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第5回 現在の省エネルギー活動のアプローチと問題点

山田 朗

現在の省エネ活動アプローチ

 みなさんはどんな省エネ活動を行っているのでしょうか? 多くの企業で実施されている省エネアプローチは主に次の3つがあります。とくにオフィスビルや商業施設などでは顕著ですね。

①活動展開型アプローチ(全員参加の省エネ活動)
 空調温度設定(クールビズ、ウォームビズ)、不要照明・PC電力オフ、照明間引き、昼休み消灯、ノー残業デーなど全員参加の躾的な活動

②ユーティリティ設備の運用管理アプローチ
 ボイラーの空気比改善、冷温水の出入口温度設定の見直し、ポンプ・ファンのインバーターによる流量制御、空調機の送風量変更などユーティリティ設備の保全や改善に専門知識が必要な活動

③省エネ設備の導入アプローチ
 照明LED化、高効率ボイラーの導入、省エネ型ヒートポンプ化、窓の断熱フィルムの採用など省エネ設備投資を伴う活動

わが国の省エネ推進方針

 こうした方向での省エネアプローチが推進されているのは、国の方針や制度によるバックアップが大きいと思っています。
 まず、ISO14001やエコアクションなど環境マネジメントシステムを構築して、その中の環境目標の1つに省エネを設定し推進するという流れです。全員参加で身の回りのムダを削減する活動が中心ですね。これは「①活動展開型アプローチ」をバックアップしていることになります。

 次に省エネ法という法律です。その中に判断基準というものがあります。判断基準とは、事業者が、エネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るための計画に関し、判断の基準となる具体的な事項を国が定めたものです。事業者はこの判断基準に基づき設備ごとの運用基準(ボイラーで言えば空気比、蒸気圧力、排ガス温度など)を含めた管理標準を作成し、エネルギーの使用の合理化に取り組む必要があります。この管理標準の対象は、空気調和設備、ボイラー設備、照明設備、 受変電設備、コージェネレーション設備、加熱設備、冷却設備、排熱回収設備などエネルギー消費設備であり主にユーティリティ設備です。このように省エネ法でも設備の個別保全管理を求めており、それは「②ユーティリティ設備の運用管理アプローチ」をバックアップしています。

 3つ目に、各省庁や自治体から出る省エネに関する補助金があります。経済産業省管轄だけでも1000億円規模になります。この多くが企業の省エネ設備導入に適用される補助金です。省エネ設備の導入にかかる費用の3分の1から2分の1の補助が出るものが多いようです。これは「③省エネ設備の導入アプローチ」をバックアップしていることになります。

 4つ目に、省庁や自治体(またはその外郭団体)では、事業者が省エネを推進しやすいように省エネ診断を安価(あるいは無料)で行っています。みなさんは受けられたことがあるでしょうか? これは省エネの専門家が事業所を視察して主に「②ユーティリティ設備の運用管理アプローチ」と「③省エネ設備の導入アプローチ」の視点から省エネ余地を診断し、運用改善や設備投資についての改善案を専門的見地から提案するものです。


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現在の省エネ活動アプローチの問題点と第4のアプローチ

 このように上記の3つのアプローチは国のバックアップを受けて推進されています。省エネはさまざまなアプローチを総合的に活用していくことが重要なので、これらの領域をどんどん推進していくのは望ましいことです。しかし、前回書きましたように多くの企業が限界を感じて省エネに関して悩みを持っていることも事実です。

 「①活動展開アプローチ」は、すでにやり切り感があり、効果が出にくい状況になっています。
 「②ユーティリティ設備の運用管理アプローチ」は、設備ごとに深い専門知識が必要なためその管理をユーティリティ会社(設備メーカ―など)に委託している場合も多く、社内で保全やチューニングなど改善を進めることが十分にできていない実態があります。また、外部専門家の省エネ診断を受けても、その改善提案の実施率は必ずしも高くありません。それはその改善提案実施に投資がかかるということや提案内容がかなり専門性を必要とするため、どのように具体化してよいかわからないという問題もあるようです。
 「③省エネ設備の導入アプローチ」については、投資がかかるためホイホイと簡単にはできません。補助金を積極的に活用することは重要ですが、申請には専門的な知識と膨大な資料の準備を求められ、かつその準備期間が短いために実行に移せない企業も多々あります。

 したがって、これらのアプローチをさらに推進すると同時に第4のアプローチが必要と考えています。そもそもこの3つのアプローチは、生産プロセスと切り離された活動になっています。しかし工場であれば、本来エネルギーは生産工程に必要な量を供給するために存在すべきなので、生産工程側から考えていくことが重要なのです。

 次回以降、この第4のアプローチについて述べていきます。

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