第一線の組織マネジメントを考察する
第12回 自律自走行動
- 人事制度・組織活性化
伊藤 冬樹
やりくりのマネジメントにおいて現場で展開したい行動の3つ目のキーワードは"自律自走"です。担当層がおのおのの周囲に目配せをして自らを律し(自律)、その時点での最適行動を主体的に推進している(自走)状態と表現できます。
これまでのキーワードとは異なりだいたいの察しはつくと思いますが、"自律自走"の言葉に込めた思い、意味を明らかにしていきます。
自走とは主体的行動
はじめに、"自走"について解説します。自走には2つのポイントがあります。
1つ目は他人からの指示がなくても自らの判断で行動を開始すること、そして2つ目は状況が変わったときに自ら判断して方向修正を行なうこと----この2点を実践して成果につなげようというものです。
自走状態は会社にとっても管理者であるみなさんにとっても、そしてなにより本人にとってメリットがあります。
タイムリーな対応が可能になる
まず、会社と管理者にとってのメリットです。
事業や仕事環境の多様化・複雑化が進み、また状況変化のスピードが速くなった中では、それぞれの状況に応じたきめ細かさとタイムリーな対応が必須です。そのためには、いちいち細かいところまで上司の判断を仰ぐのでなく、方針は共有しながらも、現場の状況を一番良く知っている担当者が判断し対応すること(=自走)が最善策であります。
この点は裏を返せば上司のみなさんにとってのメリットです。管理職も最近はプレイングマネジャーが多く、自分の担当分の業務に関心が向きがちです。部下の業務に対する管理責任は当然ありますが、細かいところまで目を向けられるゆとりがないというのが本音で、自分の判断がボトルネックになってしまっては浮かばれません。
自分のペースで進められて達成感も高い
自走状態は本人にとっても望ましい状態です。
自走しているときの行動は本人による主体的行動なので、良い意味での緊張感を持って前向きに取り組めます。裁量の範囲も大きく自らの工夫も入れ込みやすいし、自分のペースで進められます。結果に対する達成感も際立ったものになります。
ところで、"自走"行動が望んだ成果につなげるためには、本人の判断の妥当性が重要なポイントとなります。この点は次の"自律"の項で解説します。
周囲への目配せが自律
業務上で求められる自走行動はあくまで業績達成に貢献する行動で、本人の好き勝手な行動ではありません。行動を起こすに当たって、自分はどういう行動を取るべきかを判断しなければならないのです。このときに重要なことは客観的な視線で周囲を目配せすることにあります。
具体的には、職場内であれば仕事の状況・他のメンバーの状況、社外であれば事業の状況・ステークホルダーの状況に目を向けます。ここからから自分への要請、期待を抽出して、どう行動すれば仲間や自職場・会社に貢献できるのかを検討し、最終的に自分の取るべき行動を決めていきます。このときに周囲に目配せするからといって、自分の想いや発想を全否定する必要はありません。周囲からの期待と両立できる方策(着地点)を追求していきます。また、検討した内容と自分のキャパシティとの兼ね合いも重要です。行動内容が自分ひとりの手に余るものであれば、周囲の人の協力を仰ぐか、許されるのであれば行動の水準を現実的なものに修正していきます。
このように自分の視野を拡げ、
- 自らの想い(やりたいこと)
- 周囲の期待(やるべきこと)
- 自分の力量(やれること)
の3点から自らが取るべき行動を決めていくことが"自律"の本質です(図1)。この結果として"自走"が有効な行動となるのです。
自律自走行動を促す
良いことずくめでオールマイティのような"自律自走"ですが、"自律自走"がなじみにくい場合もあります。職種によっては自主裁量の余地が少なく、一律の業務推進が求められる仕事もありますし、入社したての新人に急に"自律自走"を要求しても無理な話で、初めは上司・先輩からの指示、指導が必要です。それでもこれらの場面に自律自走の余地がまったくないかと言えばそうでもなく、できる範囲からの自律自走を促して、徐々にその範囲を拡げていきたいものです。
これまで3回にわたって現場の第一線層に望む行動規範について紹介してきました。これらの行動規範はそんなに簡単に仕向けられるのだろうかと思う方もいると思います。そのとおりで、放っておいただけで勝手に自分事・先手・自律自走状態が実現することはまずありません。やはり管理職による働きかけが必要です。
次回以降では、これらの行動を現場の第一線層にどのように働きかけて展開していくべきか、そのマネジメントのあり方(管理職の立ち振る舞い)について触れていきます。
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