ビジネスインサイツ72
- ページ: 1
- Vol.
72
ものづく りの ォーメ トランスフ ーショ ン
デジタルとリアルの新結合
Monozukuri Insights
● ●
サントリーホールディングス株式会社 ● 佐賀エレクトロニックス株式会社 コニカミノルタテク ノプロダクト株式会社 ● 富士製薬工業株式会社
JMACが提唱する 「次世代工場」 の完成図
既成概念にとらわれず 自らを突破するものづく り
株式会社ジェイテクト アドバイザー 新美 篤志氏
New Smart Factory
Special Interview
- ▲TOP
- ページ: 2
- Mon oz u ku r i
ビジネスルールの変化
スフ ォ ーメ ーシ ョ ン
デジタル化に遅れをとる日本は 生産性向上を果たせるか
働き方改革 コーポレート ガバナンス
SDGs/ESG
日本のものづくり産業は︑平成以降のグロー
バル競争の波の中で︑安価な賃率を求めて中国
をはじめ東アジアに生産拠点をシフトしてきま
(多様な人材能力活用)
企業の (パーパス) 存在意義 による共感
ダイバーシティ
した︒そして現在のデジタル化時代では︑AI︑
I oT︑ロボットを活用する効率化されたスマー
トファクトリーへの転換が迫られています︒賃率
に頼る生産性向上ではなく︑デジタル技術による
リアルな領域
D
L
プロセスそのものの生産性が問われており︑さら
に自社工場単独ではなくサプライチェーン全体の
A
中で︑その実現が期待されています︒そのために
L
は膨大な製造情報を利活用するデータ駆動型の生
E
E
産システムが必要とされており︑サプライチェー
ンで共有化されたデータは︑瞬時に個々の企業の
I
オープンで 魅力ある現場
R
F
積極的な トライを容認
生産計画や品質管理に反映されるといった状態の
(各自が提案 ・ 意思決定できる)
実現がねらいになります︒
残念ながら海外シフトに活路を求めてきた日本
企業の多くは︑デジタル技術の活用において︑欧
(変化への迅速な対応)
米勢に一歩遅れており︑ データ駆動型システムは︑
リアルの新結合
現場力発揮
海外のプラットフォーマーを中心に形成されたエ
コシステム︵ 生態系 ︶に主導権を取られ︑日本企
業はその一部に連なるだけといった危機感もある
のが事実です︒実際に日本の製造現場でのデジタ
ル化は社内の古い情報システムの壁や︑業務プロ
セスのあいまいさにより推進を阻まれ︑頭を痛め
ている企業も多いと聞いています︒
メーションの
デジタル化+ 現場力で ものづくりに強さを
ではデジタル化だけで製造現場の効率化を実現
づくり」
できるかといえば︑そうとはまだまだ言い切れな
け
Vol.72
2
- ▲TOP
- ページ: 3
- トランスフォー 仕掛
ものづく りの トラン
デジタルと
「もの
いことも確かです︒ものづくりの現場は数多くの
パラメーターに左右されます︒コントロール不可
能な環境要因にも影響されてしまいます︒その中
で最適な解を求めるためには︑長い間に培われて
きた多角的な視点による問題解決能力が必要であ
り︑それが現場力と言われるものです︒状況を分
析して予測を立てる洞察力︑設備や作業の改善に
( AI/IoT/ロボット)
生産性向上
向けて自律的にアイデアを生み出す創造力︑長期
的な視点でスキル人材を育てていく姿勢︑それら
を継続した組織力として残していくマネジメント
など︑現場力を磨きあげ︑組織の一人ひとりが成
業界 ・ サプライチェーンの 構造変革
長を感じられる魅力ある職場をつくり上げること
データ駆動型 マネジメント
が︑ものづくりの強さにもつながっているはずで
す︒
本号に登場する生産現場における仕掛けやプロ
デジタルな領域
D I G I T A L
D
グラムは︑日本のものづくりが生き残るための︑
デジタル技術とリアルな人的リソースの融合を表
L
した好事例を選んでいます︒デジタルなものづく
りの基盤となる︑人のリアルな活動についてあら
E
ためて考えてみる機会となれば幸いです︒
ビジネスモデルの 転換
I
また日本の生産現場は︑すでにさまざまな雇用
スマート ファクトリー化
形態からなる︑さまざまな働く価値観を持つ人た
F
ちで構成されたダイバーシティが実現されている
職場です︒ただ︑このような組織が現場力を発揮
するためには︑ものづくりに対する価値観だけは
一つにする必要があります︒これまでのビジョン
デジタル トランス フォーメーション
や行動指針を超えて︑今後は一歩踏み込んだ︑も
のづくり企業としての ﹁ 存在意義 ︵パーパス︶ ﹂ が
その役割を果たすと言われています︒SDGsに
代表される︑経済と社会との対立構造を超えるこ
せん︒あわせて考えていただきたいと思います︒
文責・編集部
Key n ote
テクノロジーの変化
3
Business Insights Vol.72
とによる﹁ 共感 ﹂にそのヒントがあるかもしれま
- ▲TOP
- ページ: 4
- S U N TO RY
Mon oz u ku r i
ものづくりを支える スキルを高める仕掛け
何のためにTPMを行うか。 その目的が 「人材育成である」 と はっきりと定めているサントリー。 迅速なスキルアップが 行われるその舞台裏はどうなっているのだろうか。
Insights
S U N T O R Y
[ 標準タイプ ]
Monozukuri
01
サントリーホールディングス株式会社
1899 年、大阪で鳥井商店創業。現在は酒 類、飲料、健康食品などに加え、文化・芸 術事業にも注力。連結売上収益 (酒税込み) プ会社 299 社、従業 2 兆 5,173 億円、グルー (いずれも 2018 年 12 月現在) 員数 39,466 人
Vol.72
4
- ▲TOP
- ページ: 5
- ものづくりは 人づくり
的な立場の人たちに設 備面での技術を教える のが目的でした︒当時 は生産現場の人に対し て設備に関することを 教えるシステムがなか っ た ん で す︒す る と︑ スキルにばらつきがで る︒そ の 差 は 生 産 性︑
こそ、サントリーが後世に伝
えていくもっとも大切な言
全従業員の志であるこの言葉
創 業 者︑鳥 井 信 治 郎 氏 の 口 癖 に
持続的にキャッシュを生み出す
﹁なんでもやってみなはれ︑やらな わからしまへんで ﹂という言葉があ
技 術力のブラッシュアップなどが課 題だが、いずれも 人づくり ありきである。
現場力を強化する
った︒この言葉に秘められていたの は︑価値ある商品をつくり出すため に︑積極果敢に挑戦し続けよ︑とい うことだ︒そしてこの言葉はサント リーの企業理念となり︑ものづくり の根幹ともなっている︒ 京都府長岡京に︑ ︿ 天然水のビー ル工場 ﹀ 京都ブルワリーがある︒ ザ ・ プレミアム・モルツの生産拠点だ︒ この広大な敷地の一角に﹁ものづく りスキル・ナレッジセンター﹂が完 成したのは2015 年︒人材育成 に 特 化 し た セ ン タ ー で︑現 在 で は
品質向上を追求し続けるための現場力強化 、そして時代の変化を見据えた
創業当初から変わらぬミッションである顧客満足に加えて、
効率に現れてきます︒大阪工場と時
た︒また︑洋酒工場やビール工場な
を同じくして︑武蔵野︑利根川︑京
ど︑保全方法に違いがあるものの︑
課題 ・ ミ ッショ ン
都 の 各 ビ ー ル 工 場 で も︑そ れ ぞ れ
原理原則や不具合の解析手法など︑
〝メンテナンススクール〟という名
共通のスキルもあります︒それらを
前をつけてローカルで人材教育の学
統合して体系立てて人づくりをする
校のようなことを始めました ﹂と話 ジセンター所長の石垣政昭さん︒
ことになり︑全工場の従業員が学べ
すのは︑ものづくりスキル・ナレッ
る場所として︑このセンターをつく
お客様の期待を超える価値を生み出す
りました︒今では年間約1500
なぜこのタイミングで始まったの
名がここで研修を受けています ﹂
次世代の技術を開発する
121の研修を実施している︒
﹁ 人材育成プログラムのスタート は︑1990 年︑大阪工場の倉庫
か︒それは︑ 各工場で
︵ Total
T P M
Productive Maintenance 全員参
の導入がスタートしたからだ︒
加の生産保全 ・ 全員参加の生産経営︶
ものづくりの根 幹 と なる 全 従 業 員への指 針
サントリーには﹁ものづくり行動
﹁それまでは︑設備保全は専門家の
指針 ﹂が定められている︒これは︑
ものづくり行動指針
やってみなはれ! やってみなわかりまへん
担当でした︒保全担当が設備をチェ
鳥井信吾副会長︵ 当時は副社長 ︶ が
ックし︑オペレーターが動かしてい
年に定めたもので︑上に
ましたが︑TPM を始めると現場
お客様主義
プロの矜持
のオペレーターが設備のメンテナン
鳥瞰考動
絆と連携
スも行うようになります︒つまり︑
自主保全ですね︒設備を動かしなが
2 4 3 5 1
2 0 0 8
項目を紹介する︒鳥井氏はかつての
インタビューで﹁ものづくりには︑
こうした志や行動の仕方が何より大
切︒ ﹃ものづくり行動指針 ﹄はグル
葉。写真はセンター外観。
TPM を 確 実に回 す た め 生み出した 教 育 システム
を活用して︑リーダー
K E Y WO RD 1
らメンテナンスを行うので︑このほ
ープの社員全員が考えたり︑行動し
うが断然効率がよく︑TPM を確
たりするヒントのあり方を示したも
実に遂行していけるようになりまし
C ase 0 1
のです ﹂と答えている︒また︑セン
5
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 6
- Mon oz u ku r i
ターの立ち上げにも尽力し︑ ﹁ 学ぶ ことは無限にある︒それだけ変われ る チ ャ ン ス ﹂と 教 育 の 重 要 性 に つ い て も 語 っ て い る︵ M-Bridge 月号 ︶ ︒
るとも言えます︒人材 教育の観点からしても
り、教える側の成長も期待さ
現場経験者の先輩が講師にな
れる。サイクルを回し、全員
講師は 誰?
