今こそ環境経営の推進を
第16回 ISO14001:2015の活かし方:箇条ごとのポイント その2
山田 朗
第15回の続きです。
箇条7 7.4コミュニケーション
従来から企業は環境に大きな影響を与えているので、アカウンタビリティー(説明責任)が必要不可欠と考えられてきました。先進企業では環境報告書、CSR報告書、統合報告書などを作成、公開しています。経営的な観点ではこうした外部コミュニケーションはますます重要度が増しています。
ESG投資が大きく伸びていることは第13回のコラムで書きましたが、機関投資家に企業のESG情報を提供する調査会社は、公開情報を用いて企業を格付けすることも多いのです。しっかりと情報公開をしていないと、対応ができていないと評価される場合もあります。
また、統合報告書の場合はそれだけでは十分な情報量を開示できませんから、同時にCSR報告書などでデータをしっかり出すことも重要です。情報を報告書にまとめてホームページにPDFで載せるだけでは、ESG調査会社が検索してもうまく表示されない場合もあるので、内容をWEBサイト内にも掲示することや調査会社が探しやすい場所にリンクを表示するなどの工夫も望まれます。
2015年版ではコミュニケーションの対象者、内容、時期、方法を明確にすることを求めています。グローバルに活躍する企業であればESG調査会社を対象者として、その対応を今一度考えてみる良い機会になるでしょう。
箇条7 7.5 文書化した情報
従来「文書」「記録」と呼んでいたものが「文書化した情報」と一つになりました。「文書」は指示をするもの、「記録」は行動の結果を示すもの、という区分けがなくなったので、戸惑う方も多いでしょう。規格が「文書化した情報」という表現になったからといって、みなさんの会社でもそれに合わせる必要はありません。従来どおり、「文書」「記録」と呼んでいただければ結構です。ただ、簡素化できる部分は改めて見直す良いチャンスです。従来は紙ベースで文書を運用していたとしても、今では社内ネットワーク上で文書を閲覧するようになっている企業は多いでしょう。そうした場合には、文書の承認、配布、最新版の管理などは圧倒的に簡素化できますね。そもそも文書や記録をいたずらに増やしても環境にいいことはないので、できるだけシンプルにしたいものです。
一方、電子化が進むと情報セキュリティ面での対応を強化する必要があります。2015年版ではその要求事項が唯一追加されました。これも情報セキュリティの規定があれば、それを引用すればよいだけです。
箇条8 8.1 運用の計画及び管理
従来の運用管理の要求事項に加えて、外部委託したプロセスの管理とライフサイクル視点での対応を求めることがポイントです。昨今の世の中の環境関連のキーワードは「ライフサイクル」「サプライチェーン」です。2015年版でそのことが強化されたということですね。
外部委託とは、みなさんの会社が持っている機能を外部に委託したということです。外部託したことでみなさんの会社の環境負荷はその分減るわけですから、それで喜んでいてはダメですよということですね。どんな管理をどこまで求めるかは、みなさんが決めればよいのですが、環境負荷の大きな情報、たとえば電気使用量などは定期的に報告してもらい、削減に努めてもらうことも必要でしょうね。
また、製品ライフサイクル全体の環境負荷を算定するLCAや、事業のサプライチェーン全体の温暖化負荷を算定するスコープ3(Scope3)などが先進企業では実施されています。これによりライフサイクル全体での環境負荷を定量的に評価し、削減する活動を実践すると同時に、こうした情報の開示を求める投資家などのステークホルダーとのコミュニケーションに活用することも重要です。LCAやスコープ3の結果を活用した、環境経営度合いを示す独自の指標を設定するなども可能です。
次回に続きます。
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