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研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

第15回 社内で新しいことをやろうとするなら、かわいがられる存在になる

  • 研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

塚松 一也

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新しいことは、いつだって最初は"問題児"

 画期的な発想の新商品・新事業は、今時点で明確な市場が形成されているわけでなく、今時点で競合の存在がはっきり見えているわけでもないものだ。

 画期的な商品・事業は、いわゆるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)のマトリックス上に仮にプロットしてみると、"問題児"ゾーンの丸(というか、極小の"点")で表現されることになるはずである。なにしろ、いまだ市場に投入していないため、マーケットシェアはゼロ。その市場が成長すると信じて参入しようとしていることで、成長率は大。よって、定義的には"問題児"ゾーンに位置付くわけである。

 この"問題児(Problem Child)"というネーミングは、PPM手法を生み出したボストン・コンサルティング・グループが1970年代に命名したものだが、見事に本質を言い当てているとつくづく感服する。イノベーションの導入期、市場の萌芽期にある"新しいタネ"を育てようとしているテーマに対して、"問題児"というメタファー(たとえ)をしていることは、われわれに大切なことを示唆してくれているように思えてならない。

 "問題児"は"子ども"であるため、そもそも自立できず、周囲からの支援や投資をもらえてこそ成長できる(可能性がある)"か弱い(fragile)存在"だ。経営トップがつぶそうと思えば、いつでもつぶされる"か弱い子ども"であることは間違いない。推進する人間がどんなに強気であったとしても、"大人"の事業が生み出す利益や既存組織機能からの支援がないことには大きくなれない"子ども"(というか"幼児")という存在なのである。

 "問題児"はうまく推進できれば、市場成長の追い風に乗って成長することができる。だが、そのテーマを推進したいと強く思っている当事者は成長すると信じているが、周りの人はなかなかそれを理解できず、協力してもらえないということが悩みの定番である。この"問題児"のテーマに誰がいつ手を差し伸べてくれるかは"神のみぞ知る"である。パトロンが誰なのかは、初めのうちは分からない。

社内でかわいがられる存在になるには

 それゆえ、興味を持ってくれそうな人には、広くこちらから近づいて、かわいがってもらうことが重要になる。社内、あるいは社外のいろいろな人に、愛想よく相談に行こう。たとえば、社内でカニバリゼーションを起こしそうで、嫌われそうな(怒られそうな)人にも、避けたり遠ざけたりせずに、ときどきは叱られに行こう。そして、一度相談に行った人には定期的に連絡をとる。相談しっ放しで放置しないことが大切である。2カ月に1度ぐらいは連絡をこちらからとるべきだ。相手も人間である。何度も相談に来る人はかわいく思ってくれて協力してくれるようになるものだ。

 新商品・新事業のアイデアがいかに魅力的なものであったとしても、偉そうな態度、ぞんざいな態度をとったのでは、周りの人からかわいがられない。「こんなことも分からないの? まったくもう勉強不足なんだから」「このテーマの良さが分からないなんて、ほんと見る目がないよな」などと文句を言っていたら、ますます相手は離れていく。

 もっと、謙虚になろう。"か弱い子ども"は、かわいく振る舞うことで、守ってもらえる。決して、周りの大人に無意味に嫌われたり避けられたりしてはいけない。「死の谷」を越えるまでは、社内に無意味に敵をたくさんつくらないように立ち振る舞おう。

 ただし、このことは、上の人に迎合しろとか八方美人になれという意味ではない。社内政治力、影響力という"力"を意識しようということである。それらのことについては、次回のコラムで触れていく。

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