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中堅・中小企業の改革物語

製造業A社の物語② ~中堅・中小企業の改革物語~

  • 業務改革・システム化
  • 中堅・中小企業の改革物語

松本 賢治

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 前回のコラムに引き続き、地方で製造業を営む中小企業A社について紹介する。売り上げ減少の際にとった対策をみていこう。

なぜ儲からない?

 売り上げが順調に伸びている時は 、利益も増え続けていた 。売り上げの拡大に伴い、人も設備も増えた。やがて場所も手狭になり、新工場を建てた。しかし、景気の悪化で売り上げが減少すると、利益はそれと同じように減ってしまった。

 売り上げが落ちたとき、その分コストを減らすことができれば、利益額は減るものの利益率を一定に保つことができる。だが、売り上げに見合った利益を確保するためには、景気が良かった時に新しく買った設備、工場、新しく雇った従業員といった固定的な費用を減らす必要がある。

会社はなにを目指すのか?

 A 社は中小企業ではあるが 、地元に根付く企業で 、地域社会への影響も少なくない。社長としては、できるだけ従業員を解雇することなく、社業を続けたいという強い思いがあった。A 社はこの難局を乗り越えるべく、事業の在り方をどうすべきかも含めて、改革活動に着手した。

 そこで、あるべき姿としてこんな思いを描いた。

・現在の顧客の業績に左右されることない、幅広い顧客と付き合いたい
・製品の付加価値を高め、利益率を上げたい
・自社の技術を生かしながら、従来の事業分野とは異なる領域に進出したい
・自社ブランド製品を生み出したい
・新しいことにチャレンジをし、常に変化に対応できる人材を作りたい
・日本でものづくりを行い続けるためにも、成長する海外市場での 事業を行いたい


 以上のことから、「今の仕事を見直し、現場の生産性を向上させ、人や設備を増やさないで新しい仕事を取り込む効率化活動」と「新しい顧客と新しい製品を創り出す拡販活動」を行った。

仕事が増えたら儲かるはずだったのに?

 大手メーカーの協力企業として部品や部材を加工し納める仕事は、一度受注契約を行えばその部品が使われる製品がモデルチェンジし部品が変更になるまで、量の差はあれ、 毎月注文をもらえる。

 そのため、営業としては次期モデルでの採用を得るための活動と、現行品については品質・コスト・納期に関する顧客要求に対し、満足を得ていただく対応を行うことが主たる活動となる。

 この活動は日ごろからのお客さまとの関係をいかに良好なものにするかということが重要なポイントとなる。しかし、全くの新規顧客に対してこのような関係を築き上げることは一朝ータにはできないものである。A社においても、他の大手メーカーヘの定番部品としての新規採用を目指すべく営業活動は行うものの 、基本的には年に1回の採用コンペティションヘの参加ができるかどうかというところから始まるため、短期的に受注を増やすことはできない。

 そこで A 社では 、お客さまのプロジェクト単位での案件に対して都度、開発を行い製造納入をする、受注生産型の事業を始めた。そのために営業マンを増員し、各種個別オーダーに対応した営業を行った。慣れない営業活動もいたため最初は苦労したが、徐々に案件は増えていった。

 さらに、問い合わせから、案件内容の把握と見積もり、価格・工程調整、受注といったどの段階にあるのかを案件ごとに見えるようにし、案件の受注確定までの進捗管理を行うことにした。

 しかし、個別受注案件獲得活動を行うことにより売り上げは増えたものの、利益はなかなか増えなかった。

なにが良かったのか、悪かったのか。これが分かれば手は打てる

 受注生産型の案件は、大手メーカーの部品製造に比べると、毎回、受注を確定するまでに仕様や価格を決めるための手間のかかるプロセスがあったり、製造も小口となり、効率の良くない生産となってしまうことが多いという問題はあった。しかし、一番の問題は注文を取る際に、この価格で儲かるのか、実際の案件ごとに儲かったのかどうかが分からないことだった。

 手間暇かけて仕事をこなしても利益に結び付かない、そんな状態がしばらく続いた。その状況から抜け出すべく、A社は先に行った 「案件が受注までのどの段階にあるのか、その進捗はどうなっているのかを明らかにする案件のステータス管理の仕組み」に加えて、案件を受注する際の目標利益や目標原価を設定し、原価費目別に目標と実績の差異が分かるようにした。そして、この結果を毎月、経営幹部も参加する会議でレビューした。

・どの案件が儲かっているのか?
・もし、目標利益を下回る場合、どの費目原価差異があるのか?
・ その差異は目標の設定が間違っていたことによるのか?
・実績原価が目標を上回った原因はなにか?
といったことが検討されるようになった。

 これにより、儲からない仕事はどんなものなのかが分かり、無理な受注を行うかどうかは、一営業マンが決めるのではなく、会社として決断するようになった。また、営業マン一人一人が、案件の売り上げだけではなく、コストについて意識を持つようになった。

 この他にもいかに付加価値の高い製品を開発するか、自社ブランド品の開発販売など、既存事業の枠を超えた売り上げアップのためのさまざまな活動を行ってきた。

 売り上げを増やすという活動は、経営環境が思わしくない中ではなかなか先の見えない活動だが、 A 社は今も果敢に挑戦を続けている。

※本稿はNECサイトに掲載したコラムからの転載です

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