研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜
第4回 マネジャーは部下を人工(にんく)と見てはいけない!
- 研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜
塚松 一也
今回も、受注型の開発部門や事業部からの依頼テーマを請けて研究をしている研究所などで見られるマネジメントの問題を取り上げる。
マネジャーが気にしていることは何か
仕事を外部から請けて仕事をする構図の職場では、どうしても構造的に仕事量の増減が生じるものだ。高負荷状態を長く放置してはならないことは前回も述べたが、もちろん、仕事が少ないことも問題である。受託テーマの量が少な過ぎることはそのまま業績悪化を意味する。また、仕事の質が悪いと、品質問題、コスト超過問題、納期遅延問題などを引き起こす。
従って、マネジャーが仕事の成果や業績を自ずと気にするのは当然のことである。仕事量が十分にあるのか、仕事はうまくいっているのかを、定例会や進捗管理の場などで確認することがマネジャーの仕事の一つになる。
このこと自体はなんら問題ではない。問題なのは、仕事量の管理や仕事の状態の確認だけにとどまり(偏り)、人・組織の成長に関心をあまり持っていないマネジャーがいるということである。
日常、かける言葉が「どう、忙しい?」「まぁ、タイヘンだと思うけど、がんばってね」というようなことばかりの人は、仕事量にしか関心がないと思われてしまうかもしれない。マネジャーは人の成長、つまり、意欲の向上、能力の向上、改善の促進についても、現場の一人一人と話をするべきである。
人工(にんく)でなく、人材と見る
上で述べたことは、マネジャーが人工(にんく)管理を主としているのか、人材マネジメントに重きを置いているのかの違いだともいえる。部下を「人工」と見るのか、「人材」と見るのか、その違いは日常のさまざまな局面での会話にあらわれるものである。
「人手が足りないから、誰かいない?」ということで、仕事に呼ばれた人はどういう気持ちになるだろうか。「やり方を教えるから、君ならできるよ」と言われたところで、「"手"が足りないから呼ばれた。私の"才"が求められているわけではない」と、心の中で思ってしまうものだ。
人材のマネジメントをする意識があれば、一人一人の特性を生かせるように"適材適所"に努めるだろうし、そのために各人の仕事量だけでなく、人の特性や興味を知ろうとするはずである。そういう姿勢は、必ず現場のメンバーにも感じ取られ、伝わるものだ。
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