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生産現場の「ここが変だよ!」

第5回 もったいない作業日報

  • 生産・ものづくり・品質
  • 生産現場の「ここが変だよ!」

白濱 匡晋

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実績収集しても改善にむすびつけられない作業日報

 生産に費やした時間や生産数など実績の収集手段として、作業日報を作成している工場は多い。作業日報は現場で作業者が紙にペンで記入し、後日記入されたデータをエクセルや生産システムへ入力するケースが多い。昨今IoT技術が発達してきているが、まだまだ自動収集のレベルまで達している工場は少ないように感じる。

 単に作業日報と言っても、企業によってはさまざまな問題・課題を抱えている。

①データを多く収集しようと実績の入力項目を多く設定している。しかし、現場作業を半ば無視した設定のため、作業者がすべての記録ができない(最低限の項目のみ入力)状態となっている

②収集したデータを基に工場間比較を行うが、工場によって生産特性が異なっているため、一辺倒の見方のみで正しい評価ができない

③数量や回数の記録のみで作業内容や作業時間の記録がない


 ①については、必要最低限の記録のみに留め、もし必要であれば作業者が記録せずともよい方法(IoTツール活用など)を検討するべきである。

 ②については、工場によって生産特性が異なる場合、同じ軸で評価することが適正であるかということを再度考える必要がある。例えば、生産性、品質、納期など、生産特性を考慮したグループごとに評価するなどの方法がある。

 ③については、特に積極的に記録するべきである。 作業者は自分のミスや工程の遅れを見せたくないという思いもあり、日報に悪さ加減を記入する項目がそもそも設定されていないこともある。作業におけるロス、手待ちややり直し、故障等が発生しているにも関わらず、可視化していないのは非常にもったいない。よい日報は改善の宝庫なのである。

生産現場の「もったいない」はなぜ起きる?

 前述した①~③の現象がなぜ起きるのだろうか。その原因を見ていこうと思う。

 まず、原因の1つに「作業日報の目的が数量管理のみになっている」ことが挙げられる。生産実績を把握し、計画通りに数量があがったかを見るだけで終わってしまい、「作業の日報」にもかかわらず作業改善につなげていく発想がない。

 2つ目は「作業者に作業日報の目的をきちんと伝えていない」ことが考えられる。作業日報は「改善するために、実態を可視化する」ことが目的である。悪さ加減を日報に記入することで、作業者自身が責められる風土になっていれば、当然作業者は正直に記入しない。現場で100%働いているように見せたいため、1日の作業時間=勤務時間と一致しているように加工して、生産に費やした正確な作業時間が分からない状態になる。

 情報入力の仕方によっても、「もったいない」ことが起きている。生産期間が長い製品の場合は、実績が%のみで時間がないため、結果進度しか分からない。逆に生産期間が短い製品の場合、製品別の作業時間はあるが、その内訳が不明であるため、作業におけるロスが分からない。
 いずれにしても現場の良い悪い含めた実態を表す情報があがらず、作業のロス改善につなげられていないのである。

生産現場におけるロスを定義する

 作業日報の効果的な活用として、生産数量を管理することに加えて、「稼働状況」も一緒に見るべきであると考える。仕事をしている時間(稼働)と仕事をしていない時間(不稼働)に分けて作業を定義する。計画不稼働、前工程からの材料・部品待ちや設備故障などによる手待ち、朝礼や打ち合わせなど、直接的に製品に価値を与えていない業務も場合によっては不稼働に含める。

 稼働は、加工や組立等、直接的に製品に価値を与えている作業である。もし可能であれば、加工や組立を補助する作業(別作業所への歩行やモノの運搬など)は分けて実績をとることで、発生比率の大きさにより「もっと距離を短くするにはどうすればよいか」と、レイアウト変更やモノの配置の改善着眼が得られる。

 稼働、不稼働の作業項目の設定は、作業者と管理者で観点が異なる。一般的に作業者は加工・組立で良品製造とそれ以外の作業で作業項目を設定する。しかし、管理者は種類別の手待ち(機械故障、欠品、作業指示待ちなど)、作業指導、上長指示作業、会議、不良手直し、工場行事などの作業項目を設定する。 より細かく作業が取れれば尚よいが、これは作業者の日報入力の負荷とのバランスを考えることが必要である。また、実績収集を作業者自身が日報に入力するのではなく、センサー、動画、AI判定などIoTを活用することで作業者に負担をかけずに行える仕組みを目指したい。

稼働と不稼働の一般的な定義

 この指標の推移を把握し、総合能率が低下しているのであれば、何か悪さが発生していることと捉え、内訳として作業能率が影響しているのか、または稼働率が影響しているのかを分析する。さらにその内訳とブレイクダウンしながら、問題を明確にしていくことが求められる。

 作業日報で収集する作業項目は細分化すればするほど、分析としては活用できるが作業者の記入する負担が増加する。作業日報の設計者は、現場で発生している問題仮説を持ちながら作業項目を設定する必要がある。粗く収集する部分と詳細に収集する部分を見極めながら、自職場に適した作業項目を設定するべきである。

能率の考え方

 また、作業日報による情報収集方法も、なるべく作業者や管理者の負担にならないように取ることが求められる。収集ツールも紙ではなく、直接PCに入力することで紙からの転記をなくす。PCで管理することで、集計やグラフ化が容易にできる。さらに、タブレットでアプリを活用する方法もある。作業者が手動で時間を入力するのではなく、ボタンを押して作業の開始・終了を自動で記録するなど、工夫を志向したい。IoT技術革新により、今後はAIにより作業を自動判定することで、作業者が直接入力すること自体がなくなるかもしれない。

 どのような方法であろうと、作業者や管理者のデータ入力という工数をなるべく減らし、本来の目的であるデータの分析や改善検討、それらの実行に時間を使うべきである。作業日報は実績の収集のみならず改善に活用することが大切である。そのためには、実績の収集は改善に使えるような情報を取れるよう、かつ、作業者の負担を減らすように設計したい。

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