生産現場の「ここが変だよ!」
第24回 差がつかないサプライヤー評価
- 生産・ものづくり・品質
- 生産現場の「ここが変だよ!」
加賀美 行彦
目的が明確ではない、サプライヤー評価
調達部門のミッションを明確に定義している企業は多くないが、調達の役割とは「必要とされるものを必要な量・タイミング・価格で獲得すること」である。そしてさらには、自社の競争力強化に貢献をすることである。製造部門が日々現場の改善を重ねているのと同様に、調達も調達する対象の競争力を高めるための取り組みが必要である。
調達には、当然のことながら調達対象の物品やサービスを納めてくれるサプライヤーがおり、そのサプライヤーのパフォーマンスや改善努力によって、取引の結果であるQCDといった調達実績は左右される。
サプライヤー評価とは、サプライヤーの調達実態を測るための指標であり、調達品競争力を高める施策検討のベースとなるものである。調達リスクマネジメントの取り組みやサプライヤー戦略の検討においても、サプライヤー評価結果が現状分析の一要素として活用される。では、このようなサプライヤー評価の目的が明確にされているだろうか?
近年は、調達部門としてISO認証を取得しているケースも多く、ISOでサプライヤー評価をすることになっている。しかし、サプライヤー評価の目的は不明確なまま、単に年中行事として評価を実施しているということも少なくない。また、評価結果をリスクマネジメントやサプライヤー戦略に活かすとの視点が欠けているために、サプライヤー間で差がつかない評価となっていたりする。
サプライヤー評価を実施する場合、その活用方法を踏まえて評価内容を決めることが重要である。サプライヤー評価の目的については、次回取りあげる。本コラムでは、サプライヤー評価の目的が明らかである前提で、サプライヤー間で差をつけるためのポイントを解説する。
あいまいなサプライヤー評価基準
なぜ、評価でサプライヤー間に差がつかないのか?理由はいくつか考えられるが、以下3点を主なものとして指摘したい。
- サプライヤー評価の段階分けが、実態の水準と合っていない。(水準の問題)
- サプライヤー評価の段階分けが粗過ぎる。(段階分けの問題)
- サプライヤー評価基準があいまいで、評価者の恣意(しい)的な判断が行われる。(評価基準の問題)
①の水準の問題について、調達の納品不良率を例に挙げて考えると、取引のあるサプライヤーの大半が1%未満の実績であるにもかかわらず、3段階評価の基準が最上位=1%未満、第2段階=1~3%、第3段階=3%以上、というような設定のケースである。最上位の水準が実態と比べて甘くなっている。
②の段階分けの問題とは、前述の例で言えば、3段階という階層自体が少なく、評価が粗くなっている。多少のサプライヤーのパフォーマンスの差異は丸められてしまって、差がつかないのである。やはり、サプライヤー評価は、5~6段階程度が望ましい。
③の評価基準の問題とは、例えば5段階評価で、単に1(低い/悪い)~5(高い/良い)や、1=よくある、2=ときどきあるといった具合のあいまいな評価基準のケースである。あいまいな評価基準では、評価者による恣意的な判断が可能になり、実態が表されなくなる危険がある。実態が示されなければ、本来ならば改善を進めなければならないところが見逃されることにもなりかねない。
まずは、現状で活用されているサプライヤー評価基準がどのようなものか、確認をしてもらいたい。
評価指標を定量的に定義し、評価段階ごとの評価基準を明確に設定する
サプライヤー評価基準整備の手順
現行のサプライヤー評価基準の問題点が把握されれば、見直しをする必要がある。サプライヤー評価基準を整備する場合の手順は、評価の領域と項目の整理を行い、続いて個々の評価項目ごとの評価基準を整理するのが一般的である。
サプライヤー評価は、新規サプライヤーを採用する段階と既存サプライヤーとの取引実績を評価する段階に大別でき、評価内容も変わってくる。
サプライヤー評価の領域と項目
評価の領域とは、Q品質、Cコスト、D納期やリードタイムなどである。他にもT技術力、Gグローバル対応力、E環境対応力など、各社が必要と考える領域を設定する。
各領域では、それぞれ必要に応じて複数の評価項目を設けるのが一般的である。下図の例では、QCD領域を取り上げている。品質面では、取引結果の納入不良率だけでなく、前期比の納入不良改善率や受入検査の要否をみる無検査率などが指標に挙がっている。
サプライヤー評価基準の設定
評価基準を設定する際には、評価者の判断の裁量が小さくすることが望ましい。特に取引実績の評価では、実績データに基づく定量的な評価が可能なものが多い。定量的な指標では、算出式を具体的に定義することが重要である。このような基準を設定できれば、恣意的な判断の要素をほとんど排除することができる。
下図の例では、定義欄に各評価項目の算式を示している。実際に取得できるデータに基づき、具体的に定義することが望ましい。
算式が定まれば、評価段階ごとの範囲を具体的に決める。前項の問題点で指摘をしたように、実態水準を考慮して決めることが重要である。
下図の例では、横軸の1~5が、評価の段階を示している。図では品質領域以外を省略しているが、他の評価項目においても同様である。
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