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経営層が見ている品質 「品質に関する経営層の理解と覚悟」

JQMQvol.14_201401.pdf

品質の良い会社とそれなりの会社の経営者を見比べていると、差があることが解ってきた。それは「理解」と「覚悟」である。

 理解という側面においては、形式的・表面的な理解のもと、指示・評価している姿が見受けられる(弊社としての最適な提案は行うが)。例えば、 6σやISO、標準化など、その当時の流行りの取り組みを社内に導入するといったことが挙げられる。当然のこととして、活動しないより、活動する方が会社を良くする。ただし、自社の特性と問題を捉えた上で、導入する活動の本質的な目的と効果を考え、導入する必要がある。品質を良くしたいのであれば、それ以前に、経営者として、自社の品質は「なぜ向上しないのか?」について情報を収集し、さらに掘り下げ、自社の品質が向上しないメカニズムを深く考える(+させる)ことが大切である。

 言葉の「理解」について言及すると、「標準化」がマニュアルの作成のみを指す言葉となっていることがある。本来の標準化とはレベルアップし続けるためのベースとなるものであり、レベルアップによって、「高位標準化」を実現することが大切である。

 活動そのものへの「理解」のエピソードとして、先日、クライアントのトップがISOをやめる、あるいは審査員の入替を希望しようと考えているとの話があった。その真意として、活動に対する労力の大きさに比べ、品質及び品質保証の体質に効果が見られないというものであった。目的を考え、「理解」すれば、こうした行動も考えられる。

 一方、「覚悟」という側面においては、品質の結果ばかりに気を取られ、品質向上は時間を要する活動であるにも関わらず、要因側(プロセス側)に目を向けない経営者を見かける。活動成果は可能な限り早く得られることが望ましいが、表面的かつ瞬間的な成果では本質的な品質管理・保証の仕組みや基盤(体質)を作り上げているとは言い難い。品質は現場の感性、考える力、行動力が伴わなければ良くならない。こうした力が再現性を持って発揮される仕組みを構築することが重要であるが、それを知らずに短期的な成果のみ追う経営者もいる。品質の良い・悪い会社の経営者を僭越ながら見比べると、「理解」「覚悟」が大切と改めて思う。

コンサルタントプロフィール

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チーフ・コンサルタント 石田 秀夫

大手自動車メーカーの生産技術部門の実務を経て、JMACに入社。ものづくり領域(開発・設計~生産技術~生産)のシームレスな改革・改善活動のコンサルティングに長年従事。生産技術リードでものづくりを変え、日本製造業の強みである「造り込み品質」や「ものづくり」の力を引き出し、企業を段違いな競争力にするコンサルティングを推進中である。近年は日本版インダストリー4.0/IoT化によるQCDダントツ化デザインや生産戦略/生産技術戦略、ものづくりグランドデザインを主要テーマにしている。

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