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第2回 組織の目標と個人の目標が連動していますか?

2018年4月 3日

方針の浸透に関する発信側の問題意識

 「全社方針が社員に浸透していない」との問題意識を持つ経営層、本社スタッフは多いと思います。経営環境変化に対応するため中期経営計画を策定したが、現場の動きが変わらない、思ったような成果につながっていないとの話をよくお聞きします。また、安全や品質よりも効率性や短期的業績を優先したような他社の不祥事報道を聞くたび、「うちは方針が正しく伝わっているだろうか」と不安に思うこともあるでしょう。このような不祥事が起きるのは、「安全や品質は、どうでもいい」という方針を出していなくても、「効率性や短期的業績」の方針が偏って伝えられた結果起きていることが多いからです。最近話題の好ましくない「忖度」も、この部類に属するかもしれません。

方針を受け取る側の問題意識

 一方、「全社方針が浸透していない」は、社員インタビューやアンケートでは、以下のような問題意識として見えてくる場合が多いです。

(1)組織の目標と個人の目標が連動していない
(2)健全な危機感に裏付けられていない
(3)達成意欲が連鎖していない

 今回は、「(1)組織の目標と個人の目標が連動していない」という問題意識が見られたA社の事例を紹介します。

 (2)(3)については、次回、次々回で紹介します。

社員アンケートによる見える化

 製造業A社は、品質問題を機に新たな全社方針を打ち出して改革に取り組んでおり、その一環として社員の問題意識を見える化しようとアンケートを実施しました。

 図表1、2は、「(1)組織の目標と個人の目標の連動」に関係する社員アンケート結果の一部です。

◆図表1:全社目標が、各組織(自部門、自職場)の目標、個人の目標にブレークダウンされているかを見ています。それぞれの目標を「知っている」・「的確だと思っている」という質問に対し、「はい」と回答した人の比率です。
<読み取れること>
・職場の目標、自分の目標は知っているが、全社の目標・自部門の目標を知らない
・全社の目標・自部門の目標を知っていても、的確とまでは思っていない

図表1 目標を「知っている」と「的確だ」のギャップ

col_saiki_02_01.png

◆図表2:上記のうち全社目標・自職場目標が、部門長層→部長層→課長層→担当者層とブレークダウンされているかを見ています。「的確だと思っている」という質問に対し、「はい」と回答した人の比率です。 <読み取れること>
・全社目標は、部門長と、その下位層とで、的確だという認識のギャップが大きい
・課長・一般職といった実働メンバーが、自職場の目標を的確だと思っていない

図表2 目標が「的確だ」の階層別認識ギャップ

col_saiki_02_02.png

社員が抱える問題意識は何か

 A社では、全社目標や部門目標を部門長・部長・課長を通じて担当者に伝えているはずでしたので、上述のアンケート結果を見たとき、以下のような意見も出ました。

・ちゃんと説明していない人が悪い
・説明を聞いたのに理解していない人が悪い  

 一理ある意見で、きちんと説明すること、きちんと理解することも必要です。ただ、問題は、別のところにもありました。図表3は、同じ社員アンケート結果の「部門長は、現場の実態・問題点をわかっている」という質問の回答結果です。

図表3 「部門長が現場の実態・問題点をわかっている」階層別ギャップ

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 課長・一般職層の「はい」との回答は2~3割に留まっています。一般職層は半数近くが「いいえ」と強い問題意識を持っています。現場の実態・問題点が部長や部門長まで上げられていないようです。

 A社は、もともと上位下達の強い風土でした。上位下達はそれ自体悪いことではないのですが、良くない方向に働いて上司の発言には逆らえない、できないとは言えない雰囲気になっていたようです。

 解決すべき問題点は、「全社方針は聞いたけど、上は現場の実態をわかっていない。そんな目標はムリで、現場にしわ寄せが来ている」と思いつつ、表面上は従っている状態です。

改善と検証を経て次のステップへ

 そこでA社以下のように現場の実態・問題点が土俵に上がることに注力し、改善に取り組みました。

①部長層による自職場目標・改善計画の検討会

 職場で以下の項目を行ったうえで、自職場の目標・問題点・改善計画を持ち寄り、他の部長とアドバイスしあったり、トップ層・部門長層と実態・問題点を共有したりする検討会を実施した。

【実施項目】
・部下の意見の収集、自職場の実態・問題点の整理
・部門長との自職場の問題点の共有、自職場目標・計画の擦り合わせ

②課長層による日常のコミュニケーションの改善 

 一般職層の問題意識・意見を引き出すためのトレーニングを行い、日常の会議の仕方やコミュニケーションの改善に取り組んだ。全体会議では若手がなかなか意見を言いにくいことを踏まえ、まず個人別のヒアリングを事前に行う、メンバー層を分けて実施する、全員意見をポストイットに書くことから始める、席順をいつもと変える、若手に司会を任せるなど、職場の状況を考慮して各課長がそれぞれ工夫した。
 ある部署では、一般職の意見を踏まえて、毎月席替えをし、部署内での上下のコミュニケーションを改善しようという取組みもなされた。

③トップ層・部門長と職場との双方向コミュニケーションの場づくり

 部門・職場ごとに、トップ層・部門長から会社目標を伝える場ではなく、現場の疑問・意見・実態を聴きだす場をつくり、実行した。説明資料は事前に配布。参加者は必ず1つ質問を持ってくることをルールとした。

 上記に取り組んだ結果、1年後の社員アンケートでは、「部門長が現場の実態・問題点をわかっている」という質問の回答結果は、大幅に改善しました。「全社目標・部門目標は的確だと思う」部長層・課長層が増加傾向です。

 次のステップとしては「全社目標・部門目標は的確だと思う」が少ない一般職層にターゲットを絞り、部門・職場による改善のバラつきを踏まえての「てこ入れ」などに取り組み中です。

コンサルタントプロフィール

才木 利恵子

才木 利恵子

HRM革新センター チーフ・コンサルタント

1988年 JMAC入社。人材・組織マネジメント領域におけるコンサルティング活動に従事。人材マネジメント領域では、小売業・サービス業を中心に、人事制度改革、人材育成体系づくり、現場・非正規社員の活躍化などを支援。また、JMAC組織文化診断(OPECS)を活用し、多くの製造業・サービス業に対して、組織風土診断・風土改革・マネジャー教育などを支援。
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