書や作業標準などの手書き修正はしない(させない)
10. 文字の記入や転記、端末でのデータ入力、図面や作業指示の読み取り時は、「声を出して」確認する
  (確認させる)


◆「JQMS編集部による ~対象部門別~
  多数ご回答いただいた中で、各対象部門別の「掟」として、品質を専門とするコンサルタントが選定させて
  いただきました。

◆「JQMS編集部の考える 「品質の掟(オキテ)」の紹介」

 ◆開発・設計
   量産における品質不具合発生のリスクをあらかじめ想定し、対策を打つ活動を行っています。 
   そうした活動においては、特にシミュレーションやデザインレビューを適切に機能させることが重要と考え
   ます。

 ◆製造
   作業者が標準通りに作業を行い、その結果、出来上がったものの品質を検査によって保証する活動を行って
   います。
   標準通りの作業を阻害したり、品質を適切に保証できないような状況を発生させないことが重要と考え
   ます。

◆JMAC技術プログラム紹介「品質保証コスト」
本紙第9号掲載「品質マネジメント力向上」研修一覧の内、一番お問合せの多かった「品質保証コスト」
プログラムの概要をご紹介いたします。コンサルティング/研修どちらでも対応可能です。   

★Background
各企業では、年々高まる市場・顧客要求に伴い、様々な品質向上・改善活動を行っていますが、その指標は、
・クレーム件数削減 ・歩留まり向上 ・DR指摘件数削減 ・試作回数削減 ・スキルマップ向上率アップ
等に留まり、それ自体がどれだけ経営に貢献しているか、改善活動の意義等が見出しにくいと言われています。
そこで「品質コスト」という概念を用いて、品質改善効果、ロス等を金額換算しようとする動きが高まっています。

★品質コストとは・・・
◆「品質コスト」
事業活動での製品・サービスの提供において、品質を作り込む・品質問題に対応するために発生する費用及び損失のこと
◆「品質コスト・マネジメント」  
    「品質コスト」を活用し、品質の改善余地を知り、取組みの効果を測る活動のことであり、
       →ロスの発見とそれに対する最適な改善施策の打ち出し
       →効果算出からの次期品質向上・改善活動の見直し
       →成果の定量化によるメンバーのモチベーション向上 等に活用できます。

★Viewpoint
  品質コスト体系の整備
   
一般的には、品質コストをまず、品質問題対応コストと品質作り込みコストに分け、それぞれの発生要因に
   ブレークダウンします。その上で、各コスト項目別のコストをモデル・ケースを活用しながら、定義を検討し
   あてはめていきます。
   業種・業態、企業特性によっては項目が小さな金額になる場合は、その項目自体を省略するケースもあり
  ます。

  品質コスト・マネジメント活用方向検討と仕組み化
  
品質コスト・マネジメント活用方向検討と仕組み化にあたっては、品質に投入するコストとリターンの関係と
  最適化施策を見えるようにすることを視野に入れ、
  ・コスト取得方法、タイミング
  ・コストデータ活用方法(経営者、管理者、担当者別)
  ・QMSとの連動方向    等を同時に検討していきます。

●JQMS(JMAC Quality Management Service)が発足して約3年、おかげさまで会員登録数500名様を超え
 ました。
 改めて、皆様の品質に関するご関心の高さを実感しております。
 2014年上期には、第2回「品質保証実態調査」を予定しております。会員の皆さまにはぜひご協力を賜りたく
 何卒よろしくお願い申し上げます。

●「JMAC Quality Management Service」会員募集のご案内(会費無料)
 「品質」に関心のある企業の方を対象に会員登録を受付けております。会員登録いただいた方には、
 次号(6月発行)をお届けいたします。申込み方法は裏面をご参照ください。

●お問合せ/会員登録申込み
  ㈱日本能率協会コンサルティング  JQMS編集部 
  〒105-0011  東京都港区芝公園3丁目1-22   日本能率協会ビル1階
  TEL:03-3434-0982   FAX:03-3434-2963 
  e-mail: Quality_Management_jmac@jmac.co.jp   URL: http://www.jmac.co.jp


第1回 「品質保証実態調査」報告書サマリー版

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研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

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