K E Y WO RD 2
TPM は 非 常 に い い
ツールだと思います ﹂ 現在︑研修メニュー は1 2 1 に ま で 増 え た︒TPM関連だけで はない︒たとえば﹁ 原 因究明のための合理的 思考方法 ﹂ ﹁ 生産現場
のスキルを上げる。
実践
づくりは人づくり ﹂というメッセー ジが掲げられている︒これも鳥井信 吾副会長の直筆の書だ︒生産工場に おいて︑人づくりは不可欠であると いうサントリーの経営哲学である︒
現場では滅多に体験できない不具合など経験し、対応能力を身につける。右は組み立て工程などを学ぶ研修
のエクセル ︵ 業務効率化 ︶ ﹂ ﹁ものづ
ルも高い研修の講師陣はどうしてい
人 事 制 度 と 紐づいた スキルマネ ジメント
センターでの研修は︑TPM の 内容とかなりリンクした内容になっ ている︒ ﹁たとえば︑ TPMが導入されると︑ 設備を見る目が能動的になってきま す︒するともっと知りたいことや︑ 工夫したいことも出てくる︒設備保 全はもちろん︑コスト改善手法もそ うですし︑指標に関する研修も入っ てきます︒これらの研修を行うこと で︑全員が同じレベルまで︑早く到 達するのです︒オペレーションを行 いながら品質や生産性を上げていく には︑一定の研修を揃えたほうが︑ 全員が同じようにスキルが上がって いきます︒そういう意味では︑教育 の目的の一つは︑TPM 推進のた
くりマネジメント実践 ﹂など多岐に
るのだろうか︒
わたり︑きめ細かなコースが用意さ
﹁センターのメンバーが講師を行う
れている︒特徴的なのは︑実施され るという点だ︒
のは当たり前ですが︑工場メンバー
る研修は︑人事考課と結びついてい
で研修を受けた人に何年かあとにあ
S U N TO RY
えて講師を依頼して︑後輩たちに教
﹁ 当社では︑人事階級ごとに遂行す
えてもらっています︒こうすること
べきスキルが定められています︒た
でメンバーは ﹃ 研修で教わる ﹄ ↓ ﹃現
﹃ T1ド とえば入社 年目くらいで
場で実践 ﹄ ↓﹃ 研修講師となり自分
4
ライブスキル研修 ﹄があり︑品質管
が教える ﹄という つのサイクルを
理スキルは必須になり︑ベテランの
回してスキルを確実に身に付けま
課長クラスになると ﹃ T5ドライブ
す︒さらに自分の言葉で教えること
スキル研修 ﹄があり︑マネジメント
で︑自らの考えや経験をおりまぜた
スキルや専門性も問われます︒それ
製造現場に則した講義を行うことが
ぞれの階級にミッションがあり︑ス
できます︒また教える︑育てるとい
キルが昇格の基準となっています︒
う大切さも実感させる︒このサイク
また︑TPM が求める人材像とい 度の中に盛り込まれています ﹂
ルが工場で人が育ちTPM もきち
うものがありますが︑それも資格制
んと遂行されるという現場力につな
がるのです ﹂
研修メニューは︑TPM に関す
ちなみに︑ サントリーの各工場は︑
る項目と資格体系を掛け合わせた
1994 年からほぼ毎年︑TPM TPM を使って人づくりをしてい
め と も 言 え ま す ね︒ 逆 も あ り︑ 〝 神業的なマトリックス〟になって
に関する賞を受賞するという快挙を
いる︒では︑これだけ完成度もレベ
成し遂げている︒
3
教わって
﹁もの センターのエントランスには
教える
2 0 0 9 3
Vol.72
6
- ▲TOP
- ページ: 7
- 121コースの 研修
応募型研修、資格階層型研 現場のニーズに合わせた「応 募型」 研修が多い。 修、選抜型研修の 3 種あり、
現 場 力 を 格 段に上 げる 仕 掛 けの数々
ようなやり方でで 思います︒しかし こういった現場さ ながらの模擬ライ ンでの研修は︑や はりここでしかで きませんし︑何よ り他工場の仲間と 一緒に研修を受けるのは大きな刺激 になります︒お互いのやり方を確認 したり︑ 新たな気づきが生まれたり︒ そういう意味でも︑ものづくりは人 づくりなのだと実感しますね ﹂ さらに︑毎年 月には﹁ものづく
K E Y WO RD 3
ん︑テレビ会議の きる研修もあると
センター内には模擬ラインなどが 用意され︑現場ではあまり起こり得 ないトラブルなどを体験できるよう になっている︒また︑いくつかの条 件を変え︑問題がどこにあるかを検 証したり︑現場力が格段に上がって いく仕組みも用意されている︒ ﹁ 実は︑効率化という観点から︑研 修を遠隔からできないか︑という議 論もあります︒全国からわざわざ人 を集めて研修を行うのは予算も含め て検討の余地はないのかと︒もちろ
が倍増し︑従業員のスキルアップを
同時に行わなければならない︒さら
にI oTの導入もはじまり︑新たな
教育体系の確立は急務だ︒一方で︑
ものづくりの現場が先端技術に向か
えば向かうほど︑サントリーのもの
りウィーク﹂ が実施される︒これは︑ 行動指針と志について全部署で話し 合い︑全員がそのことについて考え る機会︒チームで話した内容を展開 したり︑ ﹁ものづくり行動指針大賞 ﹂ を選考して表彰しているという︒ ﹁ベクトルを合わせ︑全員がひとつ にまとまり︑力を結集する感じです
サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社 ものづくりスキル ・ ナレッジセンター所長
づくり技術のベース︑DNA の伝 承が不可欠になる︑と石垣さん︒
﹁これから生産現場の設備や人の在
り方も変わっていくでしょう︒しか
し︑時代が変化するときこそ︑もの
ものづく りスキル・ナレッジセンターのある京都ブルワリー
2
っかりと学んでおくべきです︒それ ね︒も の づ く り 行 動 指 針 が で き た
がお客様への約束であり︑期待に応
え続けることでもあります︒ものづ
「人事制度との結びつき」 でスキルアップの仕組みをつくり、
プログラムです。その実践は、学びあう、教えあう場づくり
TPM とは、ものづくりの中でロスをなくし、人を成長させる
であり、人づくりにつながります。この TPM の特徴を活かせ
るかどうかがカギです。サントリーさんは、 「講師の確保」 や
づくりの基本︑ベースのスキルをし
「ものづくりは人づくり」 を実践するために
時 代に合 わせた 変 化 と 基 本に立 ち 返ること
なのです ﹂
石垣政昭 さん
2021 年春には︑長野県大町 120 年前に赤玉ポートワイン の製造から始まったサントリーも︑ 今や多岐にわたるビジネスを展開し ている︒商品数が増えれば作業工程
JMAC 顧問
市に ﹁サントリー天然水 北アルプス
マスター TPM コンサルタント 和泉 高雄
そのミッションを担う︑重要な拠点
C O N S U LTA N T V I E W
2008年から続いています ﹂
くりスキル・ナレッジセンターは︑
「ものづくりは人づくり」 を実践しています。
信濃の森工場 ﹂が完成し︑稼働が始 ートを切るはずだ︒
まる予定︒最高レベルの人材でスタ
C ase 0 1
7
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 8
- S AG A E L ECT RO N I C S
Mon oz u ku r i
Insights
SAGA ELECTRONICS
Monozukuri
02
佐賀エレクトロニックス株式会社
1965 年創立。新日本無線株式会社の半導 体アセンブリーメーカーとして設立され、IC 製品の組立 ・ 試験を主に展開。売上高 65 億 ( 2018 年 12 月期) 、従業員数 509 名 (派遣、 請負、新日本無線駐在組織含)
ダントツ工場に挑戦する 全員参加のものづく り活動
売り上げダウンにリストラ……。 再起不能かと思われた佐賀製作所は、 今や業界関係者の工場見学が後を絶たない 「ダントツ工場」 になりつつある。 何が行われていたのか。 3 年で生まれ変わったものづくりの現場で、
8
Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 9
- クロスチ ェ ッ ク 判定
けなかったそうだ︒ ﹁もう一度 5 ︵ 整理 ・
5S の進捗は、部署ごとにク
ロスチェック。点数化してモ
チベーションにつなげる手法
一人前の工場からダントツ工場へ
また、半導体 製造 現場の根幹である設備管理への意識を高め、全設備の OEE※ 80% 達 成へ。
えば日本が世界のトップを走り︑技 術力︑製造能力︑シェアなど半導体 業界にとっては興隆を極めた時代だ った︒佐賀エレクトロニックスも同
従業員のモチベーションを高め、継 続していく仕組みづくりとは。
から︑ と考えましたが︑
全員参加による改善活動
「 現場をきれいにすることがゴールではない 」 と掲げ、将来を見据えた 5S 活動に着手。
5 といっても響かな
い︒ものづくりの現場 では当たり前の基礎で すが︑それすらできて いませんでした︒それ
様︒製作所では主に半導体の﹁ 後工 程 ﹂を専門に行い︑工場の増設を重
※ OEE (Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)
S
ねるなど︑業績は右肩上がり︒とこ ろがリーマンショック後︑業績は悪 化︒2012 年には約600 人い た従業員を200 人近くまで縮小 し︑売り上げも年間億単位のペース で落ちていった︒ 現在の林社長が現職に就任したの は︑そんな状況が続く2015年︒ 工場内は人がおらず︑設備もまとも に動かない︒誰もが疲弊し︑先が見 えないような状況だったという︒今 は見違えるような現場に生まれ変わ ったが︑当時はお客さまからもポジ
は︑従業員のモチベーションが上が
らないからでもありました︒実は︑
課題 ・ ミ ッショ ン
2015 年にわずかですが黒字化
5S
1980 年代中頃の半導体とい
整頓・清掃・清潔・躾 ︶
域との共生 ﹂ ︑そして﹁ 社会貢献 ﹂ ︒
それを実現するために﹁ 土台︵ =前
提条件 ︶ ﹂ ﹁
