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コンサルタントの視点 「品質を良くしたいのであれば、現場を変える!」

JQMQvol.14_201401.pdf

先日、あるクライアントにおいて、2年に渡った品質革新活動が終了を迎えた。その成果は、活動開始当初と比べ、通年累計で、クレーム件数48%低減、工場内品質異常発生件数64%低減、損失コスト68%削減という結果であった。クライアントが過去に達成できなかった品質レベルを実現できたことに加え、日本の製造業全体においてもリーディング・カンパニーの水準を達成できた。 
その成功要因は何であったか?トップが明確な方針を出した/役員がプロジェクトの責任者として活動した/自社の体質を知り抜き、2年かけて活動に取り組むと腹を括ったなど経営側の舵取りの良さが挙げられる。品質といった会社の総合力の問われる性質を持つ課題に対し、科学的アプローチ、システム的アプローチ、体質改善的アプローチというトリプル・アプローチの同時推進が幸をなしたところもある。しかし、結局は、その会社の持つ地力によるところが大きく、成功要因は、「地力を引出し、向上させること」にあった。これは、目新しいものではなく、ごく当たり前のことである。
 地力を引出し、向上させるにあたり、最も重要なことは現場の認識・意識を変えることである。現場はどのような行動パターンを持っているのか、なぜそのパターンに陥るのか、何を変えれば、その行動パターンが変わるのか、を見抜き、手を打つ必要がある。
ただし、良い打ち手であっても容易に変わらないのが現場である。現場を変えるためには、現場に近く、影響力を持った人間がその打ち手を理解し、それによって現場を変えようと本気になり、惚れ込み、自分のものにした上で活動を展開する(同じような人間を増やす)ことが重要である。上杉鷹山の火鉢の話と同じである。
現場の理解を得るためには、現場の言葉に置き換える、体感してもらう、それらを仕掛け・仕組みとして機能させることが必要であり、「品質の掟」や「活動全体を表す標語」、「活動習得者の明確化」など目に見えない改革活動の「見える化」、如何なる状況においても活動の一貫性を保ち、現場の「信用」を得ること、現場が納得し、実務に即、活用できる「教育」が必要である。
 ISOにすがり、監査で細かく指摘するだけでは現場は納得しない。皆様の会社では、どのように工夫されているだろうか?

コンサルタントプロフィール

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シニア・コンサルタント 松田 将寿

早稲田大学大学院修士課程国際法専攻修了後、1994年にJMAC入社。
製造業を中心に24年の経験(生産領域コンサルティング12年、戦略領域コンサルティング12年)を持ち、国内外(外は現地企業・大学なども含む)、大企業~中小企業など幅広く支援を行っている。
品質カテゴリーに関しては、経営・事業戦略への組込み、経営体質作り(改善・改革の骨格)として捉えて支援している他、品質マネジメントシステム、品質保証・品質管理の側面から組織・機能連携、外注戦略、業務改革なども支援している。

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