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強く、明るく、美しい会社であるために
~CSR経営を企業存続の核とする~

東陶機器株式会社
代表取締役社長 木瀬 照雄氏

 バブル経済の崩壊以来、多くの会社が赤字に苦しみながら、厳しいリストラを断行してきた。TOTOもそうした途を歩み、いま成長に向かって再スタートを切ろうとしている。その礎になるものは何か、と社員みんなで考えたとき、先人から脈々と受け継がれてきた「創業の理念」がそこにあった。  TOTOの創業は1917年、いまから90年近く前に遡る。明治から大正期にかけて、日本の国をよい国にするために、日本の国民が豊かで清潔な暮らしを送るために、ほとんど需要のない中で衛生陶器の製造研究を開始したのである。創業者たちは、私財を投げ打って日本と日本国民のためにあらゆる努力を続けてきた。そうした先人たちの努力があって、いま日本という国にTOTOという会社が存在する。  CSR(企業の社会的責任)経営に向けて本格的に取組みを開始したのも、創業の理念がもともとそこにあったからである。

「何のため?」を考える

 そうした基本に立ち返ったとき、考えなければならないことは、「何のための会社か?」ということだ。よそと同じ会社であれば、社会にとって存在する価値がない。世の中になくてはならない会社でなければ、いずれ不要な会社となってしまうだろう。

 社会から求められ続ける会社であるために、一昨年6月の社長就任時、「強く、明るく、美しい会社」にしようと全社・全グループに表明した。

 強い会社とは、ブランド価値を上げて社会から求められ続ける会社になる、ということだ。そのためには、「TOTOだからできること」「TOTOでなければできないこと」を見つけ出し、実行していかなければならない。
 
明るい会社とは、縮み志向から脱却し、社員が自ら新しいことに取組む意欲に満ちた会社である。皆が率先して会社の理念にそった行動を起こし、社会のために価値を提供していくことができれば、社長などは必要ない。そんな会社になれば、どんなにすばらしいことだろう。
 
そして、美しい会社とは、高い倫理観をもって世の中から尊敬されるような会社になるということである。そうでなければ、世の中で存在を認め続けていただくことはむずかしい。

CSR経営で会社は強くなる

 時折、CSRでは会社は強くなれないという論調に出くわすことがある。しかし、CSRを実行すれば会社は必ず強くなる。なぜなら、CSRとは企業体質を変えるための非常にすぐれたツールとなるからだ。ただし、他社と同じようなCSRを行ったのでは意味がない。CSRも、自社でなければできないもの、自社なりの徹底の方法を考えていくことが必要なのである。

 TOTOの場合は、CS(顧客満足)とユニバーサルデザインがそれに当たる。全社・全グループのメンバー全員が、つねにこの二つを念頭に置きながら日々の活動を展開していくことで、開発から製造・セールスまで、あらゆる行動に横串がとおる。できている部分と、そうでない部分が明確になり、行うべきことが浮かび上がる。実際、CSRを徹底することで、はじめて見えてくるものがいろいろとあった。それは、どれもおざなりにしておいては、会社としての存在価値を問われるものであり、「何のために行っているか」わからないものであり、グループ全体としての品質や効率を下げるものでもあったのだ。

 間違ってはならないことは、CSRは目標ではなく、道具だということだ。だから、ここでもCSRを通じて自社が何を提供していくか、自社の存在価値をいかにして確立していくかが大事になってくる。そのとき、「何のため」「世界中で自社でなければできないこと」をつねに忘れず徹底していくことで、存続し続ける会社であることができると思うのだ。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.10からの転載です。

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