階 ︵ =一人前の工場 ︶ ﹂
しました︒ 親会社の業務だけでなく︑ ﹁
階︵ =ダントツ工場 ︶ ﹂と分け︑
他社の受託生産も始めることにな
それを下からしっかりと積み上げて
り︑ ﹃ 改善活動をするなら今しかな
いくイメージだった︒
い!﹄ と︑2016年から第一製造 トさせました ﹂ ︵ 林さん ︶
﹁ 土台は5 が当たり前に浸透して
2
市場の変化に対応できるものづく り
部が中心となり︑改善活動をスター
いる状態︒そして整った人事制度と
5Sが仕組みになり、文化になる
従業員の意識の向上︒これができな
実は︑林社長はすでに頭の中にダ
ければ︑ 階も 階もつくれません︒
1
S
1
ントツ工場に向けたステップの構想
実現するために︑ものづくりの将来
や﹁お客さまの満足 ﹂ ﹁ 取引先や地
JMAC にコンサルティングをお
lity、Cost、Delivery に加え、
Safety と Sales を追加。働く
企業価値向上を目指し、Qua
人や工場そのものが商品に。
Safety
Sales
KEY WORD 1
D
&
C
C ase 02
Q
S
S
代表取締役社長
林 力 さん
があった︒ ゴールは ﹁ 従業員の幸せ ﹂
を見据えた5
S
2
活動を行うために︑
はアナログだが効果がある。
S
﹁ 目的に合った ﹂ こそ 本当に取り組むべきこと
5 S
ティブな言葉はいただ
K E Y WO RD 2
- ▲TOP
- ページ: 10
- Mon oz u ku r i
願いしました ﹂ ︵同︶ 林社長に響いたのは︑JMAC ﹁ 私たちの工場で問題になるのは ﹃ 異物 ﹄です︒それも μ m の塵︒ なぜ5 を行うのか︒それは塵を排 の藤井が提唱する﹁ 考える5 ﹂ と
ょう ﹂ という5 とは別ものだ︒
S
10
S
5
﹂ のことである︒単に﹁ 整理整 除するためです︒これが目的に合致 した5 です︒なぜ発塵するか︑な ぜ持ち込まれてしまうのか︒これを
落下塵対策に気流のコン トロールを導入。各ブースの上にクリーンユニッ トを設置し、ダウンフローによる陽圧を実現
頓をしましょう︑ものを減らしまし 徹底的に究明し︑改善しました︒何 のために整理整頓するのか︑なぜ清 掃が必要なのか︑目的が明確だと行 動も明確になります︒これが〝 継続 していく仕掛け 〟 なんですね ﹂ ︵同︶ しかし︑目的が明確でも﹁ 全員参 加 ﹂で推進していくのはやはり難し い︒そこで︑第一製造部 製造技術 課の深町さんをリーダーに︑事務局 を設置︒ここでも︑ ﹁ 考える5 推進の策が練られた︒ ﹂
ん︒ルールが根づかないのは︑仕組
練っても︑微細な塵は出現する︒と
みになっていないからです︒そこで︑
ことん追求していることを︑ぜひ見
シーズンごとにリーダーを替える方
ていただきたい ﹂ ︵同︶
S AG A E L ECT RO N I C S
法をとりました︒成功する人も失敗
実はこの﹁ 考える5
﹂ は︑技術
する人もいますが︑苦労をした人は︑
と照らし合わせて行わないと成功し
次のリーダーを必ず助けます︒その
ない︒残すもの︑処分するものを判
人材を︑ 人ずつ増やしていきまし
断するのも技術への深い理解がなけ
S
た︒リーダーは自分で咀嚼し︑自分
1
ればできない︒指定席管理にも技術
全員がリーダーになり 自分の言葉で語る
﹁ 全員参加型の意識改革というプロ ジェクトは︑なかなか難しいとは思 ったのですが︑社長に﹃ 好きなよう にやっていい ﹄と言われ︑信頼をし ていただいたのはうれしかったで す︒好きにしていいという押し付け ではないやり方に︑みんなもついて きてくれたという面もあります︒ もともと﹃ 当事者意識が足りな い ﹄というのが課題でした︒リーダ ーが替わったら改善したものが元に 戻ってしまうのでは意味がありませ
の言葉で伝えなければなりません︒ っていきました ﹂ ︵ 深町さん ︶
のノウハウがあってこそ︒この5
S
これを繰り返すことで︑仕組みにな
活動を繰り返すことで︑全員の技術
への理解が深まったことが︑企業価
工場の廊下は見事というしかな 化され︑リーダーはわ かりやすい資料を作 成︒それを全員でシェ アする︒工場見学に来 るお客さまにもそれは 開示され︑改善プロジ ェクトの進捗状況もわ かるようになっている︒ ﹁ 廊下にはゴミまで展 示しています︒対策を
値向上へとつながっている︒
い︒改善の取り組みはすべて見える
﹁この活動で︑埋もれていた人材や
クリーンルームを清掃した掃
示。ダスト量と成分分析の結
除機の 1 週間分のダストを展
敵は 落下塵!
KE Y WORD 3
果を全員で共有。
S
深町 憲宏 さん
いう手法︒つまり﹁ 目的に合致した
第一製造部 製造技術課 課長
S
S
S
Vol.72
10
- ▲TOP
- ページ: 11
- 意外な才能があらわになることがあ ります︒社員の実力を垣間見る機会 にもなり︑たいへん価値ある取り組 みになりました ﹂ ︵同︶ ら︑誇りをもって自分の仕事に邁進 してほしいと伝えました ﹂ ︵ 林さん ︶ このステップで採用されたのが藤 井の﹁ 既知・曖昧・未知 ﹂ というメ カニズム分析︒ ﹁ 既知というのは︑原因がわかって いるけど着手できていないエラー︒ 曖昧とは︑なんとなく原因がわかっ ているけど検証ができていないも の︒この つは点検の強化で改善で きます︒未知は何が原因かさっぱり わからないものです︒これは個別改 善が必要になります︒設備トラブル を減らすために︑この 層に分けて 考えるという手法を導入しました︒ これは私たちには今までにない発想 で︑大学の研究室で行うアプローチ だそうです︒仮説を立てて調査・検 証し︑仮設のための分析をして︑技 術的に一つひとつつぶしていきま 違和感を感じられるのは人ですか があります︒色や匂い︑手の感覚の
備管理者やオペレーターの﹃ 感度 ﹄
あとはそこに向かう方法を否定せず
に愚直にやってみる︒これが私たち
の行った活動です ﹂ ︵ 深町さん ︶
現在の工場には︑自動車︑関連部
いよいよダントツ工場へ 年目の設備管理
廊下に活動の成果をすべて見える化
品の担当者が毎週のように訪れる︒
2
かつてはほめられることが少なかっ
たというが︑今は工場を見て︑受注
考える5 活動は︑ 年で定着し
が決まるほど︒営業担当も︑積極的
S
1
た︒次の年からは社長の構想にあっ た次のステップ︑つまりダントツ工 場に向けた取り組みが始まった︒ ﹁ 半導体は︑ ほぼ機械がつくります︒ 設備こそが品質向上の鍵︒ですから 私は︑ 設備管理に関わるチームには︑ 彼らの存在の重要性を説き︑プライ ドをもってほしいと伝えてきまし た︒設備管理こそ︑私たちの企業価 値を上げる根幹です︒そこには︑設
にお客さまを工場案内するという︒
﹁お客さまから工場をほめられるの
は︑うれしいですね︒現在︑生産の
主力はタイですが︑マザー工場とし
て︑われわれにしかつくれない部品
2
す︒これは〝ノウハウの手の内化 〟
が受注できています ﹂ ︵ 林さん ︶
になり︑技術的探究のやりがいにも
劇的な変化の裏舞台は︑ ﹁ 愚直に︑
つながっています︒将来的には︑既
地道に︑徹底的にやる ﹂という熱意
知の領域を %まで押し上げること
70
に支えられている︒
3
を目標にしています ﹂ ︵ 田中さん ︶
愚直な活動で現場が成長 工場そのものが商品に
3
現場の改善活動には、合理的アプローチが必要です。たとえ
ば、5S でも後戻りしないようにステップを分けたり、 「なぜ
それをやるのか」 を全員で考えて共有する仕組みです。今回
は、小さな成功体験を積み重ねつつ、社長方 の「考える 5S」
要因として︑全員参加としたことと︑
掛けが大きかった︒
既知 ・ 曖昧 ・ 未知
%、未知が 33%と大幅削減。
%、未知 56%だったものが、
2 年後には既知 51%、曖昧 16
2017 年には既知 40%、曖昧 4
なく︑ほめたりほ
第一製造部 IC設備課 課長
田中 稔彦 さん
められたりという
場があれば︑誰で
がダントツ工場の礎となっています。
KE Y WORD 4
も特別なことでは
JMAC 生産コンサルティング事業本部 シニア・コンサルタント
C O N S U LTA N T V I E W
﹁ 仕掛けといって
愚直な取り組みでダントツ工場へ
達成感を感じる仕
針の実現に向けた活動となりました。 「愚直に取り組む」 文化
たった 年で劇的な変化を遂げた
藤井 広行
もうれしくなりま
すよね︒目標さえ
わ か っ て い れ ば︑
C ase 02
11
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 12
- Ko n i c a M i n olta Tec h n op rod u c ts
Mon oz u ku r i
TPM推進に生かす デジタル化成功の鍵
TPMで取り組むロス防止にうまくIoTやデジタルツールを活用している コニカミノルタテク ノプロダクト。 ポイントは 「デジタルとアナログの融合にある」 という同社の取り組みとは。
Insights
Konica Minolta Technoproducts
Monozukuri
03
コニカミノルタテク ノプロダク ト株式会社
コニカミノルタ 100%出資で、 1959 年設立、 同グループ、ヘルスケア事業部部門の医療 機器生産を手掛ける。現在の主な製品はデ ジタル X 線画像診断システムや超音波画像 診断装置。
【写真下】 後列左:増茂信明さん (生産技術部第 3 技術グループ 担当係長) 、後列中央:山田照 男さん (同グループ) 、後列右: 今泉康司さん (同グルー プ グルー プリーダー) 、前列左:本田哲さ ん (取締役 生産技術部長) 、前 列右:長谷川政美さん (経営企 画室担当課長)
Vol.72
12
- ▲TOP
- ページ: 13
- T P M
