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人的資本の充実が企業価値を高める

第1回 まずは「自らを変える」こと

  • 人事制度・組織活性化

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「人的資本」という言葉をさまざまな情報媒体で目にすることが多くなっている。企業価値を高める目的でソフトウエアや研究開発、ブランドなどの無形資産への投資に関心が高まっているからだろう。
このように人的資本が注目されている背景には、人を消耗していく「資源」と捉えるのではなく、人に期待を寄せて投資することにより新しい価値を生み出す「資本」であると捉える、すべての人の人権を尊重することへの意識の高まりがある。

ここでの資本とは、価値を生み出す仕掛けという考え方である。企業経営にとって人とは新しい物事を生み出すための仕掛け、大素(おおもと)であることを示している。

人的資本への投資が重視され始めた

SDGsの目標達成の手段として、"E"nvironment(環境)、"S"ocial(社会)、"G"overnance(企業統治)を重視した企業活動が求められており、その活動は企業に対する投資行動にも大きく影響するようになった。ESGを重視した投資行動の中の"S"ocial(社会)で重視すべきことに挙げられているのが、この「人的資本」への投資だ。

人的資本への投資、人的資本の充実への取り組みは、一組織・一企業の価値を高めるだけにとどまらず、社会課題の解決につながるということが広く認識されている。すなわち、人的資本の充実に真剣に取り組み、情報を開示する組織・企業は、世の中に貢献する存在として認められる時代になっているといえる。

人的資本に関しては、社内外への人事・組織に関する情報開示のガイドライン「ISO30414」が2018年12月に出版され、国際的にも注目されている。日本では「人材版伊藤レポート」(「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」)で議論されている、企業の持続的な価値向上に向けた経営戦略と人材戦略の連動などの提言が組織の重要な課題としての意識づけに影響を与えている。

自らが変わらないと解決しない

最近、発表されたある人的資本に関する意識調査によると、企業の経営者・役員および人事・教育担当者の7割弱が「人的資本を重要視する潮流」を認知しているという。

数カ月前、さまざまな組織・企業の方々と人的資本に関して対話・議論をしたが、多くの方が「自組織では人的資本という認識はまだまだない」と発言していた。そうした中、7割弱の経営層・人事が「人的資本を重要視する潮流」について認知しているということは、大きな意識の変化として歓迎すべである。

人的資本の情報開示や充実が注目されている背景には、「今できていないが、実践すると得られることが多い」と考える企業が増えていることがある。

今できていないことをできるようにするには、新しいものの見方・考え方が必要なわけだが、これは裏を返せば、今できていない人的資本の充実を邪魔しているのが、今までのものの見方・考え方・やり方であるとも言える。

今の考え方・やり方は、経験から培ってきた物事をうまく進めるための知恵であり、かけがえのない財産である。しかし、その財産は時として、新しい考えや行動を止めるブレーキとして機能することを認識してもらいたい。

新しいものの見方・考え方を持たないと解決しない、自らが変わらないと解決できない課題のことを「適応を要する課題」という。これと対をなすのが、外部の技術・資源を活用することで解決していく「技術的な問題」である。

人的資本の充実を実現させるには、まず自らが変わらないと解決できない課題(適応を要する課題)を認識すべきである。組織の中で責任ある立場を担う方々から現場の第一線で活躍する方々まで、自らが変わることで人的資本を充実させていくことを期待する。

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