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変革への挑戦
~10年後のローソンを実現する~

株式会社ローソン
代表取締役社長兼CEO 新浪 剛史氏

コンビニエンスストア各社はここ数年も増収増益を達成している。しかし、実のところコンビニは成熟産業であり、業界4社平均の既存店売上高は2000年以来下がり続けているのが実態だ。 これまでコンビニは、"必要な時間に開いている""近いところにある"という基本的な利便性の上に、スーパーやお弁当屋や外食産業などの良いところを取り込んで成長してきた。チケット販売や金融機関の機能の一部も担うようになった。顧客が必要としているものを取り入れる一方で、誰でもお店を運営できるようにITを活用し30坪を効果的に使い切る。そうして北海道から沖縄まで全国一律・標準化されたローソンが並んでいる。

イノベーションを自ら起こす

そんな中、ここ5年間で従来のやり方を脅かす変化が起きている。少子高齢化が進む中、人口構成のボリュームゾーンは50代となっている。にもかかわらず、いまだローソンのメイン顧客は30歳前後の男性が中心だ。一方で、お客さまが求めている魅力ある商品が大量供給できないために店頭に並ばないといった問題も起こりがちである。こうした現状に対応すべく、われわれは新業態として「LAWSON STORE100」や「ナチュラルローソン」を開発した。ローソンでは捉えきれない50歳以上の高齢者や女性客を取り込み、人口動態の変化に対応したい、というのが狙いだ。

地域に密着した個性派の店舗も増えている。和歌山では地元の熱い要望に応え、木造でしつらえたローソンをつくった。その結果、地元の人がその店向けに門外不出の商品をおいてくれることになった。佐賀にあるローソンでは、地元農家とレジを共通化し、とれたて野菜とおにぎりが一緒に買えるようになった。また東京大学の店では、大学の技術を取り入れた店づくりに取り組んでいる。郵便局と提携したポスタルローソンはそれぞれデザインが異なり、病院内のホスピタルローソンでは売り場の改革を目指し、各病院の実態にあわせて知恵を絞っている。これらの店は、どれも相手の様々な想いを受け止め、こちらが提案力を発揮したからこそ出店が可能となった。一店一店工夫をすればコストも下げられる。

このように、今、ローソンでは「全国一律」という規模の経済に対して新たな挑戦を行っている。イノベーションを自ら起こし、ゲームのルールを変えていく。そうしなければ、いつまでたっても業界2位のポジションに甘んじていることになる。

10年後のローソンを実現するために

新たな挑戦とは、リスク覚悟で過去の成功体験を捨てることである。当然、マネジメントシステムも変えていかなければならない。現場は本部の指示を待ち、本部は指示どおりやっているかをチェックするというこれまでのシステムを、現場が自ら考えて行動する仕組みに変えていくことが必要である。現場で考え、何をやってもらいたいかを本部に提案していくのである。たとえば山形で売れる商品は何かを東北支社の人たちが考える。そのとき本部は全力で支援する。それこそがわれわれが掲げる「個店主義」にほかならない。

さらに、ITを駆使したストアオートメーションを進めていく。セキュリティを強化した上でレジまわりを自動化するのである。これからはヒューマンタッチが求められる時代。だからこそローソンは、ヒューマンタッチを強化するために自動化を行う。

そんな想いを皆に伝えるために、私は研修などにも直接出向いて語り、あらゆる場面でフェイス・トゥ・フェイスで話し込む。3年前、私が社長に就任した当時、うつろだった人たちの目が、いま爛々と輝きだしている。そんなハートの通じた皆とともに10年後のローソンを熱く語り、実現していきたいと考えている。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.14からの転載です。

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