経営ビジョンとして掲げる 『 「 稼ぐ会 社!」 ヘルスケア製品の世界 No.1生 産工場になる!』 を実現させるには、
ムダを省いて新しい価値を創造する
︵ Total Productive Main-
ルを効果的に導入してきた︒コニカ
産現場に対する情報やサービス機能
「あるべき自動化 」 を推進する
tenance 全員参加の生産保全・全
員参加の生産経営 ︶は利益を妨げる
従業員一人ひとりが創造力を発揮し、いきいきと働ける職場環 境が必 要である。
T P M
ミノルタグループ全体でこれまでア
の充実を通し︑経営体質の強化につ
ナログで行っていた部分をデジタル
なげることを目指す方向とした︒経
あらゆるロスを排除し︑ロスを未然 防止する仕組みづくりに全社を挙げ
働き方改革を推進するためにも、 T PM によるロス削減は不 可欠だ。
化し︑生産性改善につなげる﹁デジ
営企画室担当課長の長谷川政美さん
タルマニュファクチャリング﹂を推
は ﹁ 管理・間接部門の
て取り組む活動※だ︒このような生 産システムの効率化に取り組むうえ で︑Io T化やデジタルツールの導 入は工数の削減やロスの﹁ 見える 化 ﹂などに大きく寄与する︒多大な コストをかけなくても利用できるデ ジタルツールの選択肢は広がってお り︑ などの改善活動にどう
進していることが背景にある︒しか
組む価値が高く︑会社の利益に大き
し︑コニカミノルタテクノプロダク ﹁
く貢献できると考えていました ﹂と
に拘り︑活き活きと働く人
課題 ・ ミ ッショ ン
財・個が輝く職場 ﹂の実現であり︑ 決して ありきではない︒
医療機器のデジタル化が加速し︑ 管 理・ 間 接 部 門 の
I o T
RPA 導入成功の鍵は 事前の ﹁ 巻紙分析 ﹂
で取り
生産体制も従来の人組み立て型から
組んだ一つの具体例が﹁ 巻紙分析 ﹂
取り入れられるのか︑検討している 企業も多いだろう︒ では デジタル化を﹁ 推進ありき ﹂ なく︑課題に対してどう活用するの か︑目的意識をしっかり持つことが 重 要 だ︒ そ れ は の進捗を大
設 備 型 へ 移 行 す る 中︑
年
だ︒総務人事や経理など業務部門単
は キ ッ ク オ フ し た︒ ロ ス を
位でサークルをつくり︑業務内容や
徹底的にエネルギーロスを減らす
業務工数を棚卸し・分析する
未然に防止する仕組みと全員が参加
工数を細かく書き出し︑帳票類の現
しやすい組織・環境をつくることを
物や業務担当者以外の人のコメント
目的に︑全社を挙げて展開︒生産現
などを大判の模造紙に整理してい
場だけではなく︑管理・間接部門に
く︒そうすると︑メンバー間でも共
きく左右するポイントとなる︒ ﹁ ロスを削減して捻出 した時間を︑新しい価 値を創造する業務に使
おいても同時進行で
を推進
有できていなかった事項や無駄な作
業が ﹁ 見える化 ﹂ され︑
削減すべきロスやワー
一見すると地味な作業だが、 このアナログ的手法があった
クフローが明確になっ いたい︒デジタルツー
KEY WORD 1
からこそデジタルツールの導
巻紙分析で 工数削減
ていった︒ てくれるパートナーと いう位置づけです ﹂ ︑ そう話すのはコニカミ ノルタテクノプロダク ト取締役生産技術部長
入がうまく進んだ。
ルはロス削減を手伝っ
一方︑コニカミノル
タ グ ル ー プ で は
年︑働き方改
2 0 1 7
革の手段の一つとし
て︑
︵ Robotic
Process Automat-
C ase 03
13
Business Insights Vol.72
R P A
※同社では全社活動の Managment に TPM を位置付けており、 「Total Production Management」 としている。
トが目指すのは経営方針に掲げる
話す︒
N o. 1
T P M
T P M
T P M
T P M
2 0 1 3
T P M
T P M
T P M
利益に貢献する 管理 ・ 間接部門のTPM
の本田哲さんだ︒
し︑全員で会社を変えていこうとい
同社は〝 人づくり 〟 の一環として
う機運を高めていった︒
に 取 り 組 み︑ デ ジ タ ル ツ ー
管 理・ 間 接 部 門 の
は︑ 生
は取り
- ▲TOP
- ページ: 14
- Mon oz u ku r i
経理部門での TPM につい て語る管理部経理グルー プ の大島柔恵さん
ion︶を活用することが方針として
ではなく︑目的意識を持った﹁ある べき自動化 ﹂として を活用す た︒ 打ち出された︒ ﹁ 個人の経験に頼り
業務の標準化も進み︑担 当者でなくても対応可能 になるという効果もあっ さらに経理部門の﹁あ るべき姿 ﹂に掲げた分析 業務に注力するため︑デ ータ分析やビジュアル化 作業が簡単・スピーディ ーに行える ︵ ビジネ スインテリジェンス︶ ツ ︵タブロ ー ル﹁ Tableau ー︶ ﹂を 導 入︒ 製 造 原 価 の多角的な﹁ 見える化 ﹂
すぎる〝 依存リスク〟から脱し︑付 加価値が低いのに時間ばかりかかっ での地道な巻紙分析があっ 導入で生産性改 ている業務を変革すること︒そして 新たに創出できる時間を本来やるべ き業務にあてることが︑ の基本的な考え方でした ﹂ ︵ 本田さ ん︶ このとき︑コニカミノルタテクノ プロダクトでは で﹁ムダ取りすべきワークフロー﹂
Ko n i c a M i n olta Tec h n op rod u c ts
る 方 向 性 を 定 め る こ と が で き た︒
T P M
たからこそ︑ 善に大きな花を咲かせられたと社員 の多くが実感しているのだという︒ 具体的に経理グループの例で見て いこう︒まず経理業務の﹁あるべき 姿 ﹂として︑ ﹁データ作成に時間を 取られない ﹂ ﹁ 必要な情報は関係者 に自動的に共有されている ﹂ ﹁ 本来 経理が行うべき分析業務に注力でき ている ﹂の つを設定︒業務工数の
導入
R P A
R P A
R P A
の巻紙分析
が事前に見えていたことが功を奏し た︒ ﹁ 進んでいくデジタル化の波と︑ 巻紙分析のアナログ的な活動がうま くマッチングしたことで︑非常に意 味のある結果を出せるようになりま した ﹂ ︵同︶ また 導入の社内トレーニン
T P M
3
棚卸しをしたところ︑ ﹁
︵ Str
が可能になったため︑各
ategic Business Unit / 戦 略 的 事
業単位 ︶別損益一覧表 ﹂作成業務に もっとも時間を費やしていることが 判明した︒ 課題を発見︒そのうえで︑ 人の判断 ・ 確認が必要な業務は何か︑ を 導入して軽減できる作業は何かを検 討していった︒ その結果︑月 時間を 要していた業務は 時間
S B U
部門で行われていたグラ フ作成の作業がなくな り︑データの共有が迅速 かつ容易になった︒この ことでも毎月 時間︑年 間 時間の業務時間削減 が実現できている︒
グ や 研 修 を 行 う だ け で は な く︑ そのため業務フローを再確認して をどう使うのか︑部門ごとに
R P A
メンバーが自ら検討︑決定するなど 自律的に推進︒ 結果︑﹁単なる自動化﹂
R P A
用量をリアルタイムに見える
「Tableau」 で電力使 BI ツール
化。これまで見逃していたロ
IoTの活用で ロスを 見える化
となり︑年間では 時間
スが明らかになった。
84 1
省エネ対策でもデジタルツールの を削減することができ た︒このことで資料提供 の迅速化が可能になり︑ 分析などほかの価値ある 業務に時間を費やせるよ うになったという︒また
ル︵センサー︶を設置し︑データを
導入が功を奏した︒コニカミノルタ
収集して運転状況を把握︒収集した
KE Y WORD 2
テクノプロダクトは以前から省エネ
データをここでも﹁ Tableau﹂を使
設備導入や︑休日の生産ライン停止
って可視化し︑ムダはないか分析す
など一般的な省エネ施策に取り組ん まり感があったという︒
ることとした︒
できたが︑近年は効果が見えず手詰
すると︑今までわからなかった生
産工程の消費電力や省エネ効果がリ
そこで新たな手法として︑クリー
アルタイムに把握可能に︒たとえば
I o T
8
省エネ対策の 手詰まり感を打破
48
R P A
4
B I
ンルームや空調機などに
ツー
Vol.72
14
- ▲TOP
- ページ: 15
- クリーンルーム内では冬季であって ある ﹂として省エネ推進強化だけで はなく︑社員のモチベーションにも つながった︒ している︒ も冷房運転や除湿が行われているこ とがわかり︑このムダを省く対策を 打つことができた︒省エネ対策はす べてやり尽くした︑と思われていた のにもかかわらず︑クリーンルーム の空調電力は約 %も削減︒客観的 年度の経営方針は︑デジ な実測データによって﹁ 思い込み ﹂ があったことが明らかになったの だ︒ など による﹁ 生産技術力強化 ﹂ ︑ タルマニュファクチャリングの推進 ツールの徹底活用による
揮︶ ︑行動︑定着を目指 一方︑労働生産性を向 上させていくためには︑ 従業員一人ひとりが変化 に追従し︑成果を発揮し 続けることが重要だ︒そ のためには会社として教 育を提供するだけでな く︑自己投資を惜しまず
し、課題解決に挑戦。プロセ
個々の「No.1 (強み) 」 を生か
ス改善の成果は社内外の発表
oT で TPM とI ﹁ 人財力強化 ﹂ を推進
2 0 1 9
I T
R P A
大幅な効果が得られた結果︑ ﹁ま だまだ省エネ対策を打てるところが ﹁
﹁ 間 接 業 務 の 効 率 化 ﹂ に 加 え︑ づくり ﹂の推進による﹁ 人 財力強化 ﹂ を掲げている︒ ﹁ とは社員一人ひとりの強み のこと︒強みなんてない︑という謙 虚な人もいますが︑自分の強みを つ組み合わせてできる でも
自ら変革にチャレンジする人を後押
受けていることがA 社員のモチベ
ししていく観点を大事にしている︒
ーションアップにつながっている︒
N o. 1
具体的には︑一般職と管理職を対象
一方︑ 生産活動を続けている限り︑
