生産技術者の未来実態調査
第3回 生産技術が上流に上がることで、より価値を生む
真田 健二
コンサルティング・サービス
デジタルトランスフォーメーション(DX)が経営課題と認識されるようになり、企業でのDX事例も聞かれるようになってきました。今や多くの企業でDXの推進組織を立ち上げ、取り組みを前に進めようとしています。
DXは企業のアウトプットであるサービス・製品やそのビジネスモデル、そして組織や風土までも変革しようとする取り組みです。しかし、コンサルティングの現場では自社にとってのDXを、どう進めればよいのかわからないという声が多く聞かれます。
JMACはR&D分野のコンサルティングを長年手がけてきました。R&DのDXはR&D部門に閉じた変革ではなく、R&Dを起点とした新サービス開発、デジタル技術を活用した受注から出荷までのビジネスプロセス改革、DX教育や人材育成などの取り組みであると範囲を広く定めています。
R&Dの組織はモノではなく人の知恵・インテリジェンスで構成されています。JMACでは人や知恵を中心においたDXの支援事例が増えています。
ポイント1:可視化から価値化へ
R&DにおけるDXとは、デジタル技術を適用してサービス・製品やビジネスモデルを改革することがゴールです。そのためには具体的にビジネスをどう変えていくのかを明確に描くことがポイントとなります。ITツールを適用してプロセスを可視化するだけにとどまらず、新たなプロセスをどのように価値につなげるかまでを描く必要があります。
ポイント2:組織変革を軸にDXを推進する
R&Dの成果とは人の知恵が生み出すものです。導入したいツールや手法から考えることはときには必要ですが、人や組織の能力を最大発揮させるためには、どのようなツールを選定すべきか、デジタルスキルの向上で人・組織をどのように進化させるのか、を組み合わせて描くことが重要です。
ポイント3:推進上の課題をつぶしていく
DXは企業全体の変革です。過去情報にもとづく将来予測などの課題を実現しようとしても、そのための情報入力の徹底や組織内共有などで心理的な壁が立ちはだかることもあります。これらの現場課題を1つずつクリアしていく必要があります。
JMACのDXは次の領域でサービスを提供しています。
ERP・PLMをはじめとしたIT投資が多くの企業で進んでいます。一方で業務側の整理が不十分なままシステムを導入し、結果として効果を抽出できないケースも多く見られます。これを防ぐには事業競争力を強化する観点からの課題設定、R&Dから開発・設計に至るエンジニアリングチェーン、プロダクション&サプライチェーンの業務プロセスの整備が必要です。
ポイント1:事業競争力強化からの課題設定
業務プロセスを変革する際にも、その業務やツールだけを着目するのではなく、その事業の競争環境からくる重要課題、製品構造からくる業務上の課題などを設定します。
たとえば、ツールベンダーから提供されるユースケースやベストプラクティスといった事例を参考にするのはもちろんですが、自社の事業上のポジショニングやリソースをベースとした他社にない強み、特性などを客観的に把握することで、効率化だけでなく、創造性が高まるなど、価値向上に寄与する新たなプロセスを実現することが可能となります。
ポイント2:業務プロセスの整備
企業のエンジニアリングチェーン(開発~設計~生産準備)はものづくりの上流に位置し、この強化はものづくり全体の変革に直結する重要課題です。
競争力強化の視点から最適な業務プロセスを設計し、一方でデジタル技術をフルに活用するための最適なプロセスを描き、実現までスムースにシステムを導入することが肝要です。
これからのメーカーのR&D部門の役割は、ものづくりの上流のエンジニアリングチェーンからプロダクション&サプライチェーン全体を変え、事業の高収益化を実現していくことです。そのように革新領域を広く捉えることで、IT投資の効果の最大化と人・組織の活性化を同時に実現することが可能です。
AI技術情報マッチングシステムは、自然言語の検索文と検索対象の技術文書のそれぞれを解析し、利用者の意図に則した文書を抽出します。任意の技術情報からその用途に関する情報を検索することができるツールです。
これまで気づけなかった"テクノロジー"と"社会課題"の接点を見出すことが可能となります。
このような課題に活用できます
このツールには4つの特徴があります
デジタル人材の育成が急務
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展と合わせて、企業内でのデジタル人材育成が課題になっています。社内にデジタル人材のロールモデルもなく、デジタル人材は必要であるが何から手を付けてよいかわからない。一部の企業を除き、このような課題を持つ企業は多いのではないでしょうか。
6つに分けて考えるデジタル人材
JMACではデジタル人材を6つに分けて考えています。これはDXの進め方を念頭に置き、DX戦略の策定からシステムの要件を定義、実装して使いこなすこと。データの利活用までの各場面でデジタル人材が活躍し、企業のDXを推進しながら経営成果を出していくことを念頭に置いた視点です。
各役割を一人ずつ果たすのではなく、一人で複数の役割を果たすケースも考えられます。各社のリソース状況や求めるトランスフォーメーションの目標に応じて無理なく設計することが必要です。
DXに取り組むにあたり、まず必要なのはデジタル人材化をねらった教育です。研究部門開発部門にとどまらず全社共通のDX、IoT、AIなどの基本的な教育から、たとえば自社のビジネスやサプライチェーン全体の業務プロセスにおけるDX課題を設定するような実践的ワークショップまで、複数の研修カリキュラムを作成しています。また、技術戦略策定や問題解決、発想力向上などのデジタルに限らない研修と組み合わせることも可能です。
【ワークショップテーマ例】
JMACが考えるデジタル人材の定義をベースに、各企業ごとに採用(異動)、育成、評価などの人事制度の設計を行うサービスを提供します。
デジタル人材は部門横断や全社横断のヨコ串機能を担うケースが多くありますが、全社のデジタルトランスフォーメーションを進めるコア人材のやりがいは感じるものの、目指す能力要件が未整備であったり、既存の評価制度に不安を持つケースも多く見受けられます。
JMACには人事制度設計を得意としたコンサルタントが多く在籍しておりますので、R&D機能の業務にも精通しつつ、自社の戦略や特性を踏まえたデジタル人材の要件を定義するプロジェクトの編成が可能です。
【コンサルティングテーマ例】
TIS株式会社
「技術KI」を“re:Born”させて新時代へ
グローブライド株式会社
みんなに"見える化" チーム設計への大改革 〜企画部門、技術部門、設計部門など全員を巻き込む〜
東芝テック株式会社
未来志向のアイデアでオンリーワンの技術創出を目指す
株式会社ノーリツ
技術シーズ探索でお客様に驚きと感動を 〜「この研究は私がやる」一人称の「やりたい」が新価値を生みだす〜
大日精化工業株式会社
技術者の「自覚」と「覚悟」が組織を変え、未来を変える〜全員野球で「勝てるチーム」になる〜