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生産現場の「ここが変だよ!」

第18回 現場が知らないQC工程表

  • 生産・ものづくり・品質
  • 生産現場の「ここが変だよ!」

平林 晃一

企業によって用途が異なるQC工程表


 QC工程表の使われ方をヒアリングすることで、製造品質の保証活動の実態が垣間見える。以前、A社の製造部門にヒアリングした際に「QC工程表は、品質保証部が顧客に製造工程を説明するためだけに使っています」という回答があった。

 QC工程表は現場で使用していない様子であったため、「それでは製造部門ではどのような文書を使用しているのか」と確認した。その結果、個々の作業標準や検査標準はあったものの、一連の工程の中でどの品質特性をどのように保証しているのか読み取りにくい状況であった。

 一方で、同様のヒアリングにおいてB社では「QC工程表を見ながら作業しています」という回答があった。QC工程表を見ながら作業するというケースは一般的ではないと考えられるため、続けてその内容を確認した。

 すると、名称自体は「QC工程表」で、形式も一般的なQC工程表の形に準じているが、中身は製造工程における工程内検査の検査標準の要素を含めたものであった。B社ではQC工程表は品質保証の核となる文書であることを強く意識し、現場で日々使用することを追求していた。

多様な活用方法があるQC工程表、自社ではどう使う?

 前述のエピソードにあったA社の事例から分かるように、QC工程表の役割の1つは顧客への説明に使用することである。具体的にはBtoBメーカーにおいて、製品の取引開始にあたって製造工程の管理方法を説明し、その管理方法を約束するためにQC工程表の提出が求められることが多くある。

 また、提出が求められない場合でも、顧客による製造工程監査においてQC工程表に基づき製造工程の品質管理の説明を行うことが多くある。A社のように顧客に説明するためだけにQC工程表を作成しているケースは少ないが、製造部門で使用しているQC工程表をベースに顧客説明用のQC工程表を作成することは多くある。

 また、エピソードのB社の事例から分かるように、QC工程表の役割の1つは、製造工程の品質管理方法を標準化し、運用を徹底することである。QC工程表で一連の工程において骨子となる方法を定め、詳細手順を作業標準や検査標準などの標準類を定める。そして現場は、その標準類を基に作業を行うことが多い。B社のように、QC工程表の要素と工程内検査の検査標準の要素を統合することは、現場での運用の効率性を高める工夫の1つと言える。

 以上のように、QC工程表は複数の役割が求められており、その活用方法について迷いが生じることがある。QC工程表の本来の目的を再確認し、自社ではどのように用いるのが正しいと言えるのか、明らかにしておくことが必要である。

QC工程表は製造工程の品質保証方式を定めるツール

 QC工程表はどのように品質を工程で作りこむかを検討し、標準化し、運用するツールである。また、品質を工程で作りこめない場合は品質を保証するために検査が必要になるが、QC工程表はどの段階でどのような検査を行うかを検討し、標準化し、運用するツールでもある。これらを合わせると、QC工程表は製造工程の品質保証方式を定めるツールと言える。

QMS運用・改善の目線


 この品質保証方式の典型例について解説する。品質を作りこむ原則は2つあり、1つ目は、当該品質特性を満たすための要因系の管理項目(点検項目)を明らかにし、この要因系の管理項目を実行すれば当該品質特性の不適合が発生しないという方式である。

 2つ目は、要因系の管理項目だけでは不適合が発生しないことを保証できない場合に、結果系の管理項目を定め、製造工程に問題ないことを監視し、問題の兆候があれば制御する方式である。

 この2つの原則によって品質を十分作りこむことができない場合は、検査による保証を行うことになる。この場合、どの段階で検査を行うことが合理的であるかを検討する必要がある。例えば、検出した不具合を修正するときに途中の工程もやり直しになる場合は、不具合が発生した工程から離れた段階で検査を行うよりも、不具合が発生した工程から離れない段階で検査を行うほうが合理的である。

 これらの検討を経てQC工程表を作成するが、QC工程表の一般的な様式は、これらの検討結果を表記する様式となっている。

品質保証方式

 また、QC工程表は、受入検査、製造、工程内検査、最終検査、包装、出荷などの一連の製造工程について定めるものになるが、品質保証方式の骨子を明確にし、全体像を読み取れるようにすることが必要である。もし、エピソードB社のようにQC工程表に詳細手順を記載してしまうと、全体像が読み取りにくくなるため、詳細手順は標準類で定めることが一般的である。したがって、QC工程表の一般的な様式では標準類との関連づけを記載する様式となっている。

QC工程表は管理者が使うもの

 では、QC工程表は誰が活用するのか。メーカーの状況によって正解は異なるが、1つの答えは、管理者が活用することである。

 新製品の工程設計段階では設計部門、生産技術部門、製造部門がQC工程表を作成するケースが多いことから、複数の部門の管理者がその内容を確認することになる。ただ、QC工程表は製造品質を保証する方法を定めているため、品質保証部門が最終的にQC工程表を承認するよう、筆者はコンサルティングの場で推奨している。

QC工程表の確認要件

 また、承認されたQC工程表の内容は、製造部門が遂行することになる。筆者はコンサルティングにおいて、QC工程表は製造部門の管理者が製造工程における品質保証方式についてその骨子を理解し、運用徹底を図るために活用し、現場では、QC工程表に関連づけて定められている作業標準、検査標準等の標準類に基づき作業を行うことを推奨している。

 たとえば、冒頭と同様に製造部門に対してQC工程表の使われ方をヒアリングした際に「現場の作業者は標準類を基に作業しています。標準類の上位文書にQC工程表があり、製造係長または主任が現場の作業管理に使用しています。現場作業者は、必要に応じてQC工程表の内容を確認することができます」というような回答があると、QC工程表の活用方法が整理されている状況であろうと筆者は考える。

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