に自己啓発支援制度を創設し︑講習 うになった︒
ロス対策に終わりはない︒コニカミ
N o. 1
会費などの大半を会社が補助するよ
ノルタテクノプロダクトはこれから
も︑
を通じて課題解決に取
﹁ 自分は何で
を 目 指 し︑ ど
り組み続けていく︒
N o. 1
クリーンルームの電力使用状況を分析することで一層の省エネ化を実現した
いいんです︒その強みは課題を解決 することで価値を生み︑コニカミノ ルタの経営理念〝 新しい価値の創 造〟 にも通じます ﹂ ︵ 長谷川さん ︶ とはいえ︑会社が目指す姿を全社 員に理解・定着させるのは早急に成 し遂げられるものではない︒そこで 同社では︑ に ﹁ 年から 年ごと
のような人となるのか︑各自が自己
宣言を行い︑そのためにそれぞれが ま す︒個 の 集 結 が
自己啓発していく土壌をつくってい るのです ﹂ ︵ 長谷川さん ︶
N o. 1
を実現す
N o. 1
T P M
3
ばなりません。この点をふまえ、生産現場はもちろん管理・
費用対効果の大きいデジタルツールが増えましたが、導入あ
会で評価を受けている。
30
No.1の 宣言
K E Y WO RD 3
りきではなく、目的達成のためにどう使うかを精査しなけれ
間接部門のロスを削減し、高価値で創造的な業務への人材配
置、業務標準化による生産体制安定化などを実現させたコニ
年は時間単位の有給休
加も図っており︑働き方改革も着実
ロードマップを立てた︒ を認知段階として︑ 現化するために ﹁
年
休日が従来の
日から
しい価値の創造という経営理念を具 に拘る ﹂ こ
これらの﹁ 人財力強化 ﹂ を可能に
鐘ヶ江 克則
したのは︑まさにTPMに取り組ん
チーフ・コンサルタント
年は新
日に増加する︒
JMAC TPMコンサルティング事業本部
C O N S U LTA N T V I E W
の推進 ﹂ が図られるよう
に進んだ︒
年度からは年間
目的なきデジタル化は意味がない
暇取得制度創設や︑年間休日数の増
カミノルタテクノプロダクトさんの活動は参考になります。
2 0 1 8
N o. 1
1
2 0 1 8
1 2 0
2 0 2 0
2 0 1 9
N o. 1
2 0 1 9
1 2 5
とを理解する年とし︑一人ひとりが
でロスを削減し︑時間を創出できた
2 N 0 o 2 . 0 1
﹁
の宣言 ﹂ を行った︒そして︑ 年 に は 応 用︵ の発
からこそ︒取り組んだ改善の事例は
社内外の発表会で表彰され︑評価を
C ase 03
15
Business Insights Vol.72
N o. 1
- ▲TOP
- ページ: 16
- Fu j i P h a r m a
Mon oz u ku r i
Insights
F u j i P h a r m a
Monozukuri
04
富士製薬工業株式会社
(造 1965 年設立。急性期医療分野の注射剤 影剤など) や、女性医療分野の製剤を主力 に扱う医療用医薬品メーカー。売上高 362 億円、 従業員数 1,527 名 (国内 :761名 タイ : 766 名、いずれも 2019 年 9月期末時点)
コストの見える化により 工場全体で 10億円の削減に成功
国の政策で下がりゆく薬価。 医薬品メーカーの命題は 品質を下げずに利益を上げていくことだ。 製造部門のコストを すべて見える化し、 コストマネジメントの最適化を実現したその背景とは。
Vol.72
16
- ▲TOP
- ページ: 17
- 製品の質を下げずに、製造原
価を踏まえた対策が取 れなかった︒前年実績 の数値を参考に︑ ﹁前 回よりもコストを削減 しよう ﹂という意識は あっても︑そもそもそ の数値が適切なのか︑ また他の製品との原価 差異はどれくらいある ントになっていなかったのだ︒
実績に基づいた予定原価のみで運用
線造影剤の異物を 右の写真は︑X 検査する機械だ︒光を当てられてい
の時間」 に着目し、科学的根
価をどう削減するか。 「検査
高品質
51 55
︵ スタートさせた︒
目についた 課 題 を 改 善 するだ け ではダメ
で︑改善施策結果の評
K E Y WO RD 1
自走していく仕組みづく り
目標が見えない活動を問題視 。自分たちの活動が数値化され、共 有できる文化を目指し
るのは造影剤が入ったシリンジで︑ その左のカメラで異物がないかを捉 えている︒この検査工程ひとつ見直
原価管理の仕組みをつくり、改善を回していく活動に取り組んだ。
従業員のコスト意識は決して低くないが、 「 全体感 」 のないコスト管理と
すだけでも︑コスト削減のインパク トは大きい︒ただし︑課題は﹁ 高品 質を保つ ﹂ ということだ︒ 富士製薬工業は︑医療用医薬品の メーカーとして注射剤︑ホルモン剤 をメインとし︑ ﹁ 急性期医療 ﹂ と ﹁女 性医療 ﹂を支える製品を製造︑供給 している︒今回は︑その製造拠点で ある富山工場のコストマネジメント の仕組み構築とコスト改善活動を紹 介する︒ 従業員のコスト意識は高いもの の︑管理側では結果数値報告が中心
か︑などの視点でのコストマネジメ
する範囲で改善を行っていたので︑
﹃ 気づいたことを改善する ﹄という
課題 ・ ミ ッショ ン
こ う し た 中︑ 笠 井 隆 行 さ ん が 2016 年に取締役副社長兼生産
活動だったんです︒日々の業務の経
験則に基づいて〝 改善できそう 〟 と
部門のトップに就任︒中期経営計画
いうものです︒やる気はあるけど視
期〜 期 ︶で︑工場全体で 億
10
点や手法が手詰まりの状態になって
円のコスト削減目標を掲げ︑活動を
いました︒活性化もしていませんで
した︒そこで︑一旦ゼロベースから
﹁それまでも︑ロスの削減や労務費
見直すことにしたのが︑2017
コストに関するKPIがない
の削減など自主的に活動は行われて
年です ﹂ ︵ 笠井さん ︶
自前改善の手詰まり
いました︒しかし︑自分たちが想定
︵インダスト 同社はこれまでIE リアル・エンジニアリング︶など︑
体系的な改善手法を本格的に活用し
ていなかったということで︑まずは
現 状 の 課 題 を 把 握 す る た め に︑
JMAC のコンサルタントが工場
内の各ポイントをチェック︒その妥
当性やロスを分析し︑改善策を作成
していった︒
﹁ 気づきはたくさんありました︒な
拠も死守。
笠井 隆行 さん
かでも︑間接活動時間が想像より多
かったこと︒つまり︑製造に直接関
取締役副社長 富山工場長
わる﹃ 直接活動時間 ﹄ よりも︑手順
C ase 0 4
17
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 18
- Mon oz u ku r i
た︒ このリソースを全体に適正配分︒ また︑設備の設定自体を見直した︒
検査工程の手順を改善して 直接労務費を見直し、大きな削減に
﹁ FSIP 会議には製造部の各グ
原形をとどめないほどに変わりまし
ループのマネージャーが出席しま
た︒ プロジェクトが始まった当初は︑
冒頭で紹介した造影剤の検査工程 は︑これまで 回行うことで精度を 上げていたところ︑設備を調整し︑ 回でも同じ精度で検知できるよう
す︒そこで︑各ラインのコスト削減
各グループは︑取れる数字を意味な
案︑改善の進捗状況を発表します︒ 現可能性からABC の
く羅列したレベルの資料であり︑理
2
そして予測される原価削減額と︑実
想とは程遠いものでした︒そこから
段階でラ
時間も手間もかかりましたが︑今は
1
に改善した︒医薬品メーカーは︑検 査工程にかなりの工数がとられる︒ ここの改善で労務費が大きく削減で きたという︒ ﹁ 造影剤については︑製造のロット
ンク付けをして状況を見ています︒
3
問題点も目標も具体的になり︑意図
また他グループの取り組みを共有す
を持った明確な数値管理ができるよ
ることは相互の気づきや競争意識に なっています︒
うになりました ﹂ ︵ 吉末さん ︶
もつながってとても有意義な会議に
プロジェクトマネージャーの白尾 さんは︑ ﹁ 各グループは︑以前から
書の見直しや点検︑運搬︑作業指示 待ち︑会議などに関わる時間が多か ったのです︒あるラインのすべての
Fu j i P h a r m a
量を増やす︵スケールアップ︶改善 も︑原価削減に寄与しました︒これ らの改善により︑工程全体でどこに 何人配置すれば︑生産量を増やせる かなど︑今後の計画もつくりやすく なりました ﹂ ︵ 笠井さん ︶
会議資料は︑最初の頃と今では︑
コスト削減の施策はたくさん持って
いたのですが︑ ﹃ 今︑改善がどこま
富山工場 製造部 生産管理グループマネージャー 兼 生産管理課リーダー
作業員の 日の作業内容を分析した
白尾さんが掲げているのは 「小集団活動」 の活動成果 をまとめたもの。5 〜 6 人で 活動を行い、定期的に発表 する場を設けている。1 位と 2 位のチームには賞金が
でいっているのか︑どこで問題があ
ってつまずいてるのか ﹄という点が
1
ら︑直接作業のオペレーション時間 は少なかった︒直接活動時間は企業 の収益活動に直接貢献する時間です から︑人員の組み合わせを変えるな ど︑最適配置を行いました ﹂ ︵ 吉末 さん ︶ 名分 作業のロス分析により︑約 の工数が削減できることがわかっ
白尾 淳之 さん
グループ内でも共有できず︑他部署
からのアドバイスももらえないよう
理想の ﹁ 見える化 ﹂ が 完成するまで
30
これ ま で︑生 産 部 門 の 役 職 者 会 議では﹁ 計画達成率 ﹂ のみを管理し て生産効率などの﹁ 管理指標 ﹂ はモ ニタリングしていなかった︒また︑ 原価を管理するための会議におい て も 結 果 の 報 告 中 心 で︑コ ス ト を
な状況でした︒ところがFSIP
クトの名称。 情報共有の場に。
「富 productivity の略であり、
士の船出」 でもあるプロジェ
The first step in improving
