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第9回 「自分ごと」で推進する体制を

  • SX/サステブル経営推進

石田 秀夫

石田 秀夫(シニア・コンサルタント)

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成功するSDGs活動の体制

現在、SDGs活動については「取り組み中」が多く、成功モデルとなる推進体制と結果の因果関係を明らかにすることは現時点では難しい。ここでは、われわれが顧客のSDGs活動を支援、調査してきた中で気づいたSDGsの推進体制を考察する。

SDGsを推進する際に、マテリアリティ(会社・事業として重要課題)を決定する。これは会社・事業の戦略を決めることでもあり、将来の羅針盤をつくることに等しい。マテリアリティの決定自体が経営的にも戦略的にもたいへん重要な位置づけとなることは明らかである。

一方で、マテリアリティの決定で実質的な成果をねらうには、社員一人ひとりが目的や位置づけを理解して行動を変えていくことが重要であるため、社員を巻き込む体制や推進上の工夫も必要となってくる。実際の推進では、サプライチェーン上の関係者も巻き込む必要性も出てくるだろう。
このように、マテリアリティの決定によりトップとボトムが融合する体制を構築することが、SDGs活動を成功に導く。

したがって、大枠の体制として、

  • マテリアリティの方向性と絞り込みを行うトップ戦略チーム
  • 実行計画や実行に移す各部署の推進メンバー
  • 活動のとりまとめ・実行支援・社内調整・内外広報などを行う事務局

という構成を組むと進めやすく、かつ実効性につながる。

活動のスタイルはトップダウン+ボトムアップの融合

トップとボトムが融合する活動には、どのような工夫が必要だろうか。それぞれの役割で重要な点をあげておく。

トップ層:戦略や方向性を決めてテーマを絞り込む

理念・ビジョンの実現、戦略の目的・目標とSDGsへの関連、意義を丁寧に伝えることである。将来の社会・経営の何に貢献できるのか、貢献感やエモーショナルな側面もある戦略も重要となる。

ボトム層:上位の方向性に基づき実行を工夫しながら進めていく

具体的な実行計画を立て、浸透させ実行することである。実行計画を練るときは、トップから「与えられた」テーマ・活動にならないようにしたい。検討の自由度や裁量を残しておくことで、「自ら動く」テーマにして自律性を高める。

SDGsの推進体制:トップダウン/ボトムアップの融合

それぞれの役割の中で、マテリアリティを議論し絞り込み、トップ層とボトム層とのコミュニケーションのプロセスの中で練り上げられたものが成果物となり、同時に活動に一体感も生まれる。このトップダウン+ボトムアップの融合が活動を加速させる重要な要素である。

マテリアリティと連動した実行計画を検討する際は、グループによるワークショップスタイルで進めるとよい。たとえば、部門の課題であれば部門別に深く考えるセッションにしたり、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンなどの複合的な課題では部門横断グループを編成したりする。また、ジェンダーや年齢を織り交ぜると、多様性のある議論を展開できる。このように、グループ編成を工夫することで、ワークショップの有効性がさらに高まる。

ワークショップはトップ層からボトム層までがサステナビリティ経営のこれからの未来をつかむ、重要なセッションであることは言うまでもない。われわれはこのワークショップを「Future Boarding Workshop(FBW)」と呼び、正にトップ層からボトム層までが地球と会社の未来を考え抜くことで生まれる価値を確認し合うものとしている。

「自分ごと」として活動を展開する

SDGsの活動には、会社内で行うフォーマルな活動と、社員ひとり一人が生活の中で行うインフォーマルな活動がある。フォーマルとインフォーマルの活動が一体となれば、より広く高いレベルの持続可能性につながるはずだ。
会社内のフォーマルな活動とは、先にも述べたマテリアリティの決定やワークショップ、実行計画の遂行などである。ここに自主性・自立性を持たせ、いわば「自分ごと」として自ら行動するようにしたい。SDGsを業務上の活動だけにとどめておくことはない。経営や社会に本質的なサステナビリティを求めるのであれば、社員一人ひとりの生活のインフォーマルな活動も大切だ。

ひと昔前、「コーポレート・シチズン(Corporate citizen-ship)」という言葉が多用された。その考え方は、企業に勤める人も市民社会の一員、「企業市民」(コーポレート・シチズン)であるとし、企業存続の基盤である地域社会やコミュニティーの健全な発展に貢献すること、そのための行動を推奨、実行していくことを意味する。すなわち、社内だけでなく、地域社会でも社員がサスティナビリティな社会やSDGsの実現に向けて活動することが求められてくる。フォーマルとインフォーマルの両軸で活動が面として広がり、本質的な効果も期待できるはずだ。インフォーマルな活動により、SDGsの意義が再確認できるとともに、本人に貢献感が沸き、活動を「自分ごと」として捉えるようになる。同時に地域社会での存在感も高まり、フォーマルでも「自分ごと」で行動するようになり、結果的に企業の価値やイメージも向上につながる。

会社のフォーマルな活動の中で育成される人材(考え方・行動そのものがSGDsに沿う人材)が、インフォーマルな地域社会への貢献を通じ、今度は「自分ごと」としてフォーマルな活動も促進していく----このような「SDGsサイクル」を回していく人材が、これからの「ありたい社員」像と言える。

SDGsの活動そのものがサステナブルになるよう、体制・進め方、社員の人材像などを述べた。実効性の高い本質的な活動にするには、もっと工夫の余地があるはずだ。われわれも日々考えを巡らしているところである。

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