削 減 す る 視 点 は な か っ た︒そ う し たマーネジメント側の課題も取り 上げて︑今回の改善プロジェクトを ︵エフシップ︶ ﹂ と名付け︑ ﹁ FSIP 定期的にFSIP 会議を行ってい る︒ 〝 生産性向上の第一歩 〟という 意味を込めたネーミングだ︒
KE Y WORD 2
FSIP
Vol.72
18
- ▲TOP
- ページ: 19
- 会議によって進捗や悩みを共有でき
コスト削減活動で得たもの
ーマを元に︑自由に課 題を立て︑改善活動を
K E Y WO RD 3
中に必要であれば製造
は、 数字もさることながら 「従 業員全員の成長」 だった。こ
るようになり︑現状動いている施策 は何か︑どこまで進んでいて︑問題 点はこのように対応している︑とい ったことを共有できるようになりま した︒それが一番よかったと思いま すね︒そして全員がいつまでに何を するべきか道筋が見えたことで︑改 善の速度を上げることができたと思 います ﹂と話す︒ 億円削減という 活動を行って︑最優秀 賞︑優秀賞のチームに賞金を出す仕 組 み を つ く り ま し た︒ た と え ば ﹃ 5S ﹄というテーマで自分たちは どんな成果を出したのか︒その取り 組みを手描きのポスターにして︑食 堂に掲示し︑管理職が投票します︒ 立派な手づくりのポスターを見る と︑みんなの秘めたパワーを感じま 目標は︑たったの 年半で達成され たのである︒ ひとつとして︑小集団 と思っています︒その ったぶんは還元したい 感してほしいし︑頑張 スト削減の達成感を実 ﹁ 現場の人たちにもコ 行うものだ︒
する使命がある︒これ
れに勝る価値はない。
個々の 成長
からも変化し続ける市
場で︑科学的根拠をも
とに︑品質を維持しな
がら︑コストマネジメ
ン ト のP D C A を 全
員で回していかなけれ
ばならない︒ す﹂ ︵ 吉末さん ︶
2 10
﹁ 目標を達成して終わ
り︑ではなく︑生産現場を常に最適
社員のモチベーションを 重視する経営
製造部の各部署内には﹁ 小集団 ﹂ と呼ばれるグループがある︒ 〜
働きやすい環境づくり︑更衣室の 5S︑危 険 予 知 活 動︑モ ノ を 探 す で改善活動が行われている︒
化し︑コストを下げる方法を絶えず
考え続けなければなりません︒それ
時間の削減など︑さまざまなテーマ
が習慣的に根づいた組織にするのが
最終的な目標です ﹂ ︵ 笠井さん ︶
﹁こうした活動によるモチベーショ
ンアップを大切にしています︒当社
年は︑全員に根づいた 2020 改善意識で︑競争力のある工場へと
5
人のチームで︑定期的に設定したテ
6
は経理理念の つとして﹃ 富士製薬
向かう︒
工業の成長はわたしたちの成長に正
比例する ﹄ということを掲げていま
す︒日頃︑決められたことを間違い
る改善活動になりました。工場トップが「絶対にやり切る」 という 富山市内にある富山工場。タイの工場 (OLIC) と 合わせて 100%の生産拠点だ
品ごとの採算はどうなっているのか、現場のどこにどのようなロス
が発生しているのか、1 つひとつ丁寧に紐解き、見える化・共有に
FSIP は、コストの実態を正確に捉えることから始まりました。製
全員で取り組みました。皆が同じ数字を意識することで一体感あ
いう課題の中で︑知恵を絞り︑アイ
デアを出し合い︑議論しながら高め
コストを見える化して全員で共有する
けでは︑成長しません︒改善すると
メッセージを発信し続けたことも、大きな成功要因と言えます。
執行役員 富山工場 製造部 部長
なくやることは重要ですが︑それだ
1
ます︒そのためにモチベーションは 不可欠です ﹂ ︵ 笠井さん ︶
C O N S U LTA N T V I E W
あっていくことが企業の価値になり
吉末 貴則 さん
神山 洋輔
医薬品メーカーは︑ 薬価が下がり︑ たとえ不採算製品となっても︑世の
C ase 0 4
19
Business Insights Vol.72
コスト競争力のある 工場の未来に向けて
チーフ・コンサルタント
JMAC デジタルイノベーション事業本部
- ▲TOP
- ページ: 20
- JMACが提唱する 「次世代工場」 の完成図
国内では年間約1000もの工場が新建設されているが、 IoT 時代を迎え その在り方は変わりつつある。 未来を見据え、 工場が変わるべきことは何か。 ものづくりの現場を変えていく、 「次世代工場」 とは。
新工場建設推進プロジェクト
日本能率協会コンサルティング 生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン 革新センター センター長 シニア ・ コンサルタント
毛利 大
① 工場全体の能力を決定する3要素
フ ィ ジカル
個々のリソーススペック、システム全体理論のスペック、 リソースにゆらぎがないか
秤量
混合
殺菌
検査
充塡
包装
検査
オペレーショ ン
顧客、競合、社内に対し、工場機能の理想を追求し、 極限まで追求をしているか
生産自体の価値を出す製品設計
経営指標
生産性を考慮した製品設計
俊敏・柔軟な生産管理機能
作業改善・設備改善機能
技術人材・技能人材育成
開発効率向上・期間短縮
工法の限界追求・実用化
マネジメン ト 場の構築 見える化
工場間情報共有化機能
効率的品質管理機能
設備開発高度化
高能率生産機能
最適物流機能
・・・・・
経営層、工場マネジメン ト、現場の各階層で、 適切なマネジメン トが行われているか
・・・・・
・・・・・
マネジメン ト
工場KPI
各部のKPI
■JMAC 「TAKUETSU PLANT」 メソッド資料より
Vol.72
20
- ▲TOP
- ページ: 21
- 状態的に入手できるデータに基づく、 リアルタイ ムでの改善 問題解決のPDCAを活性化させる
Section Management
右ページの図❶は︑JMAC が にあたり︑次世代工場を目指し︑実 現していくお手伝いを私たちプロダ クションデザイン革新センターは行 っています ﹂ ︵ 毛利 ︶ 日本国内でも大小あわせて毎年約 考える ﹁次世代工場に必要な 要素﹂
Top Management
ます︒新工場の建設︑リニューアル
Middle Management
業界をリードすることが可能になり
であり︑工場全体の能力を決定する 要素でもある︒次世代工場とは︑
経営課題を改善し︑圧倒的QCDE ︵ 品質・コスト・納期・環境 ︶レベ ルの実現に向け革新し続けることが できる工場であり︑そのために先進 テクノロジーを適用しながら﹁フィ ジカル・オペレーション・マネジメ ント﹂のそれぞれが︑卓越したレベ ルで運用されている工場である︒ ﹁ 工場全体の理論的な能力は︑そ こで働く人たちと設備のスペック︑ その組み合わせで生じる相互干渉で 決まります︒これが﹃フィジカル﹄ の部分です︒次に︑生産システムを 維持︑向上させ続ける機能を極限ま で追求すること︒これが﹃オペレー ション﹄です︒そして改善推進から 日常管理に至るまでのマネジメント の進化︑トップ︑ミドル︑現場の一 貫性をもったKPI でのレポーテ ィングなどが ﹃マネジメント﹄ です︒ これらの つの要素を高いレベルで 実現できている工場は︑顧客ニーズ に合致した品質の商品を量産するこ く︑老朽化により建て直すケースも 多い︒さらには︑これまで海外に製 造拠点を置く企業も多かったが︑メ イド・イン・ジャパンへのこだわりや︑ 技術のコアセンターとして︑国内にマ ザー工場を置くケースも増えている︒ いずれのケースでも︑卓越した次世 代工場にシフトしていくことは︑これ からのものづくりには欠かせない︒ 度経済成長期に建てられたものも多 ている︒現在ある工場の多くは︑高
1000件の工場が新規に建設され
② 次世代工場における、 組織 ・ 階層のありたい姿
ありたい姿 (案)
工場の収 益 管 理と利益 向上のための課 題 把 握 と意思決定
これから工場を新建設︑あるいは リニューアルする場合︑ 造現場において︑ 導入
I o T
改善活動
なぜ ﹁次世代工場﹂ に 向かうべきなのか
くの革新をもたらすことはいうまで もない︒目に見えないロスを見える 化できたり︑集められたデータは分
部課長
の導入は多
現場責任者
は必ず検討項目のひとつに入る︒製
工場長
現場オペレーター
3
I o T
日々のルーチンワークを ( 標準業務手順書 ) SOP に則り確実にこなす 工場 収 益 管 理と利益向 上のための課 題 把 握と 意思決定 主要KPIの管理と課題の 明確化、優先付けと改善 の指示
現状の役割
作業分配・進捗管理
日々のルーチンワークを SOPに則り確実にこなす 長期ビジョンでの改革構 想の打ち出しと改革指示 改 革活動の活 性化のエ ンジン
主要KPIの管理と課題の 明確化、優先付けと改善 の指示
作業分配・進捗管理
改善活動
作業の自動化に伴い、役割は、オペ レーションから、データ活用による改 善にシフ ト サプライチェーン・エンジニアリング チェーンと連動した、工場の役割の継 続的リス トラクチャ リング 一 元共 有されたKPIに基づく、高速 PDCA の展開
圧倒的QCEDレベルを 実現するために
とができ︑高い製造技術力を備え︑
3
Operation
3
21
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 22
- ③ JMACが提案するスマート ファク トリーのための32のイメージセル
医薬品製造業 A 社の事例
オープン イ ノベーションを 活性化させる仕組み 効率的・効果的な ODMの仕組み
スピーディーな 新製品立上げの 仕組み 作りやすさ ・ 運びやすさを 考慮した設計が できる仕組み 源流段階で モレのない評価が できる仕組み 顧客要求に 応えながら 効率的に設計できる 仕組み オープン イノベーションを 活性化させる仕組み 多様な製品 バリエーションを 効率的につくれる 仕組み サプライチェーン コストを 抑える仕組み 負荷を適切に コン トロールする 仕組み ( 工数の最大活用 ) 効率的・効果的な ODMの仕組み
部品個体差を 吸収し、完成品 品質を維持する 仕組み
多様な製品 バリエーションを 効率的につくれる仕組み
部品個体差を吸収し、 完成品品質を 維持する仕組み
いつ、どこで 顧客問い合わせに 何をつく らせるか スピーディに 判断できる仕組み 回答できる仕組み ( 機会損失の最小化 ) ( 機会損失の最小化 ) 従業員のスキル差を 個々のスキルを カバーする仕組み 向上させる仕組み ( 人能力の最大発揮 ) ( 人能力の最大発揮 )
需給バランスを 最適化させる仕組み
付加価値時間比率を 高める仕組み ( 工数の最大活用 )
サプライチェーンコス トを 抑える仕組み
需給バランスを 最適化させる仕組み
人のスキルに 依存しない 工場の仕組み
実績データに基づく 改善プロセスが 活性化する仕組み
品質の改竄が できない仕組み
品質コストが 抑えられる仕組み
品質問題の 影響範囲を 最小に抑える仕組み
発生経費の バランスを最適に 管理できる仕組み
脱炭素生産を行う 仕組み
資源循環& 低環境負荷物質 活用生産を行う 仕組み 顧客要望に すべて応える ものづく りの仕組み 納品した製品が 新たな付加価値を 生む情報源になる 仕組み
負荷を適切に コン トロールする仕組み ( 工数の最大活用 )
付加価値時間比率を 高める仕組み ( 工数の最大活用 )
的確にニーズを 把握できる仕組み
製品の安心安全を 保証する仕組み
売りたい方向に 顧客を誘引する 仕組み
高品質であることを 工場が証明する 仕組み ( 工場ブランド化 )
ファンを生む 工場の仕組み ( 工場ブランド化 )
顧客の 潜在的ニーズを 引き出す仕組み
﹁ 新しい工場には︑会社らしさを
﹁ものづくりの現場において︑人
もちろん︑課題は企業により異な
サービスなど︑経営面の課題と工場 次世代工場に
のか︑リードタイム ・ コスト ・ 品質 ・ なデジタル化を実現します ﹂
のか︑サプライヤーと連携できない ーションと結びつけることで効果的
す︒物流拠点はそもそもここでよい クアップし︑具体的な
点課題は会社によって異なるので のイメージセルの中から課題をピッ
から見ていきますが︑解決すべき重
つくるにあたり︑私たちは事業戦略 たえる最適な の仕組みです︒
重視することが重要です︒新工場を
ジタル化するということではない︒
もわかるように︑
材は不可欠です︒前頁の図❷を見て
たい姿を目指すこともできる︒
である︒そして︑組織・階層のあり
まさに﹁ 次世代工場 ﹂ の理想的な姿
析し︑改善に活かすことができる︒
り︑
目指す理由のひとつです ﹂
階層の役割の変化も︑次世代工場を
なるケースもあります︒こういった
課長レベルで意思決定できるように
は工場長が担当していたことも︑部
とができるようになります︒今まで
善活動などに人的リソースを割くこ
時間を割くことができ︑現場では改
プ層であれば長期ビジョンの作成に
変わるのです︒マネジメントのトッ
仕事がなくなるのではなく︑役割が
I o T
は単に工場を自動化︑デ
I o T
化は人間の
今や
︵ 図❸ ︶です︒たとえばスピーディ
﹁ 私たちは多くの製造現場を訪れ︑
T
32
ものづくりの現場に必要な の問題解決
戦略と照らし合わせる必要がある︒
いいのか︑それこそ事業戦略や製造
ている︒自社工場に何を導入すれば
し︑ソリューションも多岐にわたっ
組みなど︑製造現場の困りごとにこ
み︑顧客の潜在ニーズを引き出す仕
業員のスキル差をカバーする仕組
バランスを最適化させる仕組み︑従
な新製品立ち上げの仕組みや︑需給
ートファクトリー・イメージセル﹄
フトする目的ともいえます ﹂
をつくることこそ︑次世代工場へシ
このように課題解決に紐づいた現場
建設を結び付けて考え︑ 設計します︒
仕組み化したものが ﹃ JMACスマ
を見てきました︒それらを整理し︑
これまでかなりの数の課題︑問題点
を導入して何を実現したいか︒こ
I o T
32
I o T
機器のベンダーは乱立
I o T
は大きく貢献
ソリュ
I o
Vol.72
22
- ▲TOP
- ページ: 23
- 操業開始
10 11 12
(月)
することは間違いないが︑何を実現
企画構想、基本設計 目標の早期実現
ウに精通しています︒また︑新工場
・ 稼動 5. 立上げ
・試運転、性能確認
するか︑何を解決したいのか︑イメ ージセルはそのための﹁ 重点化 ﹂ に 非常に役立つ︒ たとえば医薬品会社A社の事例︒ 各製造拠点への生産配分の偏りがあ り︑負荷のばらつきに起因するロス ︵ 操業ロスや納期遅延など ︶が発生 していた︒そのため︑各生産拠点の 負荷状況を把握して最適生産地を選 択し︑サプライチェーン全体での平 準化を図る目的で﹁いつ︑どこで何 をつくらせるか判断できる仕組み ﹂ ︵ 他︑関連セルいくつか ︶を採用︒ これにより︑製造と受注が適正配分 されるように改善された︒
立ち上げに不可欠な事業戦略︑ 物流 ・
・採算計画確認
・稼動率向上
移転開始 竣工
・作業指導
・報告書作成
調達︑
ソリューションなどの
・取扱説明
専門部署とともに︑より革新的な工
9
場づくりを支援します ﹂
④ 新工場建設プロジェク トの進め方と、 各フェーズの位置づけ
8
新工場建設プロジェクトの進め方
20XX 年
工事日程遅延、 予算増加の抑制
を図❹に紹介する︒とくに重要なの
7
4. 工事管理
・行政検査対応
・工事工程管理
は最初の ﹁ 企画 ﹂ の部分だ︒
6
・現場調整
・採用活動
・予算管理
・設備移転
﹁この部分は軸になるので︑課題
5
認識や採算計算などが重要です︒し
4
3
かし︑現状からのアプローチではな
2
基本設計計画の 具体化、タスク展開
く︑ ﹃ありたい理想の姿 ﹄を作成し
・詳細レイアウ ト作成
3. 詳細設計
・各種仕様書作成
・設備、什器調達
1
た上で︑制約条件を洗い出して理想
・設計図書作成
・施工計画確認
・工事要領作成
10 11 12
からのアプローチを行います︒どれ
だけ先のことまで目が届くか︑どこ
に力点を置くか︑という議論も企画
経営課題実現の 生産システム再構築 ための、新工場の に関する最適追求 ありたい姿と課題の明確化
着工
・設備 ・ ユーティ リティ
・基本レイアウ ト作成
・行政申請書類準備
2. 基本設計
確認と仕様設定
8
・工事予算計画
企画から稼動まで IEをベースに支援
・業者選定
の段階で行います ﹂
9
JMAC のプロダクションデザ イン革新センターは︑新工場建設︑ リニューアルや設計支援︑統廃合診
・マスタ ー ス ケジ ュ ール
番 目 の 基 本 設 計 で は︑基 本 レ
イアウトを作成し︑最適化を追求︒
20XX 年
7
詳 細 設 計︑工 事 管 理 の フ ェ ー ズ に
入 る と︑ゼ ネ コ ン が 担 当 す る 部 分 断︑
・目標、課題認識 ・概算コス ト算出 ・ コンセプト検討 ・要求仕様作成
6
が 増 え る が︑立 上 げ︑稼 動 が 始 ま 導入支援︑ を活用
5
ると稼動率向上や教育なども行い︑
I o T
4
1. 企画
したビジョン作成なども手掛けてお
・採算計算
I o T
目標の早期実現を目指す︒ り︑企画から工場完成後の稼動まで
作成
3
2
﹁ 事 業 戦 略 を もとに次 世 代工場︑ 総合一貫型サポートを行っている︒ ﹁ 私たちは創業から 年︑あらゆ
1
つまり自社にとっての最適化工場を
70
仕様確定
20XX 年
11 12
デザインしていく︒そのための最適 る業種の生産性改善を推進してお
新生産 システム検討 のプロセス
〜
なシナリオを選択していくのが︑私 り︑効率的なレイアウト︑工程︑設 備︑管理システム設計︑運営ノウハ
たちのコンサルティングプロセスで
す﹂
2
I o T
23
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 24
- 経営をリードする生産技術者へ
トヨタ自動車で 「 ドアレス工法 」 を生み出し、 「トヨタ流モノづくり」 をけん引してきた新美篤志氏。 技術者として、 これからの 「ものづくりの未来」 をどう見ているのか。 生産技術幹部交流会の活動から見えてきた、 ものづくりの潮流とは。
既成概念にとらわれず 自らを突破するものづく り
Vol.72
24
S P E C I A L I N T E R V I E W : A T S U S H I N I I M I
- ▲TOP
- ページ: 25
- 新美 篤志 氏 (にいみ あつし)
に事業活動を続けています︒ きも多いようです︒
ものづくりの現場で働く人こそ 市場で求められるものを 生み出すことができるのです︒
A T S U S H I N I I M I
くりを支える人材育成にどのように取り組むべきか、ゲストスピーカーを
日本能率協会コンサルティング(JMAC) は 2016 年度より、生産技術部門
長クラスの方々と共に「日本のものづくり」 の現状や今後の方向性、ものづ
お招きして交流会を行っています。生産技術部門が「これからの生産現場
ものづくりの現場の 誇るべき価値
石田 新美さんには︑JMAC 生 産技術幹部交流会の座長を務めてい ただき︑これまで 期︑ものづくり
て感じるのは︑訪問先や講師を引き
の第 回は龍角散の千葉工場の視察
受けてくださる企業はみなさん元気
でしたが︑ ﹁マーケティングの重要
がいい︒よい企業というのは〝 企業
性 ﹂という社長のお話は︑私も学び
の使命を果たしている 〟企業です︒
がありました︒
つまり︑変化していく世の中やお客
石田 同社はマーケティング戦略
さまに対し︑それを受け入れ︑対応
で︑ 年間で売り上げを 倍にされ
4
5
4
成果をお聞きしたり、2019 年度からは 「現場 ・現物 ・
を支え、発展させる」 ことがテーマ。外部の有識者
から 「これからのものづくり」 に関する体験談/研究
現実」 として魅力的な取り組みをされている工場見
学するなど、生産技術部門の部門長同士の「相互啓
生産技術幹部交流会
発」 を図るネットワーキングの場となっています。
に関わる方々との交流を深めてまい りました︒講義や工場視察などのプ ログラムを行ってきましたが︑どの ような感想をお持ちですか? 新美 ものづくりという仕事におい て︑多業種が集まる機会は大変刺激 になります︒私自身も再認識する部 分が多く︑まだまだ学ぶところがあ ると感じました︒とくに︑工場訪問 は現場の熱がダイレクトに伝わり︑ 非常に説得力がある︒これは続けて いきたいですね︒そして全体を通し
していける力があるということ︒そ
たというお話でしたね︒
のために継続的に人を育て︑競争力
新美 うまく時流に乗り︑V字回復
を上げて︑きちんと儲けている︒そ
されましたが︑その戦略はマーケテ
して知恵を使って賢くお金を使い︑
ィングと生産現場の改善努力にあっ
再投資して次に備え︑サステナブル
たわけです︒生産現場担当者もマー
ケティングの重要性を理解したから
石田 異業種間の視察はさらに気づ
可能であったと再認識しました︒上
流 ︵ 経営 ︶ から下流 ︵ 販売 ︶ まで見渡
新美 ものづくりの現場には必ず悩
せるのは ﹁ 生産現場ならでは ﹂ です︒
みがありますから︑違う業界を見る
マーケティングから商品企画があ
5
1971年 3月名古屋大学工学部航空学 科卒業、同年 4 月トヨタ自動車工業 (現トヨタ自動車) 入社。1999 年、生 技管理部長。2009 年、取締役副社 長を経て、2013 年、株式会社ジェイ テク ト取締役会長就任。2018 年より 同社アドバイザーに就任。生産技術 幹部交流会では座長を務める。
株式会社ジェイテクト アドバイザー
ことで学びがあるのでしょう︒先日
り︑製品開発があって生産技術者が
行われた生産技術幹部交流会第 期
いる︒生産管理でどうつくるかを考
25
S P E C I A L I N T E R V I E W : A T S U S H I N I I M I
Business Insights Vol.72
4
- ▲TOP
- ページ: 26
- 生意気だと言われようと ブレイクスルーをするには 自分を曲げないことも大事です︒
A T S U S H I N I I M I
第 回で︑マツダの工場視察に伺い
ましたが︑長くトヨタの生産現場に
携わられていた新美さんは︑感じら ょうか︒
れたことが多かったのではないでし
新美 そうですね︒マツダはクルマ
のつくり方をいったん白紙にして︑
ゼロから開発する︑ディーゼルとガ える︒そして生産し︑調達して販売 する︒これが一連の流れですが︑中 心にあるのは生産現場です︒ものづ くりの現場で働く人は視座を高く︑ 視野を広くもつことで︑市場が今必 要としているものを理解し︑それを 効率よく生み出すことができるので す︒それが生産現場の価値であり︑ やりがいでもあります︒生産技術者 は開発設計から生産︑販売︑サービ スに至る 〝 良い流れ 〟 づくりを向上さ せる 〝ドライバー〟 になれるんです︒ 石田 全体を俯瞰できる立場にある ということですね︒ 新美 そうです︒お客さま︵ 市場 ︶ の要望なら必要なら設計を変えれば いいし︑自分たちで自分たちの技術 を磨く必要もある︒そういう高い視 点であってほしいと思います︒ 来期に向けて︑どのようなプ 石田 ログラムが必要だと思われますか︒ 新美 先端技術を見ておくことでし ょう︒ 何が起きようとしているのか︑ 技術者ならば知っておくべきです︒ たとえば兵庫県の播磨科学公園都市 にある大型放射光施設﹁ Spring-8﹂ なども︑生産技術幹部交流会の視察 の対象としてふさわしいですね︒
ソリンエンジンを同じラインでつく
るという驚きの発想を実現したわけ
ですが︑ ﹁ 失敗したら終わり ﹂ という
絶体絶命の状況でブレイクスルーを
生み出しました︒あれこそがものづ
くりの目指すところです︒クリーン
マツダに学ぶ ﹁ 当 たり前 を 疑 う 力 ﹂
石田 生産技術幹部交流会 期の
ディーゼルエンジン ﹁ SKYACTIV-D﹂ 界に称賛されました︒
を生み出し︑そのテクノロジーは世
石田 構想から 年間かけて商品化
4
3
に挑戦されたわけですからね︒
新美 二兎も三兎も追って︑絶対に
妥協しなかった︒モデルチェンジと
6
を私たちに教えてくれました︒
いう概念をなくして︑シリーズ全体
生産技術に携わる人間は︑自分で
を﹁ 次世代 ﹂ というコンセプトで一 わけです︒
自分に枠をはめてはだめです︒それ
括企画・開発した︒発想が全然違う
は技術の枠も︑部門の枠もしかり︒
私は︑ 物理の世界にできないことは
﹁そんなことできるわけない ﹂とい
ないと思っています︒きっと何か手
う当たり前をまず疑い︑ ﹁ 本当にで
がある︒常にそれを求めてほしい︒
きないのか ﹂ と考える︒そして﹁ 何
石田 新美さんもトヨタで 年かけ
をどうすればできるのか ﹂ ﹁このや
て︑ドアレス工法を実現されました
り 方 で は だ め だ っ た が︑ほ か の 手
ね︒今では業界のスタンダードな工
は?﹂と考え方を変えることでブレ
法になっています︒
イクスルーが生まれる︑ということ
新美 ドアレスの難しかったところ
14
Vol.72
26
S P E C I A L
I N T E R V I E W
:
A T S U S H I
N I I M I
- ▲TOP
- ページ: 27
- は︑ドアをいったん外してあとでは いうこと︒求めるものは何年かかろ うと妥協してはいけないのです︒そ れから上司に反対されても︑自分を 信じること︒簡単に曲げないことも 重要です︒生意気なやつだといわれ るかもしれませんが︑ブレイクスル ーにはそういうことも大事なので す︒そして︑上司はブレーキをかけ る側にならないことと︑若いころの 情熱を失わないこと︒ものづくりに 携わる人は︑自分も変化し︑ブレイ クスルーしていかなければなりませ め込むと︑ドアとボディのたて付け 精度が若干下がってしまうことでし たが︑あらゆる可能性を試して課題 をなくしました︒ドアレスにしたら 中腰で行っていた作業は格段に楽に なり︑ラインの全長も大きく減らす ことができるのでコストも削減︒現 在は部品のキッティング供給と同期 台車による作業となり︑想定以上の メリットが生まれました︒ ポイントは︑成功するまでやると
ん︒停滞は退歩と同じ︒じっとして いたら負けなのです︒
しては成し得ませんでした︒これか
らは量子コンピューターも主流にな
石田 私はかつて上司に﹁ 成功の反
るでしょう︒ それを使いこなす技術︑
対は失敗ではない︒何もやらないこ
どう使うかを考えるのが生産技術者
とだ ﹂ と言われたことがあります︒
の使命ではないでしょうか︒日本刀
新美 そのとおりです︒自らを超え
をつくることができた日本人は︑﹁技
るドライバーになってほしいですね︒
術の使い方 ﹂ で勝てるはずです︒
日本はものづくりで 世 界に勝っていく
についてお聞きしたいのですが︒
石田 さまざまなことがデータでわ
かっても︑課題設定をするのは人の
知恵ですからね︒その辺は日本人の
石田 ものづくりが向かうこれから
得意とするところですね︒
新美 勤勉で知恵を出すことに長け
新美 ものづくりは文明を支えてい
ている日本人は︑ものづくりが得意
ます︒新しい技術で人は豊かになり
ですから︑それで世界に打って出よ
ました︒これからの時代は︑新しい
うではありませんか︒
ものをつくることもそうですが︑ ﹁新
石田 ものづくりの未来に期待した
しいつくり方 ﹂が要求されるように
いですね︒本日はありがとうござい
なるでしょう︒エネルギー効率が半
ました︒
が求められるのではないでしょうか︒
これからは﹁エネルギー︑食糧︑
す︒そういうものに向けた商品やツ
ール︑もののつくり方をせざるを得 術革新は不可欠でしょう︒
なくなるでしょう︒そのためにも技
石田 デジタルによる変革︑デジタ な考え方はいかがでしょうか︒
ルトランスフォーメーションのよう
新美 道具としてどんどん使えばい
石田 秀夫
健康 ﹂がキーワードになると思いま
生産コンサルティ ング事業本 部 本部長 生産エンジニアリ ング革新センター センター 長 デジタルイノベーション事 業本部 副本部長 シニア・コ ンサルタン ト 全日本能率連盟 認定マスター・マネジメント ・ コンサルタン ト
分でつくれるような﹁ 超効率 ﹂など
I N T E R V I E W E R
日本能率協会コンサルティング
い と 思 い ま す︒マ ツ ダ が 実 現 し た
﹁ 計画順序生産 ﹂も︑デジタルなく
27
S P E C I A L I N T E R V I E W : A T S U S H I N I I M I
Business Insights Vol.72
- ▲TOP
- ページ: 28
- Business Insights Vol.72
2020年2月発行
発行人:鈴木亨 編集人:田中強志 編集:柴田憲文 豊島涼子 ディレクション:中山真理子 (Project8) 編集・ライティング:島田ゆかり 吉岡名保恵 デザイン:井上宏樹 村松哉 (DynamiteBrothersSyndicate) 撮影:山田英博 整理:本橋健 木村舞子 (Natty Works) 校閲:寺薗かおる 表紙イラスト:平田利之 株式会社日本能率協会コンサルティング 〒105−0011 東京都港区芝公園3−1−22 日本能率協会ビル7F
© 2020 JMA Consultants Inc.
www.jmac.co.jp
本誌の送付先情報の変更、 ご意見・ご感想は、 こちらで受け付けています
https://dlabo.jmac.co.jp/bi
本誌の無断転載・複写を禁じます
- ▲TOP